「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

嘉穂劇場のこと

2006年12月06日 | 旅の足あと

 嘉穂劇場の伊藤英子さんに、今年度のニッセイ・バックステージ賞が贈られました。
 この賞は、舞台芸術を裏方として支え、すぐれた業績を残した人に贈られるものです。


 伊藤さんは、父、伊藤隆氏の建てた小屋を、女学校卒業と同時に協力して守り続け、昭和21年、父親の没後は中心になって、運営に当たり、40年の年月を嘉穂劇場と共に生きてこられました。この間、西日本新聞社や福岡県からの、それぞれ“文化賞”を受賞されています。今回はそれらに次ぐものです。


 嘉穂劇場は筑豊の石炭産業の繁栄と共に人々に愛され、今日に至るまで芝居小屋の灯をともし続けてきた今では数少ない歌舞伎様式の建造で、回り舞台も持つ芝居小屋です。当時としてはかなりモダンな木造建築だったことでしょう。

 私も、何度かこの劇場での公演を見ています。最初は全国座長大会の舞台でした。座長大会の舞台は、土地柄が、嘉穂劇場の雰囲気によくマッチして、客席の盛り上がりにスッと溶け込んで、熱狂したものです。はじめて役者の首に掛けられる1万円札のレイを見て、拵え物?と、連れ合いに尋ねたものでした。
 観世の蝋燭能を観たのもこの劇場でした。

 2003年に筑豊地方を襲った豪雨の災害にあって、桟敷も舞台も2mからの水につかり、再起不能と思われていましたが、劇場を愛する人々の募金や、この劇場を踏んだ多くの芸能人たち(津川雅彦・西田敏行・明石やさんま・緒方拳等々)の熱心な復興への募金活動や寄付、その他、NPO法人になることによって、日本宝くじ協会や、県、その他の助成金によって、見事に1年がかりの修復が完成しました。
ご多聞にもれずシャッターを下ろした商店が多い飯塚の街中で、かつて炭鉱景気に沸いた三日に二日の興行といった盛況は夢物語ながら、異彩を放っています。

     

  詳しくは嘉穂劇場ホームページへ画像もお借りしています。
八千代座
 同じ九州は熊本、山鹿灯篭で有名な山鹿には、明治の建造になる「八千代座」があり、こちらは、国の指定重要文化財で、平成の大修理が13年に完成していますが、修復なった八千代座には未だお目にかかっていません。
内子座
 四国愛媛の「内子座」は、観光客で賑やかな長い坂道を下った商店街のやや奥まった処にひっそりと看板が騰がっていました。やはり、歌舞伎様式の木造、入母屋造りですが、嘉穂劇場より小規模でした。
金丸座
香川の「金丸座」は、毎年,名題の役者の公演で話題を提供していますが、こちらは天保年間に創建された現存する最古の小屋で、国の重要文化財です。移築されて、金毘羅さんの石段の登り口の左側に威容を誇っています。