
軍司貞則 「マグロ戦争」 アスコム 2007.03.20.
戦争中に船は徴用されたため、戦後は肝心の船がなく、船を造る金もなかった。そこで、サカナを生業にしている人たちがお金を出し合い、船を造った。担保は“太平洋のサカナ”だった。漁に出ればサカナはいくらでも獲れ、お金を返すことができる。この感覚のまま、船主はよりマグロが獲れるようにと新船建造を競い合い、多数の中古船が出た。 この中古船を商社が韓国に売った。技術者も送り込み、お金の融資もした結果、韓国にマグロ漁が生まれた。日本で不用になった中古船を“黄金の船”に替える仕組みを日本の商社が作りあげたのだ。 利益の最終到達点は日本の商社という構造だ。富を運んでくるのは「超低温」によりカチカチに霜を体全体にまぶしたマグロたちだ。 ソウル五輪後、韓国の高度成長が足踏みし、コストアップで商社の儲けが薄くなると、今度は韓国でやったことを台湾で行ったのだ。 台湾船の隻数オーバー、違法操業、そして便宜置籍船の日本船への妨害行為、海賊行為で日本のマグロ船は厳しい状況にある。ところが、その台湾企業は日本の商社のオーダーにより、獲ったすべてのマグロを日本の商社に売っているのだ。冷凍マグロの占有率は日本と合わせると世界の8割に達している。 1999年9月には、全国鰹鮪近代化促進協議会というマグロ漁業関係者が、三菱商事に「ドロボーまぐろ」の買付自粛を要望している。 マグロをサシミにするには、一本釣りと延縄のふたつの漁法しかない。網で獲ったものはサカナの表面に傷をつけ、捕獲されたときのストレスで身割れが起こり、サシミにならないからだ。 ところが、「巻き網」というサカナをいっぺんに大量に獲る、最も効率的な世界がある。アメリカの巻き網船は80年代から90年代にかけて、イルカを綱に巻いたため、環境団体から追及された。そこで“ドルフィン・セーフ”のためにFADSが導入され、今度はメバチの幼魚まで大量に巻かれ、西経での漁場が食い潰された。 巻き網で一網打尽にされたマグロは缶詰にされる。ツナ缶だ。しかも、人間向けの食品というより、ペットフードとして。 西太平洋でサシミとカンズメの戦いが繰り広げられている。
戦争中に船は徴用されたため、戦後は肝心の船がなく、船を造る金もなかった。そこで、サカナを生業にしている人たちがお金を出し合い、船を造った。担保は“太平洋のサカナ”だった。漁に出ればサカナはいくらでも獲れ、お金を返すことができる。この感覚のまま、船主はよりマグロが獲れるようにと新船建造を競い合い、多数の中古船が出た。 この中古船を商社が韓国に売った。技術者も送り込み、お金の融資もした結果、韓国にマグロ漁が生まれた。日本で不用になった中古船を“黄金の船”に替える仕組みを日本の商社が作りあげたのだ。 利益の最終到達点は日本の商社という構造だ。富を運んでくるのは「超低温」によりカチカチに霜を体全体にまぶしたマグロたちだ。 ソウル五輪後、韓国の高度成長が足踏みし、コストアップで商社の儲けが薄くなると、今度は韓国でやったことを台湾で行ったのだ。 台湾船の隻数オーバー、違法操業、そして便宜置籍船の日本船への妨害行為、海賊行為で日本のマグロ船は厳しい状況にある。ところが、その台湾企業は日本の商社のオーダーにより、獲ったすべてのマグロを日本の商社に売っているのだ。冷凍マグロの占有率は日本と合わせると世界の8割に達している。 1999年9月には、全国鰹鮪近代化促進協議会というマグロ漁業関係者が、三菱商事に「ドロボーまぐろ」の買付自粛を要望している。 マグロをサシミにするには、一本釣りと延縄のふたつの漁法しかない。網で獲ったものはサカナの表面に傷をつけ、捕獲されたときのストレスで身割れが起こり、サシミにならないからだ。 ところが、「巻き網」というサカナをいっぺんに大量に獲る、最も効率的な世界がある。アメリカの巻き網船は80年代から90年代にかけて、イルカを綱に巻いたため、環境団体から追及された。そこで“ドルフィン・セーフ”のためにFADSが導入され、今度はメバチの幼魚まで大量に巻かれ、西経での漁場が食い潰された。 巻き網で一網打尽にされたマグロは缶詰にされる。ツナ缶だ。しかも、人間向けの食品というより、ペットフードとして。 西太平洋でサシミとカンズメの戦いが繰り広げられている。