サンデーたかひろ

絵描き・ながさわたかひろの制作実況 “from Machida, Tokyo”

『愛の山下裕二』:TARO賞展出品作品

2023年01月29日 | 愛の肖像画

2020年2月13日

 第23回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)の授賞式に行った。 
と言っても出品していたわけじゃない。目的は美術史家の、そしてTARO賞審査員の、山下裕二さん!

 僕が自分の名前を仮名表記にしたのは、2009年のTARO賞(第13回)のときが最初で、それからはほぼ毎年個展を催してきたけれど、
そのすべてを見てくれた美術関係者は、おそらくただ一人、山下裕二さんだけだ。
僕を気にかけてくれている…というわけではなく、常にそれだけギャラリーを廻っているということだと思う。
 専門は古美術ということになるのかもしれないが、その目をもって、他の誰より多く、現代の作家を見ている。
まさに全時代的批評家。これほど信頼できる人はいない!と思う。

 2017年、木場にあるEARTH+GALLERYでの個展のとき、山下さんから「そろそろ絵を描きなさいよ」と言われた。
ここでいう〈絵〉とは、版画とかドローイングじゃない、つまり〈ペインティング〉ということ。
言われた通り、時間はかかったがそれから筆をもって描き始め、そしてその手応えを掴みつつあるところで、
さぁ、山下裕二を描こう!
そしてペインティングを見てもらおう!というわけだ。

 レセプションの最中、いろんな人に声をかけられる山下さんを遠目で追いつつ、一人になられた瞬間に駆け寄って声をかけた。
「こんにちは!」
「よぉ」
「今日ここに来たら会えると思って参上しました。いま『愛の肖像画』という新シリーズを制作中なんですが、山下さんを描かせてください!」
「…いいよ。どうすればいいの?」
「写真を撮らせてください」
「どこで?」
「ちょっと明るいところで」と、やや明るい壁の前へ移動して、パシャ!
「仕上がったらご連絡しますので、見てもらえますか?」
「いいよ」…と、なんともスムーズ。流石です。

 

2月26日

 “山下裕二”を描き終える。イイお姿。なかなか面白い仕上がりと思う。
ご本人にどう見てもらえるか、ドキドキの態でメールすると、すぐに電話が鳴った。
「山下です。さっそくだけど明日はどうかな?」
「!」
「今の住まいって町田だよね?小田急線か…新宿西口を出てすぐ、小田急ハルク左の喫茶店〈ピース〉に13時で、どう?」
「わ、わかりました!宜しくお願いします」

 

翌、27日

 約束した時間ピッタリ、山下先生がいらっしゃった。聞けば、新型コロナウィルスの影響で予定していた仕事がとんでしまった、
そんなタイミングで僕からのメールを受けとったらしく、「ちょうど時間が空いたところだったんだよ」と。

「どれどれ、早速見せてもらおうかな」
「あ、ハ、ハイ。(ゴソゴソ…)こ、これです。いかがでしょう」
「ほお〜なるほど。で、ここに直接書いちゃうわけ?」
「ハイ。筆記用具、いろいろ持ってきたので」
「フム。何色で書こうかな…」

そして、油性マーカー〈マッキー〉フルセットの中から青を選び、スルスルスル___

「はい、どうぞ」と渡された。

わ〜い!イイお言葉、いただきました〜。『愛の山下裕二』完成です!
山下先生、ありがとうございます!オレ、グイグイ行きます!

 

(2020年2月27日了)

 


 

第26回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展の出品作品です。
会期までに作品テキストを小出しに更新していきます。
会期は、2月18日(土)〜4月16日(日)
場所は、川崎市岡本太郎美術館
です。

ぜひ見に来て下さい!

 

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