エマズ・ブログ

エマズ・マーケット(ウードやサズなどの販売・修理調整・レッスン)の店主による、音楽ネタのブログです。

まるで中世ヨーロッパ音楽のようなトルコ・アンサンブル

2008年03月31日 | Weblog

サズの名手/歌手のオカン・ムラト・ウツチュルクが率いるグループですが、このオスマン帝国末期の大作曲家タンブール・ジャミル・ベイの曲ではラウタを弾いています。まるでまるでデヴィッド・マンロウやジュリアン・ブリーム・コンソートあたりの中世ヨーロッパ音楽~ルネッサンス音楽を聞いているかのような感触があります。やはり中世ヨーロッパ音楽は中東音楽の多大な影響を受けたのだろうな、当時はその2つの音楽の境目ははっきりしていなかったのだろうな、と思いをはせることができました。


この曲ではサズを弾いています。


ここでは歌も。


この曲、歌は非常に東アジアに近い印象があります。

チュニジアからのお客様

2008年03月30日 | Weblog
今日はチュニジアからお客様がおいでになりました。
といってももちろんはるばる…ではなく、日本在住のチュニジア人の方で、日本人の奥様と一緒に「国内から」来られました。

もともとギターを弾いたり製作したり(!)されているそうですが、最近YouTubeでウードの動画をご覧になって興味を持たれたとのことです。
「父親に向こうで手に入れてもらって送ってもらおうかと思ったけど、運賃モロモロを考えたら日本で買ってもそれほど変わらないかな、と考えた」とのことでした。
確かに輸送の壊れも多いですし、賢明なご判断だったかと^^)

ウードは弾けない、とおっしゃいながらも、さすがに「自文化」の音、すぐに勘の良い音を出されていました。「ヒジャーズもいいし、クルドがぐっとくるんだよねー」とマカームも良くご存知でした。
いろいろと試奏され、迷いながらも最後はスカール・ウードに決められました。
まことにありがとうございました。「チュニジアを出て成田空港からずっとここまでやっと来たんだから、買わずには帰れないよ~」と、なかなかユーモアのある方でした。
ゆくゆくはウードも作りたい、そうしたら見せるね、とのことでしたので、楽しみにしております。

トルコのウード奏者ギュルチン・ヤフヤ

2008年03月29日 | Weblog
イスタンブールのガズィ大学で教鞭をとる、ウードに関する博士号を持つ学者であり演奏家です。繊細な音使いで知られます。(もともと西欧音楽を学んだ人ですが、トルコ伝統音楽に関心を持って以降、伝説的ウード・マスターのジヌチェン・タンルコルルの弟子に師事しました)。ここではシェリフ・ムヒエッディン・タルガンの難曲を楽々と演奏しています。


タクシームも繊細で良いですね。


ウードに関する本も執筆しています。以下は彼女のウェブサイトです。
http://w3.gazi.edu.tr/web/gulcin/

レバノンのウード奏者ニコラス・ナクレ

2008年03月26日 | Weblog

ベリーダンスの世界でもウード奏者として活躍している人ですが、このスタジオでの演奏ではとてもリズム感がよくスムーズな軽やかさと、レンジの広い音色が最高です。

しかし、レバノンは2006年のイスラエルによるレバノン侵攻~空爆で多くの犠牲が出て大変心を痛めました。知り合いの安否も心配でしたが、とりあえず無事でほっとしました。その後停戦~イスラエル軍撤収となりましたが、今後も不安要因があり心配です。
安心して音楽を楽しめるのはいかに平和で素晴らしいことなのか、改めて思います。

ン百万円のウードの音

2008年03月23日 | Weblog
ストラディバリウスなどのバイオリンの銘器と同じように、ウードにも銘器が多く存在します。トルコにもアラブにもイランにもあります。多くは博物館級の陳列物ですが、コレクターが所有する物、プロ奏者が使用する物ももちろんあります。

なかでも有名なシリアのナハト。親子兄弟も含め、たくさんの製作家をかかえる大ウード家系です。以下にDr.Oudさんの解説ページがあります。
http://www.droud.com/nahats.htm

シリアに行くとウードを探して歩くとどこからともなく「いいナハト・ウードあるよ」と声をかけられることがあります。残念ながらそこで見せられる楽器はほとんどが贋物です。贋物市場さえあるくらいなのは、バイオリンの銘器と似ていますね。
19世紀の銘器のため、当然本物の価格は大変高く、ボロボロ状態でも100万円でも不思議ではなく、状態の良い物はン百万円でも珍しくありません。
下の動画は、かなり状態の良い本物のナハト・ウードをシリアのウード奏者イヤド・ハイムールが演奏しているものです。
演奏ももちろん素晴らしいですが、このとても「音の立った」粒ぞろいで芯のあるサウンドはやはりナハト独特です。
年月によるエージングが音色に及ぼす影響もあるでしょうが(いい具合に枯れたニュアンスがあります)、もともとのキャラクターが優れているからこその音だと思います。


このイヤドさんはナハト・ウードのコレクターのようで、以下のサイトに展示してあります。まさしく垂涎ものです。
http://www.iyadhaimour.com/vente-instruments.html

ナハト以外のシリア・ウードを弾いている演奏。素晴らしいタクシームと変拍子リズムの曲です。これまた良い音のシリア・ウードですね。



+レク+ウッドベースのトリオによる演奏。


イランのウード奏者、ホセイン・ベルーズィニア

2008年03月22日 | Weblog
かの国では誇りを持って「バルバット」と呼ばれているウードですが、
その代表的演奏家です。


音色、奏法ともに、トルコ/アラブのウードとはかなり異なった印象です。
基本はやはりマカームとは似て異なるペルシャ音楽のダストガー(グーシェというより小さな音階と旋律単位の組み合わせがあります)が根底にあるためでしょう。
ペルシャ音楽独特の雰囲気を感じさせます。


素晴らしい『マカームDVD』

2008年03月20日 | Weblog
 ヨルダンのウード・マスター、OudProff(フッサム氏)の労作が登場です。サンプルを視聴したところ、これが素晴らしい出来。扱うマカームは50以上に及び、各微分音のわずかな差、ジンスの説明、トランスポーズの解説、各マカームがどのような「気分」を表すのか、などなど、本当に盛りだくさんの内容です。
 教則方法としても、動画はもちろん、動画と同時に上部に表示される指板上の音位置の画像、PDFファイルに収められたいわば「電子ブックレット」の懇切丁寧な解説など、一味も二味も違う工夫が素晴らしい。
 ぜひお試しください。ただし、DVD-ROMのようなもので、DVDプレイヤーでは動画は見れるものの、メニューは文字列が並ぶだけで、マカーム名で選べません。ウィンドウズ・パソコンでの視聴が基本ですのでご注意ください。Macは不可です。

エジプト・ウード修理完了

2008年03月19日 | Weblog
 エジプトに滞在し、ウードを習い、買ってこられたウードが帰国の際に破損してしまったお客様によるウード修理の依頼でしたが、無事に完了しました。
 最初送られた写真で拝見したときには、ペグボックスとネックの外れだけで簡単だと思ったのですが、実物を確認するとネックの寄木も折れや剥がれがあり、ペグボックス取れも木材の欠損片がかなりあり、大掛かりな修理となりました。
 幸い保険から費用はまかなえるとのことで、また悪いところはすべて直してほしいとの確認をいただいたので、今後日本の厳しい高温多湿/低温乾燥気候にも耐えられるように補強もしました。
 高級器ではないですが、よく鳴っています。
 

ウードのネック側面にポジションマーク

2008年03月14日 | Weblog
「初心者のための、耳から覚えるウード」というアメリカ製のDVDが出たので、サンプルとして注文してみました。結論としては、販売を見送ったのですが、なかで「フレットレスなので、覚えるためにネック側面に半音づつポジションマークを付けること」を推奨しているのが印象に残りました。もちろんギターにも付いていることが多いのですが、とくにウードの場合は有効です。最近では最初からこのポジションマークを付けているエジプト製ウードもあり、どうやら一般的になってきたようです。