数ある Jazz演奏の中でも、Lionel Hamptonの Stardustは名演の一つに数えられているのではないだろうか。
1947年 California州 Pasadenaでのライブ盤であるが、当日のコンサートでは Lionel Hamptonは Stardustのみ演奏し、映画出演のためにすぐに会場を後にしたらしい。
このときの音源は現在も CDとして入手可能であるが、かつてはいろいろなレコードが出されていたようだ。
1947年の録音ということで、音質的にはお世辞にも音がいいとはいえないものの、かつて日本盤 LPで聞いたときの音質の悪さにはがっかりさせられた。ところが、このときの音源には音のいいものがあるらしいことが個人ユーザーのHPやブログで書かれており、かなり気になっていた。
いくつかの疑問点がある。
1. 録音方式: かつて FM東京系列で放送されていた "永遠のポップス~メロディーズ・リンガー・オン~" で、この録音はSP盤に刻まれたことをナレーターの家弓家正が述べていた。SP盤で録音されたため、途中のピアノ(ソロ)パートの冒頭でほんのわずかに切れている、と言っていた記憶がある。
しかし、それを示す資料が日本語サイトにはない。
あるいはこのときの放送音源が SP盤からだったのだろうか。
調べてみると、SP盤での発売もあったようだが、過去に市場に出回っていた音源のほとんどは LP。
因みに、1945年8月15日のいわゆる玉音放送は、テープではなくSP盤に記録されていたそうだし、2.26事件の際の電話盗聴の記録もSP盤だった。これは NHK特集で放送されたもの。
米国で磁気テープが発売されたのは 1947年からということなので、当時の録音は SP盤だったのではないだろうか。
2. LPをターンテーブルに吸着させて、平面性と剛性を高める方式を開発した発明家(寺垣武氏だったと思う)の自宅を NHK(?)の記者が訪ね、取材したときに聞かせていたのが、この Lionel Hamptonの LPだった。ただし日本盤かそうでないかは不明だが。レコードにはまだまだ情報があるといった意味のことを話していたかもしれない。
NHKクロニクルで調べてみると、下記の番組があった(1994年2月7日放送)。Audio Technicaからこの吸着シートが発売された前後の取材をみた記憶があるのだが、違っていたのだろうか。
ナイトジャーナル: 大月隆寛の聞き書きルポ
アナログ・レコードの復権にかけた男たち
アナログ文化はまだ発展途上
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200999402070130148/

30年以上前に友人から借りてカセットに録音した、日本盤(VIM-5505(M))。ドルビーを掛けたか掛けなかったかは不明。
グラフ(wavespectraを使用)は Lionel Hamptonの Vibraphoneで始まり Corky Corcoranの Tenor Saxが奏でる冒頭から、Charlie Shaversの Trumpetへバトンタッチする部分まで(赤線)。黒線は Tenor Saxから Trumpetへバトンタッチする部分の拍手。
15kHz以上がカットされているように見える。音がぼやけていてがっかりしたレコード。これと同じ LPが番組で紹介されていた。

たまたま見つけて購入した古いLP(テイチク JDL-5041)
詳細はわからないが、1950年代後半に発売されたもののようだ。
ビクター盤よりも音がいいのではないかと期待してターンテーブルに載せたが、期待に反して 11kHzあたりで落ち込んでいた。音飛びはないもののクラッチノイズが多く、ちょっと残念。

こちらも古い日本盤(テイチク JDL-2082). 10inch.
1950年代半ば頃のものか。内側のスリーブを見ると、すでに 30cmステレオ盤も発売されていたらしい。かなり高音域まで収録されている。クラッチノイズが多いのが残念だが、ほぼ満足できる音質か。
エンディングから拍手がフェードアウトするまでの約20秒間の周波数も比較してみよう(audacityを使用)。
青線が JDL-5041、赤線が JDL-2082。同時期の盤でありながら、大きく差が出た。ノイズが気になったので、 10kHz以上をカットしたということだろうか。

ちなみに JDL-5041と VIM-5505の周波数分布を比較してみると、よく似ていた。

30年以上前にカセットテープに録音したものなので、劣化はあるとは思うが。
今後は米原盤も探し、比較してみたい。たとえば以下のようなもの。
DL-7013
ED-598