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外来生物が日本を襲う

2007-05-23 00:16:27 | BOOKS
池川 透 「外来生物が日本を襲う!」 青春新書 2007.02.15. 

1977年に放映された人気アニメ『あらいぐまラスカル』。11歳の少年スターリングと幼いアライグマの交流は観る人の心を温かくし、時に感動的なシーンで涙を誘った。このアニメがきっかけでアライグマの飼育がブームとなった。幼獣は人なつっこくて飼いやすいものの、いつまでも可愛いペットのままではいてくれない。成獣になると「ラスカル」(腕白小僧・悪党)は本領を発揮し、気性が荒く、一緒に遊ぶと引っかき傷、噛み傷だらけになる。やがて持て余してしまう。 アニメの最終回で、ラスカルは「自然の中で自由に暮らすのが一番」と森の中に帰される。この名シーンを免罪符にして野外に放逐したり、自力で逃げ出したことも多いだろう。 気候が北アメリカとよく似て、大好きな水辺のある森が多い日本は、アライグマのお気に入りとなった。雑食性で動物全般から、果実や野菜・穀類などの農作物、果ては人間の捨てる生ゴミまで何でも口にする。一度に3~6頭を出産する強い繁殖力で、現在まで46都道府県に侵入し、岐阜県や北海道をはじめ、神奈川県、和歌山県、長野県、東京都、京都府、大阪府などでは確実に繁殖して増えている。北アメリカで2002年までに3人が死亡しているアライグマ回虫症という感染症が、日本でも飼育個体から見つかっている。さらに、アメリカ東部では恐ろしい狂犬病の主要媒介動物として要注意動物になっている。 外来生物が引き起こす問題は、地域に元々いる生物を絶滅に導くことだ。まずエサとして食べる。直接的な食害はなくても、エサや生活の場などを在来種と奪い合い、駆逐する。絶滅させるのと同じほど重大なのが、在来種と交雑することだ。遺伝的撹乱が進行して、数万年かけて形成してきた種の特性が崩れ去ってしまう。 人間の病気の原因となる危険性も少なくない。どのようなウイルスや寄生虫を持っているか解明されておらず、人への感染は無論、野生化した場合の動物たちへの影響も危慎されている。 日本は外来生物王国と化し、独自の生態系は完膚なきまでに破壊されてしまうのか。外来生物の被害を予防するために、外来生物法で3原則を掲げている。1.悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に「入れない」。2.飼っている外来生物を野外に「捨てない」。3.野外にすでにいる外来生物は他地域に「拡げない」。 アライグマに罪はない。根本的な原因は、彼らを日本に連れてきて、安易に野外に放した人間にある。目標とするのは、外来生物を日本から取り除くことにより、固有の生態系を回復させることだ。童謡『故郷』のうさぎも小鮒も、このままではいつしか「アライグマ追いしかの山、オオクチバス釣りしかの川」となってしまう。在来の生物たちの未来は、我々の手に委ねられている。

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