The Blueswalk の Blues&Jazz的日々

ブルースとジャズのレコード・CD批評
ときたまロックとクラシックも
 
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ROCKIN' in RHYTHM   ~The Monkees~

2012-01-21 22:25:05 | 変態ベース

ROCKIN' in RHYTHM
~The Monkees~
           By 変態ベース
 失礼な、なにがそんなに可笑しいの? Blueswalkさんにプッとふかれてしまった。ノンジャズの日に私が選んだのは“モンキーズ”。ちょっと軟弱だけれど、笑うことはないでしょうが。自分だって聴いてきたくせに。
皆様、洋楽の初体験はいつ頃?どんな音楽だったのだろう?私が小学生から中学生にかけては、テレビで「ザ・ヒットパレード」や「シャボン玉ホリディ」のような音楽バラエティが花盛りだった。ザ・ピーナッツ、クレイジー・キャッツ、布施 明等の歌うポップス調のナンバーには、ベテラン歌手のムード歌謡とはまた違った、リズミカルでソフィスティケートされた爽やかさが感じられた。グループサウンズが流行したのもその少し後だ。彼等の出現は、勿論ビートルズやローリングストーンズのようなロックグループの台頭に刺激されたものだ。さらにヴェンチャーズ、寺内タケシとブルージーンズ等、エレキブームの火付け役の登場。加山雄三主演の「エレキの若大将」が製作されたのもこのあおりを受けたものだ。そこに折からのフォークブームが重なり、高校時代は猫も杓子もギターを片手にみたいな時代だった。さてそんな和製ポップスが形成される過程で、我々はモンキーズと出会ったのだ。最近、テレビCFに忌野清志郎が歌う「デイドリーム・ ビリーバー」が使われていた。私と同世代の方(会員で言えばBlueswalkさんやK.T.さん)だったら、懐かしく彼等のことを想い出したのではないだろうか。


モンキーズが結成されたのは、60年代の中頃。当時はすでにビートルズ全盛の時代。デヴュー以来、シングル盤や映画「ヤア!ヤア!ヤア!」「ヘルプ」の大ヒットで、世界中にビートルズ旋風が吹き荒れた。やがてショービジネスの総本山アメリカからも外貨をむしり取り、女王陛下からはうやうやしく勲章を賜ったのだ。(後にジョン レノンはその勲章を突き返してしまったが)そんな悔しい状況を、指をくわえて眺めているような米音楽業界ではない。早速ビートルズに対抗すべくニュースターをデヴューさせるプランが練られた。その結果、オーディションを経てかり集められた若者たちがモンキーズであった。業界が狙ったのは、ヒットチューンを量産するアイドルグループだった。ポップス界のヒットメイカー、ニール ダイヤモンドやキャロル キングの作品を与え、当初はその目論見がものの見事に的中した。同時に製作されたテレビ用の帯番組は日本でも放映された。ちょうど私が中学生の頃と記憶している。モンキーズの番組が始まると、私はいつもテレビにかじりついていた。「モンキーズのテーマ」「恋の終列車」「素敵なヴァレリ」彼等が歌う曲には、日本の歌謡曲にはないカラッとした陽気さがあった。モンキーズのナンバーが、洋楽に親しむきっかけになったのだ。いつも彼等のヒット曲が頭の中でリフレインしていた。しかし中学生のガキにはとてもレコードを買えるほどのお小遣いがない。仕方がないので、おもちゃのようなマイクをテレビのスピーカーに押しあてて、お天気屋のテープレコーダーに彼等の歌を録音したのだ。(このレコーダー、録音のレバーを押してもその日の気分でうまく回ってくれない、それはもう厄介なテープレコーダーだった。それでも彼らの音楽を聴く手段はそれしかなかったので、唯一の頼みの綱だった)信じられないが、その雑音だらけのテープを宝物のように毎日聴いていたのだ。それから少したって、姉が友人からモンキーズのLPを借りてきてくれた。それはもう夢のような出来ごとだった。
しかしそのお仕着せのプロデュースとハードなスケジュールがやがて軋轢を生み、短期間のうちにグループは崩壊に向かった。ベースのピーター トークがドロップアウトし、ギターのマイク ネスミスも自分のバンドを結成するために独立した。思えば奇妙なグループだった。マイク ネスミス以外、楽器の経験者がいない。特訓したってそんなに簡単に楽器なんかマスターできない。そんな輩をよくオーディションで合格させたものだ。彼等はそのままコンサートツアーで海外にも遠征した。その途上彼等は日本にも立ち寄った。一体どんなステージだったのだろう。素人みたいな演奏して帰ったのかな。それでも笑ってはいけない。彼らこそ私の洋楽事始め。モンキーズに出会っていなかったら、ジャズとの巡り合いもなかったかもしれないのだ。

2011 BEST
一昨年あたりから私は少しヘンなのだ。なに言ってるの、あなたズーッと前からヘンだったじゃない。いやいやそういう意味ではなくて、音楽の嗜好が変ってしまったということを申し上げたいのだ。つまりこの一年ほどクラシックのCDばっかり聴いているものだから、自分でも一体どうなってしまったんだろうと戸惑っているのだ。最近、ジャズがちっとも面白くなくて、長いスランプに陥っていた。そういうことは以前にも再々あったけれど、たいてい時間がたつと復活していたものだ。ところが今回のスランプはいっこうに出口が見えない。それどころか、クラシックのCDを聴いていたらこれがとても居心地良い。本当はクラシックの方が向いているのではないかとか、あるまじきことを考えだしたからやっぱりヘンなのだ。
そんな状態なので、昨年を振り返っても感銘を受けたジャズが思い浮かばない。敢えて上げるとすれば、久詰氏に観せて頂いたトニー ウィリアムスのDVDだろうか。この映像は、彼の最後のクインテットを収録したものだ。VSOPを経て8ビート路線から、4ビートジャズに回帰したウィリアムス。このクインテットは是非とも聴きたかったグループのひとつだが、ウィリアムスの急逝により叶わぬ夢となってしまった。その空白を埋めてくれるのがこのDVDだ。彼等のライヴ盤は東京BNにおけるCDが発売されている。但しこの作品だらだらとソロが長くしまりがなかった。それに対しこのDVDはスタジオで収録されたものらしく、最初からビデオ作品化することを念頭に置いていたようだ。そのためか普段の演奏より短く切り詰められ、よりコンパクトな演奏になっている。トニー ウィリアムスはやかましいからダメ。そんな人にはお勧めできないけれど、ハードな4ビートが好きな人には観て頂きたい作品だ。☆☆☆☆☆

師走 2011 
12月10日(土)、ディアロードのオープニングライヴがあった。KJSからはTKさん、FJさん、OKさんが参加し、あの狭い空間に20名くらいはいただろうか、いい雰囲気でイヴェントを迎えることが出来た。JR放出駅を降りるとすぐ向かい。4階までの狭い階段が難点だが、ジャズ喫茶のオープンスペースは明るく見晴らしも良好。当日はオーナー一家(夫婦と娘2人)総出動で応対していたが、思いのほかの繁盛にてんてこ舞いといった様子だった。平日もこれだけお客さんが入ればよいのだが、たぶん翌日はまた閑古鳥状態に戻ったのでは。演奏はヴォーカルとテナー、ギター、ベースの4人編成。アマチュアくさいけれど、ギターの人(熊谷有真さん)はかなり秀逸だった。テナーサックスの方がリーダーらしいが、実はディアロードの改装工事に携わった水道工事屋さんだとか。工事中にこの店がジャズ喫茶であることを知り、それが御縁で今回のライヴ企画に話が広がったようだ。いろんな出会いがあるものだ。
ディアロードには機会があれば立ち寄りたいと思っている(ちょっと遠いけれど)。ジャズ喫茶受難のこのご時世に、せっかくオープンしたからには、もう少し宣伝にも力を入れて、それ見たことかと後ろ指さされないよう頑張ってもらいたいものだ。微力ながら応援したい。


昨年はKDさんとIKさんに参加して頂いた。お二人ともジャズの経験も豊富で、また面白い話を伺うこともできるだろう。今後KJSの活動がもっと盛況で楽しくなることを期待したい。しかし乍ご存知のように、会を離れる方もおられるわけで、長い目で見ると会員数は差し引き減少傾向にあることは間違いない。言うのは簡単だが、やはり例会には常時15名程度参加することが望ましいと思う。(もちろん参加人数が多すぎても時間的制約もあり運営が難しいのだが)
新しい会員を迎えることはこちらも楽しみに感じるところだ。もちろん会の空気にそぐわない人が応募することもあるわけで、多少なりともリスクは伴う。しかしジャズのようにポピュラーな人気を得ない音楽は、知己や仲間が出来にくいものだ。そういう意味でもKJSの存在は大変貴重なものである。今後の当会の発展を見据えて、今年も随時新規会員は募るべきだろう。会の発展に関して、何か良い知恵があれば提案頂きたいものだ。

12月17日(土)今年最後のライヴは、枝 信夫氏主催による演奏会だ。場所は遊音堂。と言ってもお聞き覚えないだろう。野田阪神下車、徒歩数分。スタンウェイ フルコンサートピアノが売り物のミニホールだ。元々クラシック専用のピアノレンタルサロンなのだが、昨年からジャズの演奏会も開くようになったのだ。今回のメンバーは、唐口 一之(tp)、杉山 悟史(p)、枝 信夫(b)、北岡 進(ds)。唐口さんは関西で最も多忙なトランペッター。古くからライヴ活動をやってこられたので、ご存知の方も多いだろう。トランペットの語り口はマイルドでベテランらしく落ち着いている。おしゃべりも滑らかで、休憩時間は観客席に入って皆さんとの会話を楽しんでおられた。
今回特に驚いたのは、ピアノの杉山さん。まだ20代の新進気鋭のピアニストである。名前も聞き初めだし、もちろん演奏を聴くのも初めてだ。この人近い将来ブレイクするのでは。そんな予感がする(私の予感はあまり的中しないが)。この人はかなり巧い。関西在住の若手の中でも抜き出ているように思った。曲もよく知っているようだし(あたり前のことだが)、ベテラン相手にレスポンスもよく、フレーズもよくこなれている。曲想によって演奏スタイルが多少ばらつくが、若手にはありがちなことだ。徐々に自分のスタイルも固まっていくことだろう。こういう有望株が引き抜かれて東京に行ってしまうのだ。名前を記憶にとどめておこう。


過小評価の人たち  ~ハル・ギャルパー~

2012-01-16 22:10:59 | Jazz

過小評価の人たち
~ハル・ギャルパー~
                                       By The Blueswalk

 ハル・ギャルパーっていうピアニストをご存知だろうか? ジャズにはチョットうるさいKJS会員の中でも知っておられる方は少ないだろう。ましてや、ワシはギャルパーのファンじゃなどとおっしゃる方はまず居ないだろう。そういう僕も知ったのは4~5年前なのだから偉そうなことはいえないわけだけど、これが何と摩訶不思議なプレイヤーなのだ。一言で云うとこの人「損な役回り」をさせられて一流に成れなかったと言ったらいいだろう。何を損したかというと、自分のリーダーアルバムを殆んど脇役に食われてしまったとういうことなのである。ゴツゴツと岩を叩き割るようなハンマー奏法とでも形容できる力強いピアノスタイルが特徴であり、一度聴いたら忘れられない印象に残るピアニストである。テクニック的にも確実でかなり安定した演奏を聴かせてくれ、さらにはバップを弾いてもよし、モードならなおよし、フリーもこなすよといったバーサタイルでありながら、ちゃんと自分の豊かな個性を持ったピアニストなのだ。なぜ、ジャズ・ファンの間でもあまり知られていないのか? 運が悪かったとしか言いようがないのだ。一流の資格十分なのにである。僕の中では、現在では大御所の一人と呼ばれるチック・コリアにも引けをとらない三ツ星ピアニストなのである。
 1938年4月18日、マサチューセッツ州生まれ。チェット・ベイカーやキャノンボール・アダレイとの共演で頭角を現したということであるから、元来はオーソドックスなピアニストといえそうであるが、フリーやモードの洗礼を受けた奏法があちこちに垣間見れて、豊富な経験もあわせ幅広い音楽性を持っているようだ。だから、どんなタイプのジャズにも対応でき、さらに非常な個性を持ったピアニストといえるだろう。ちょうど、[チック・コリア×2+セシル・テイラー]を3で割ったような感じといえば判りやすいか。つまり、両者の中間でどちらかというとチック・コリアに近いといったニュアンスだ。

 『ナウ・ヒア・ディス』は1977年録音の初リーダー・アルバム。日野皓正(tp)、セシル・マクビー(b)、トニー・ウイリアムス(ds)といった、本人より一枚も二枚も上手の猛者を脇役にしたのが不味かった。特に日野皓正が出色の出来で、どう聴いてもトランペット・カルテットになってしまっている。さらに、マクビーのベースが縦横無尽に駆け巡り、ウイリアムスはこれでもかこれでもかとプッシュしまくる。ギャルパーもリーダーらしく6曲中5曲はオリジナルを引っ提げ、本レコードに掛ける意気ごみが伝わっており、そこかしこに印象的で強い自信に溢れた本当にすばらしいピアノを披露しているし、オリジナル曲では作曲者としてのギャルパーを遺憾なく発揮してはいる。しかし、相棒たちがリーダーを立てるなんていう心優しい連中ではなく、リーダーを無視したかのごとき独創的振る舞いの前にはいかんともしがたく、返り討ちを浴びるしか仕方がないのだ。またこれが功を奏して、アルバムの出来としては非常に完成度の高い傑作となっている。日野皓正としても彼自身の数多いレコーディングの中でも指折り数えられる出来のレコーディングではないだろうか。
ちなみに最近、初リーダーアルバムとして、CDタイトルが『ゲリラ・バンド』というのが出ているので、このレコードは発売時点では初リーダーとされていたが新たに古い録音のレコードが発掘されたのだろう。

 『スピーク・ウィズ・ア・シングル・ヴォイス』は1978年、ロージーズ(ニュー・オーリンズ)でのライヴ録音。こちらの共演者は当時飛ぶ鳥を落とす勢いであったブレッカー・ブラザーズ。マイケルはまだ20代、ジャケット裏の写真を見ても若々しい。前作が時代を反映したモーダルな作品に仕上がっているのに対し、本作はライヴということもあり、長尺でハードな演奏となっている。ギャルパーの印象的なピアノは相変わらず好調を維持しており、1曲目のイントロに示されるピアノソロは非常に内省的で好感が持てるし、途中のソロでも一音一音粒のそろった強烈な音塊を投げかけている。でも、ここでの主役の座はやはり二人のブレッカーに軍配が上がるだろう。ランディのトランペットはあくまでも明るく輝き、はつらつとしたプレイを見せる。マイケルのテナーは時にハードバップ的に、時にモーダルにと変幻自在でスピード豊かなプレイで応戦するといった具合だ。何といってもこの1978頃のブレッカー・ブラザーズは『ヘヴィ・メタル・ビバップ』という傑作を作っている絶頂期といっていい時代なのだ。いくらギャルパー好調持続中と云えど分が悪い。

 『アイヴォリー・フォレスト』は1979年録音の作品。本作の難敵は、切れまくるジョン・スコフィールドだ。ハル・ギャルパーって選りによってなんでこんな強者ばかりと共演したんだろうか? 確かに、エンヤというレコード会社が選べる共演相手は数少ないのだろうけれど、まあ運の悪い人だ。逆に言えばこの悪運が傑作を生んだともいえるのだが・・・ この前年にジョン・スコ名義で『ラフ・ハウス』という、ベースのみが異なるメンバーでアルバムを作っているので、ジョン・スコフィールド・カルテットの作品の延長と捉えてもいいのだろう。
ここでも全6曲中4曲がギャルパーのオリジナルで、それぞれが印象的なナンバーで構成されており、作曲者としてのギャルパーが遺憾なく発揮されており、鍵盤を叩くようなピアノも相変わらず個性的で印象深い。ジョン・スコはちょうどマイルス・デイビスのグループに入る前の時期で、トレードマークである切れまくるギタープレイを全編に渡って繰り広げており、ソリッドでシャープな音がすばらしい。また、ギターソロ演奏の“モンクス・ムード”でのスローなソロワークは切れるだけがジョン・スコじゃないよとでも云っているような豊かで暖かい叙情性をも発揮している。また、このレコードのいいところは、上述のように、ギターソロ曲あり、ピアノソロ曲あり、それぞれのデュエットあり、カルテットありとバラエティに富んだ構成が為されており、ワンパターンになりがちなギター・カルテットに工夫を凝らしているところだろう。


2011年のベスト

2012-01-12 23:47:52 | Jazz

2011年のベスト 
                       By The Blueswalk

 2011年のニュースは勿論、東北の大震災とそれに伴う原子力発電所事故に尽きるわけであるが、個人的には暗いばっかりでもなかった一年であったように思っている。これまで37年間、コンピューターソフト開発の世界に身を投じていた自分が、よもや教育の世界に足を踏み入れるとは想像もしていなかった。実は、もともと教育学部・中学校教員養成課程・数学専攻というところの出身で、当たり前だが大学の同級生の殆んどは中学校・高等学校の数学の先生になっており、教育の場に縁がないわけではなかったので、まあ本来の古巣に帰ってきたといってしまえないこともない。そういう意味で2011年は自分にとって明らかに平年とは違った心に残る一年ではあった。ところが、国の予算で動いている事業のため、予算が切れる今年の3月で解散となってしまい、またもや就活の憂き目にさらされることとなっている今日この頃である。
 さて、ところで私の2011年のジャズ・ライフであるが、相変わらずレコードやCD集めに余念がなかったと言わざるを得ない。やめようやめようと思いながらついついヤフオクの画面を眺めている自分に気がつくと情けなくなってしまうこともしばしばであったが、もう一種の病気、中毒と諦めてもいる。そんな中から、今年のベストを選んでみようと思う。まずは、東芝EMIからの999円シリーズものにレアで貴重な作品が目白押しであったので、その中から一押しの数点が挙げられよう。

クレア・フィッシャー『ファースト・タイム・アウト』は1962年のデビューアルバム。聴いてすぐにビル・エバンス系のピアニストであることが判る。知的であるがビル・エバンスとは少し違う、最初から計算されたような破綻の微塵も感じられない構成美を持っている。そこが、逆にエバンスにある危険な領域一歩手前まで踏み込むような危うさ、ハラハラドキドキ感がなく、物足りなく感じられるところがあるかもしれない。次作『サージング・アヘッド』ともども最も気に入った作品であった。


 テディ・エドワーズ『サンセット・アイズ』は1959年の作品。ブラウン=ローチ・クインテットのライヴ盤『イン・コンサート』が録音されたのは1954年の4月と8月。レコードのA面が後者でハロルド・ランド(ts)、リッチー・パウエル(p)を擁した布陣、B面が前者でこのテディ・エドワーズ(ts)とカール・パーキンス(p)を擁したクインテットである。つまり、ハード・バップ・ジャズの鉄壁のブラウン=ローチ・クインテットの立ち上げ時はこの人が2管フロントを担っていたのである。そういえば、このタイトル曲もライヴ盤に収録されています。テクニックはあんまり感じられないが、黒いブルース・フィーリングがたまらない。


 マイク・コゾー『ウィズ・エディ・コスタ・トリオ』は1956年作。タイプとしてはレスター・ヤング系のスムーズでメロディアスなフレーズを特徴としている。スタン・ゲッツとズート・シムズの中間ぐらいかな? よく歌い、よくスウィングするテナーが心地いい。リーダー作としては『マイティ・マイク』の2作しか残していないので非常に貴重な1作である。夭逝したエディ・コスタのトリオのバックも秀逸。


 メイナード・ファーガソン『ア・メッセージ・フロム・バードランド』は1959年作。失礼ながらぼくはこれまでメイナード・ファーガソンを全く無視してきた。なぜかというと、1954年のクリフォード・ブラウンのジャム・セッション、ここにファーガソンが参加しているのだけれど、ひとりハイノートでキーキー騒音をわめき散らすだけの演奏に終始していたからだ。その後、“ロッキーのテーマ”など映画音楽で大当たりして大金持ちになった?のがさらに気に入らなかった。でもぼくもそろそろ大人の対応をしないと・・と思い、恐る恐る禁断の果実を拾ったということかな。ところがまあ何とハツラツとした楽しいジャズであることか。ハイノート・ヒッターは相変わらずだが、ライヴであることも、ビッグ・バンド・ジャズの醍醐味が一杯、まさに“目から鱗が落ちる”とはこのこと。
 以下はヤフオクで手に入れたアナログ盤から。


『ハンプ・アンド・ゲッツ』はヴァーヴ得意の大物の組み合わせセッションで、ヴァイヴのライオネル・ハンプトンとテナーのスタン・ゲッツの異色組み合わせだ。1955年録音だから、ゲッツは最絶頂期でハンプトンもまだまだ元気な頃、一つ間違えばケンカセッションになるところ、奇跡的に大傑作が出来上がったという感じだ。1曲目の“チェロキー”だが、最初からアドリブで押し捲り、まったくチェロキーのメロディーが出てこないが、そんなことはどうでもいいくらい息をつかせぬ白熱した演奏だ。また、次のバラード・メドレーがこのレコードでの白眉。


 ズート・シムズ『アット・イーズ』は前から欲しかったレコードだった。ぼくはズート・シムズの演奏なら何でも欲しがる大のファンなのだけど、ズートのソプラノは珍しい(全曲ソプラノで通しているのは『プレイズ・ソプラノ・サックス』くらいかな)ので久しぶりに軽く浮揚するようなソプラノを聴くことが出来ました。コルトレーンやショーターなどのソプラノは心落ち着くという感じじゃないからね。といっても、このレコードではソプラノとテナーを使い分けしているので美味しさ2倍といったところだ。


 久詰さんから聴かせてもらったウィントン・マルサリスとエリック・クラプトンの『プレイ・ザ・ブルース』で最後の1曲とアンコール曲にゲストとしてタジ・マハールが出ていた。まだ元気そうで何よりだ。それで、このレコードを聞き流していたことを思い出し、じっくり聴いたところ、ブルースとしても、タジ特有のワールドミュージックとしても調和の取れたいい出来であることが再確認できたわけだ。タイトルは『ザ・ナッチェズ・ブルース』、タジにとっては第2作目のこの段階で既に後年花開いたタジの独特なワールドミュージックの世界がふんだんに観られることは、当時としては画期的であったんだとつくづく思ってしまう。ブルースにしても並みのオーソドックスなブルースでないことは言わずもがな・・・ 本当は、このレコードが2011年の一番のお気に入りかもしれない。
 それでは、2012年もよろしくお付き合いください。


ライトニン・ホプキンス ~アラジン・レコーディングス~

2012-01-04 11:18:36 | Blues

ライトニン・ホプキンス
~アラジン・レコーディングス~
 
                 By The Blueswalk
ライトニン・ホプキンスの初レコーディングは1946年のアラジン・レコードへの吹き込みであった。それを収録しているのがこの『ストラムズ・ザ・ブルース』

 

直訳すれば、《ブルースを掻き鳴らす》とでも云えるんでしょうか、そのままずばりライトニン・ホプキンスの奏法を言い表していると思われるのである。CDでは『ザ・コンプリート・アラジン・レコーディングス』として2枚セットで出ている。34歳でのレコード・デビューと遅咲きに思われるが、少年時代から盲目の偉大なるテキサス・カントリー・ブルース・マン ブラインド・レモン・ジェファーソンを追いかけながら活動を続けており、並みの新人ではないことは判る。

 


 ただ、34歳なだけあって、綺麗とはいえないが若々しい声が聴かれ、後年のドスの利いたボーカルはまだ聴かれない。ライトニンといえどもデビュー・レコーディングではギターもおとなしい。既にこのときからサンダー・スミスとのコンビでレコーディングしており、何曲かスミスのボーカルも聴かれる。5曲目では”Tight Like That”風のひょうきんなスミスのボーカルが聴かれる。
 ヒットした1曲目の”Katie May”と2曲目の”Feel So Bad”、7曲目の”Short Haired Woman”では既にライトニン・ホプキンスの音楽は確立していると見ることができるだろう。ライトニン節のすべてのパターンが本CDに披露されているといってもいいので、ファンでない人にとってはどこを切っても金太郎飴と同じで、このCDが一つあれば他はいらないとなりかねないのも事実だ。
 
ディスク: 1
              1.KATIE MAY ★
              2.FEEL SO BAD ★
              3.BLUES (THAT MEAN OLD TWISTER)
              4.I CAN'T STAY HERE IN YOUR TOWN ★
              5.CAN'T DO LIKE YOU USED TO
              6.WEST COAST BLUES
              7.SHORT HAIRED WOMAN ★
              8.L.A. BLUES
              9.BIG MAMA JUMP
              10.DOWN BABY
              11.LET ME PLAY WITH YOUR POODLE ★
              12.FAST MAIL RAMBLER ★
              13.THINKIN' AND WORRYIN'
              14.CAN'T GET THAT WOMAN OFF MY MIND
              15.WOMAN WOMAN
              16.PICTURE ON THE WALL
              17.YOU'RE NOT GOIN' TO WORRY MY LIFE ANYMORE
              18.YOU'RE GONNA MISS ME
              19.SUGAR ON MY MIND
              20.NIGHTMARE BLUES ★
              21.SOMEDAY BABY
              22.COME BACK BABY
ディスク: 2
              1.LIGHTNIN'S BOOGIE ★
              2.BABY YOU'RE NOT GOING TO MAKE A FOOL OUT OF ME
              3.DADDY WILL BE HOME ONE DAY
              4.MOON RISE BLUES
              5.HOWLING WOLF
              6.MORNING BLUES ★
              7.HAVE TO LET YOU GO
              8.MAMA'S BABY CHILD
              9.MISTREATED BLUES
              10.MY CALIFORNIA ★
              11.HONEY BABE ★
              12.SO LONG
              13.SEE SEE RIDER
              14.UNPREDICTABLE WOMAN ★
              15.I JUST DON'T CARE ★
              16.DRINKIN' WOMAN
              17.ABILENE
              18.SHOTGUN
              19.ROLLIN' AND ROLLIN' ★
              20.TELL IT LIKE IT IS
              21.MISS LORETTA
 
  (注)★印がアナログ・レコード収録曲


ABC of The Blues

2012-01-01 22:02:11 | Blues

ABC of The Blues 
                                By The Blueswalk

 昨年11月、The Ultimate Collection From DELTA To The Big Cities “ABC of The Blues”(デルタ・ブルースからアーバン・ブルースまでの究極のコレクション“ブルースのいろは”?)と銘打って、CD52枚セットが出ていたのでとりあえず買った。ホーナー社製のブルース・ハープのおまけ付きで\6395(今は\5244に値下げされているが・・・)は、1枚当たり\123と安い!!と飛びついた訳であった。延べ98名のプレイヤーの演奏をおおよそ2名/枚、一人10曲ずつ取り上げている、つまり52枚で1040曲、有名なブルースマンはほぼ網羅されている。大半は既に持っているはずであるが、その中にはレアーな掘り出し物があるとの期待での“買い”な訳である。問題は、どのCDに誰が収められているかが判らないから、一覧表を作ることにした。それが次ページにあるので参照されたい。

このようなイージーな企画ものにはきめ細かいサポートがないし、解説がすべて英語で人物紹介に終始しているため聴きたいときに聴きたいものが取り出せない、誰が入っていたか忘れてしまったなどでついぞ聴かなくなってしまうからである。このリストを持っていればすぐ取り出せるというわけだ。取り上げられた演奏曲を詳細に確認したところ、有名なブルースマンでもレアーな曲・演奏が多く収められているようだ。初ものは15名(一覧の緑色網掛)だけれど、誰かのバックで演ったレコードやCDを持っているかもしれないが、まずまずの収穫といえるだろう。


 パッキングだけれど、写真のように四方約25cmサイズの箱を4区画に仕切り、そのうちの3区画(1区画はホーナー製ハーモニカ)に約17枚ずつ収められているが、取り出しにくくてしょうがない。出来ることなら、52枚横に納め、蓋をパカッと開けたらすぐ取り出せるようにして欲しかったなぁ。ほんとはハーモニカも要らんのだけど・・・
 年明けたがまだ9枚しか聴けていない。まあ、今年中に全部聴ければ良し、とりあえず僕にとっては初ものから聞いていく事にしよう。出来れば、少しずつコメントを掲載して行こうかなと思う。