英彦山には、古くから、多くの文人墨客が訪れています。小杉法庵、野口雨情、吉井勇などの足跡が著名です。この項では英彦山の文学関係を中心に記すことにします。
今回のコースでは最初の訪問地が豊前坊でした。私には昔からの呼びかた豊前坊のほうがしっくりきます。神仏分離で廃仏毀釈が行なわれる前の呼び名です。
ここが豊前坊天狗の本拠で、今年も、もうすぐ11月3日この境内で、山伏達の吹き鳴らす法螺貝の音が紅葉を震わせるなかで護摩焚きが行なわれ、火渡りがあることでしょう。
今では高住神社と呼ばれる社の背後の巨岩、天狗岩に食い込んだ形の社に祭られている天狗の面は昔のままでした。此の境内の大きな橡の木の傍らに、杉田久女の句碑がひっそりと建っています。
「橡の実のつぶて颪や豊前坊」 この句が日本新名所俳句 英彦山の部で銀賞受賞の句です。(写真)
杉田久女の名前が俳句界に広く知られるようになったのは、ここ英彦山を詠んだ句で、最優秀賞の金牌賞と銀賞を受賞してからです。
眼前にしきりに落ちてくるトチの実を「つぶておろし」ととらえた斬新さが目をひきます。
一方、最優秀賞の句は、「谺して山ほととぎすほしいまま」で、彼女の代表句の一つとしてよく知られるところです。
こちらは、スケールの大きい空間が描かれ、ホトトギスの澄んだ音色の鳴き声が木霊として反響する壮大な舞台が鮮やかです。
この句碑は、奉幣殿のすぐ下の石段脇にひっそりと建っていました。俳句を嗜んだ伯母と見た幼い日の記憶とは場所が違っているように思いました。(写真)
小倉の禅寺、円通寺には英彦山で得た「三山の高嶺つづきや紅葉狩り」の句碑も建っています。
棟方志功の版画「天狗の柵」の原点は小杉法庵の「此の山に棲むといふなる天狗共あらはれて舞へわれ酔ひにたり」や私の好きな吉井勇の歌にあるようです。この版画は一時持っていましたが、海外にも持参して、帰国の折に人にあげて、今は手元にありません。
高千穂峰女にも、「観楓や英彦山天狗いで舞へよ]という句や、「老杉に鬼棲み夏の雲かける」の句があります。
今回初めて訪ねた英彦山権現神社(滝の坊)の境内にも峰女の句碑が建てられていました。
「権現のえにしにつどふ岩もみぢ」
歌舞伎の“彦山権現誓助剣”はご当地もので、博多座でも上演されていました。
謡曲「花月」の舞台もここ彦山から始まります。彦山で天狗に攫われたわが子を探す父親が、清水寺で再会を果たすといった筋書きです。
最後に吉井勇の歌をあげます。
「寂しければ酒ほがひせむこよひかも彦山天狗あらはれて来よ」
「英彦山はおもしろき山杉の山天狗棲む山むささびの山」
「彦山に来て夜がたりに聴くときは山岳教もおもしろきかな」
英彦山のご紹介ありがとうございます。久女は、以前のboa!さんの記事で初めて知って、好きになりました。 信じて突きすすむ性格も。
銅の鳥居から奉幣殿まで長い坂を登りながら浮かんだのでしょうね。「…ほしいまゝ」の拡がり、「スケールの大きい空間が描かれ」好いですね。「もののあはれ」の物語で、学ぶことばかりです。
もう一つ
病める手の爪美くしや秋海棠 これも好きです。しいんとした気配、薄紅の花も、爪も。
写真もたくさん見せていただいて臨場感もたっぷりです。ありがとうございます。
チョッと早かったようですね。
山道は息が上がりしんどいですね、良く頑張られました。
2・3日して体のアチコチの筋肉が凝ってマッサージ通いとなりませんように祈ります。
ところで、廃仏毀釈の立案の犯人は誰か?興味があります。
公武合体から明治に、維新政府にいた宮家の連中か?岩倉具視が疑わしいですな。
天皇を神聖化した事が最大の汚点でしょうね。
奈良時代の天皇の多くが仏教推進者だったのを知らなかったのか?
神仏習合が日本のあるべき姿、一神教徒と異り”心の広い民族”と誇りたいですよね。
我々世代は、結婚は神式で、葬儀は仏式が普通。それで違和感なし。
一度だけ仏式の結婚式に参列した事がありましたが。
脱線しました。
英彦山=ヒコサンと呼ぶのは大昔、しばしば聞いておりましたが、一度も行ってません。
ヒデヒコサンと呼ばないのは?
英語のknifeと同じく、最初のkを発音しないように
・・・、日本語は難しい。
久女は私も好きな俳人です。ひたむきに信じる道を歩んだ一生でした。清少納言を重ねて思い描きます。彼女の句では、華やかなハリを感じさせる句が好きです。
代表句の「花衣ぬぐや纏わる紐いろいろ」「風に落つ楊貴妃桜房のまま」のような。
戦後すぐに悲運のうちになくなりましたが、小倉で、久女に直接の手ほどきをうけ、鍛えられて、才能を開花させた橋本多佳子もいい句を残しています。久女は絵も教えています。
我があるじは小倉中学時代、杉田宇内先生に”図画”を教わっています。
多佳子の句
裏門の石段しづむ秋の潮
大阿蘇の波なす青野夜もあをき
生まれ落ちるとお宮参りから始まる一生が、仏となって終わるのも、幅があっていいものです。
一年も、初詣の神社参拝からはじまって、春秋の彼岸参りに、お盆の寺参り、秋の鎮守の祭りでお神輿を担ぎ、、そして除夜の鐘で一年が締めくくられる日本。だからこそ育つ豊かな文化です。侘び寂びも受け入れられるのですから。
スロープカーの発着所の資料館で、展示されていた仁王さんが強烈でした。鋸で切腹させ、くりぬき、両手足を切断するといった仕儀は、お上の命とはいえ、大和民族の血にはない異質と感じました。廃仏毀釈も言葉ではなく形で見ると、想像を超えていました。
英彦山の[英」は、霊元法王の院宣に拠るもので、「天下に抽んでた霊山」だから英の字を授ける。といったところからのようです。
ご心配をいただいていますが、今のところ何の支障も出ていません。年齢とともに遅く症状が出ると聞いてはいますが。
雪月花さまでなく、bonitoさまですね。
お詫びして訂正致します。
これからもどうぞ宜しくお願いします。
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
DANSIN'HEARTに伺いました。瀟洒でやわらかな雰囲気のブログですね。私のサイトにブックマークをいただいているようで、ありがとうございます。
行方知れずになったコメントを是非拝見したいものです。歴史の奥行きと文学者達の面影を残す鎌倉は私も好きでお寺めぐりや、お墓参りをしました。
また、お越しくださいませ。