「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

漱石の俳句

2005年01月12日 | 歌びとたち
 作家としての漱石は、旧札の顔同様馴染み深いと思いますが、2500句を超える俳句のほうはあまりもてはやされることがないようです。でも、松山時代から熊本時代にかけては,子規の影響もあって句作にかなり熱心だったようですし、新進の俳人として評価もされていたようです。のちの小説の持つ雰囲気とはかなり違った一面もうかがえます。冬の句の中から二句あげてみます。
   親展の状燃え上がる火鉢哉

 まさか滞納の督促状ではないでしょう。もはや姿を見ることのない火鉢ですが、じっと燃え尽きるまでの余韻に、秘密めいたものを感じます。恋人からの内緒の手紙でしょうか。燃え上がるのは手紙だけではなさそうです。

   雪の日や火燵をすべる土佐日記

 上五は気になりますが、「男もすなる日記」を読みさしての、うたた寝なのでしょう。蕪村の世界です。大漱石の意外なしなやかな、ときめきを垣間見ます。

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1 コメント

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背中をまるめ (ラグタイム)
2005-06-11 16:40:30
 丸めがねの夜半翁が浮かびます。 



 うづみ火や我がかくれ家も雪の中

 うたゝ寝のさむれば春の日くれたり

 

 手紙好きだった漱石「君の手紙をよむと君の人間を貫いて見るような心持ちがする。君と二三月交際してもあれ程には分るまい」

 共感します。
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