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現場で学ぶ 住まいの雨仕舞い

2006-07-22 21:39:51 | BOOKS
玉水新吾 「現場で学ぶ 住まいの雨仕舞い」 学芸出版社 2006.06.30. 

住宅といっても呼び方はさまざまです。設計事務所・建築家は「作品」と呼びます。「作品」は設計を担当する建築家の主張が前面に出過ぎ、主役であるはずの建築主がかすんでしまいます。住宅会社は「商品」と呼びます。不動産屋は「物件」と呼びます。「商品」「物件」も品物であって、温かみを感じない言葉です。一般の方は「家」と呼びます。通常使う言葉ですが平凡です。 
家に特別に愛着のある方は「住まい」と呼びます。どのような呼び方であろうと、住宅の雨漏りを少なくしましょう。職人の過去の経験からくるノウハウは、大切にすべきものです。工事責任者や現場監督者などのように、現実には作業をしない人の経験に、現実に作業をする職人の経験をプラスして判断すべきものです。すべてのことがわかる優秀な技術屋は、現実には少ないものです。そして気がつく、つかないという人の問題も生じます。 
人の問題として、体調、そのときの気分、忙しさ、他の仕事との兼ね合いなどにより、すべてが確認できるわけではありません。現場では、人の問題による部分が必ず残ります。このような部位を、最初から設計しないことが一番です。そして設計責任者といえども、納まりをすべて考え抜いて、プランを総合的に設計できる優秀な技術者もまた少ないものです。いくらかは現場合わせという部位も残ります。軒天は大工、外壁工事はサイディング施工業者や左官です。職人が異なります。現場では雨仕舞いの点から、できるだけ早く、雨が降っても影響しないように、屋根・外部取合いのサッシ・シャッター・庇の取り付けなどを急ぎます。外部仕舞い・雨仕舞いなどと呼びます。大工としては、外部仕舞いの重要な要素である軒天作業を、内部作業を放っておいても急ぎます。当然、自分のペースで先に仕事する方が楽です。後から仕舞いをする方が、手間がかかることになります。 外壁の下葺き材の捨て張り。この「捨て」という言葉は、建築ではよく出てくる言葉ですが、雨漏りにおいては特に重要な概念になります。大工が軒先まわりを施工する際に、途中であらかじめ「捨てフェルト」をいれておき、その上から破風板などの施工をします。サッシまわり、シャッターまわり、庇まわり、換気フードまわり、バルコニーまわりなど、実に多くの部位で応用可能です。そして、雨漏りに対しては、効果的な手法となります。かかるコストとしては、材料面でアスファルトフェルトがほんの少し、施工手間がほんの少しで、経済的です。費用に比べて、大変効果の大きいものですから推奨します。 
耐久性を上げて、建物を少しでも永く使うべきです。これが環境面で優しいということとイコールになります。日本では過去において、建物を建てて30年くらい生活した後、解体撤去し、また新築をしてきました。できるだけ耐久性をあげて、建物を永く使用することが、これからの環境面を配慮した住まい方です。したがって、それを拒む雨漏り・結露による被害は、管理をきちっと行って対策をしなければなりません。具合の悪い個所は、そこを直せばよいのです。リフォームして部分的に更新すればよいのです。 
日本人は世界一の健康長寿国になりました。しかし、日本の住宅は、世界でも類を見ない短期間しか耐久性がないというデータになっています。家を消耗品ではなく、耐久性のあるものとして大切にする文化が必要です。

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