エマズ・ブログ

エマズ・マーケット(ウードやサズなどの販売・修理調整・レッスン)の店主による、音楽ネタのブログです。

正しい指関節の角度 

2008年06月30日 | Weblog
一つ前の記事で述べましたように、指を曲げる角度を蛇足ながら再確認しておきます。
ギターや多くの撥弦楽器と同じく、関節を「自然な方向に」まげて指頭を指板に押しつけます。フレットレスなので、しっかり押しつけないときっちりシャープな音が出ません。
とにかく、人体生理学的に無理がないような指関節の方向に運動するのであれば、まず指を傷めることはありません。

この指使いなら指を傷める心配はありません

これは左手の人差し指だけで1,2コースを押さえていて関節に無理をかけてしまうとわかったので、1コースは中指、2コースは人差し指に換えてみたものです。
これだと指の第1関節がまったく問題ない角度になりますので、お勧めします。
慣れるまではやや指がまごつきますが。
なお、今回はアラブ・ウードを使用しチューニングはD,G,A,d,g,cで、かなり遅めのテンポにして運指をわかりやすくしています。

ウードで「バディネリ」に挑戦 パート2

2008年06月27日 | Weblog
ウードでバディネリ(パート2)

なんとかパート2までやってみました。指板横からのアングルに撮ろうとしてやけに暗くなってしまいました。すみません。
いや~、普段弾くウード曲と違ってポジションがえらく異質なんで疲れますね~。
とりあえず音取りしただけで練習したわけではないので、ちょっとリズムが一定しないところもあり、走っているところもあり、お恥ずかしいのですが、とりあえず解析結果です。

ビレジクジャン氏の演奏ビデオでは、0:22から0:25あたりの部分(画像の譜面参照)はすべて1コースのみで弾いていますが、やってみるとちょっと超人技で出来ません…
ここではしかたなく2コース目も使ってやってみました。音的にやはり1コースのみの弦を使ったほうが音質のキレがいいのかな、という気がします。
また、3~6コースの弦を低音増強に使う時にはすべて開放弦で弾いています。E,A,B,e,a,dチューニングをうまく生かしています。低音弦を入れるタイミングがつかみにくく、やや難しいです。

実際に弾いてみて感じたことは、YouTubeなどで見ることができるこの曲のギターバージョンと比べると、こういう曲を演る場合、ウードはクラシックギターよりもエレキギターに近いということです。クラシックギターは伴奏も同時に弾き、エレキギターは単音奏法。ウードは両者の中間的(低音も時々入りますが、基本的には単音奏法)ですが指使いも考えるとエレキギター寄りですね。

結論: とにかく、この曲(をはじめ幅広いカテゴリーの曲)を易々と完璧に弾いてしまうジョン・ビレジクジャンの凄さを改めて感じました。

ウードで「バディネリ」に挑戦 パート1

2008年06月26日 | Weblog
<a href="http://cliplife.goo.ne.jp/play/clip/nzesu_hkzz_H"><img src="http://img.cliplife.goo.ne.jp/clip_image/17/23/0e/nzesu_hkzz_H/nzesu_hkzz_H_thumb0.jpg" alt="ウードでバディネリ(パート1)" /></a>

6月4日の記事で予告しました、ジョン・ビレジクジャンが演奏するバッハの「バディネリ」(管弦楽組曲第2番 ロ短調BWV.1067)をコピーして解析してみました。
ビデオが83年のもので、当時の流行なのか、演奏者の顔だけを大写しで延々そのショットが続く、または右手のみとか、なかなかストレートな演奏シーンが少なめ、というせっかくの動画での技法コピーにとっては不利なビデオで、この曲もかなりフラストレーションがたまります・・・。ですので音だけから判断するしかない部分も多かったのですが。

 まずパート1です。この曲はご存知のようにパート1とパート2のモチーフが各々ほぼ同じに2度ずつ繰り返されます。
やってみてわかったのは、やはりジョン・ビレジクジャンという人はアルメニアの伝統ウードが根底にありつつも独自に演奏技法を開拓しただけあり、もともとあまりウード向けでない曲もやすやすと弾いてしまうということです。 彼は手も大きく指も太いので有利な側面も強いのですが、自分でやってみるととにかく弾きにくい! ということです。
 出だしをご覧ください。1コースと2コースをネックとボディジョイント部上のポジションで(ギターと違い何フレットとは形容できませんね)人差し指で押さえる必要があります。そしてその指を固定したまま薬指も同時に次のノートを押さえます(そうしないと4番目のノート(2コース弦)に戻るのが間に合わないのです)。 これがきつい。2本の指の間隔が厳しいのとウードのハイポジションの弾きにくさから、かなり難儀します。おまけにギターのようにフレットに助けられるということがないので、この人差し指をネックに対して垂直に保つためにそうとう第1関節から上を目いっぱい指板に押し付けなければなりません(画像参照)。力も相当入れないと音がなまってしまいます。ビレジクジャン氏のビデオを見ても指板真横からのショットがあり、このフォームになっているのがわかります。彼の場合は長年の演奏で鍛えられた指なので、このくらいのフォームはものともしないのでしょうが。しばらくやっていたら人差し指の第1・2関節が痛くなってしまいました。気をつけないと、関節や腱を傷めてしまうかもしれません。ウードの普通の曲では、かならず指は可動方向に曲がるので、こんな無理はありえないのですが…
×のついているほうの画像が、指の関節には無理な力のかかり方です。どうしても薬指で次のノートを弾くためにこのような角度になってしまいがちです。私は関節を痛くしてから気がつきました・・・;
セーハならば指はあくまでまっすぐなので問題ないですが、このように弓なりに関節とは逆方向にしならせては人体に無理が生じます。
○印の画像のように関節に無理の無い角度ならばいくら力を入れても傷めることはありません。ただし、スムーズに音をつなげにくくなりますが。
もともとウード向きの曲ではないだけあります。みなさん、くれぐれも指の関節に無理をかけないように注意しましょう。

なお、チューニングは低いほうからE,A,B,e,a,d です。トルコウードを使用していますが、アラブウードならば一音低いD,G,A,d,g,c で演奏できます。

珍しい、ウードのトリオ

2008年06月22日 | Weblog

ル・トリオ・ジュブランという、パレスチナ出身の3人兄弟で構成されるグループです。最近注目されており、YouTubeでも多く彼らの動画を見ることができます。

ウード・トリオという、ありそうであまりなかった新たな可能性を提示しているような音楽です。伝統に新たな感性を付け加えた感触であり、また、イランのウード(バルバット)音楽の要素さえも感じさせる、幅広い音楽性が魅力です。


こちらは、パーカッション群が加わった演奏です。

バセム・ダルウィッシュのとても魅惑的な音楽

2008年06月06日 | Weblog


エジプトのウード奏者ですが、ドイツも拠点に大変国際色豊かな経歴・活動を誇る人です。伝統音楽だけでなくさまざまな分野の音楽家と競演したり、垣根を越えた活動をしています。
この動画での演奏も、ウードにピアノ、シンセサイザー、ダフ、カホン、管楽器といった構成でとても魅惑的な音楽を聞かせてくれます。




こちらはウードのソロ演奏。これまた独特な世界を感じさせ、秀逸です。

超絶技巧ウードによる「アズィーザ」と「バディネリ」

2008年06月04日 | Weblog
以前ご紹介したジョン・ビレジクジャン(現在重病とニュースで聞いたので電話で本日話したところ、受話器からの声には力があり、とりあえず安心しました)のDVDですが、YouTubeにトレイラーが登場したのでご紹介します。


20年以上前の、まだ若い頃の彼です。短めですが、彼の超絶技巧がよくわかります。
前半はモハメッド・アブデル・ワッハーブの名曲「ラクサ・アズィーザ」、後半はなんとヨハン・セバスチャン・バッハの「バディネリ」。
バディネリはハイポジションが大変弾きにくいウードなのによく弾けるものです…
現在私はコピーしてますので、演奏技法が解析でき次第、またご紹介します。