リマスターBeatles
By The Blueswalk
2009年9月9日、世界同時発売と銘打って、ビートルズの全CDのリマスター盤が発売された。しかも、オリジナルのモノラル盤とステレオ盤の両者を全CDセットで発売という快挙である。
僕も一応ビートルズ世代である。高校一年生のとき、ビートルズが日本にやってきた。それまでは、ポピュラーミュージックを聴いてはいたけれど、ロックの類はあまり興味がなかったのであるが、ひとつ年上の兄貴が”絶対見ろ”ということで、兄貴とテレビにかじりついて見たのを思い出す。ただし、そのときは全く音楽を聴いたという感覚は残らなかったのだが・・・
ところで、うちの奥さんは、じつはビートルズ・マニアなのだ。恥ずかしながら、うちの玄関の下駄箱の上には額に入ったビートルズのポスターが鎮座しているのだ。ちなみにその隣にはヒロミ・ゴー(郷)のぬいぐるみもいらっしゃる。
そう言う訳で、“買わないわけにはいかない”と思いつつも2つも買えるわけもないから、どちらか一方にしなきゃしょうがない。ステレオ盤35800、モノラル盤39800、まようなあ。多分、僕が若いころ買ったレコードはモノラルだったはずなので、とりあえずモノラル盤と決めて、さて、つぎはお金の算段だ。ここは、何とかして奥さんをなだめすかして、折半までには持って行きたい。しかし、何故かうちの奥さんは、このCD発売のニュースを知らなかった。それで、
(僕)『ビートルズのCDが出るんだってよ。音が格段によくなっているんだってよ。買おうと思っているんだけど、どぅ?欲しいやろ?半分ずつ出さへんか?どうせ俺はコピーしてそっちを聴くから、本体は全部あんたにやるし~』
(奥)「なんで音がよくなるん?演奏しなおしたん?」
(僕)『あほか、いまビートルズは半分しか生きとらへんわ。演奏しなおしできる訳ないやろう。それはやなぁ、・・・・・・・』
と、ジャズのブルーノートとルディ・ヴァン・ゲルダーのリマスター話に持ち込んで、煙に巻いて何とか交渉成立と相成った。
結局、タワーレコードに行ったが、モノラル盤は売り切れで、入荷のめどが立っていないということもあり、ステレオ盤を購入したのだった。
さて、問題はどれぐらい音がよくなったかを調べ、報告する必要がある。でないと、半額をもらえるいう確証が得られないからだ。ところが、僕はビートルズのCDを持っていないし、アナログ・レコードは押入れの奥のどこにあるか分からないので、さしあたり、奥さんのCDとリマスターを聴き比べることにした。
結果、細かくは色々あるが、総じて以下の二点が挙げられるだろう。
第一に音がクリアーになった。「ゲット・バック」などを聴いていると、従来のCDではこんな篭った音を聴かされていたのかと思うと、可哀相になってくる。ちなみに、アナログと較べても、クリアーさではリマスターの方がいいようである。
次に、音の押し出しがよくなった。とくにベースの音が前面に出てくる部分の迫力はこれまでになかったところだ。もともと、ポール・マッカートニーのベースはメロディアスでリード・ベースなどと揶揄されたこともあったが、改めて天才的であったことが認識されるであろう。
それに引きかえ、ジョージ・ハリソンのギターの下手さ加減には相変わらず笑ってしまう。エリック・クラプトンがメンバーに誘われたというまことしやかなエピソードが真実味を帯びてくるというものだ。
※この文章は2009年11月の関西ジャズ・ソサエティの会報に載せた記事のリニューアルです。