「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

12月の花

2006年12月02日 | 季節のうつろい
 師走に入ると何か気ぜわしさがつきまといます。冬至に向かって日ごとに日差しも衰えて行き、日も短くなっていきます。
 すっかり手入れを怠った庭は、荒れ放題で、忘れ花のコスモスや、風船かずらの小さい珠が、ツワブキの黄色と、混じってまだゆれています。
 菊も枯れが目に付くようになってきましたが、移ろう色と香に思いが残って、まだそのままにしています。
 
     枯菊と言ひ捨てんには情けあり   松本たかし

     静かなり枯菊焚いてゐる日向    川口利夫

 



 花の乏しい12月の花では、やはり枇杷の花が圧巻です。枇杷は実しか絵にしたことがないのですが、日本画ではよく画題にされています。

     住み古りて枇杷の花咲くとも知らず   大久保橙青

 何処といって見所もない五弁のやや黄色みを帯びた白い花を、逞しい葉の間に、負けじと固まって咲かせています。こうしてみると、八つ手の花にしても、銀木犀にしても、白い花色で、身を寄せ合って群れ咲くものが多い気がします。

 先代が植えていた椿や、侘助、山茶花の彩りが辛うじて寂しい庭のアクセントになっています。
        


いつ散るとなく山茶花の散り敷ける  小勝亥十