竹林の愚人  WAREHOUSE

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日本の国境

2005-06-14 21:48:14 | BOOKS
山田吉彦 「日本の国境」 新潮新書 2005.03.20. 

我国の大陸棚の海底には、時価10兆円を超える海底資源が埋蔵されていると言われ、レアメタルが含まれているマンガン団塊、天然ガス消費量の100年分のメタンがあるメタンハイドレート、コバルト・リッチ・クラストなどの資源だけでなく、深海底に生息するバクテリアもバイオテクノロジーの世界で注目されていている。この大陸棚を200海里を超えて確保するためには、2009年までに地形連続している証となるデータを収集し、国連大陸棚限界委員会に申請しなければならない。その調査費用は1000億円。2004年度の各省庁の合計でも約150億円と、間に合うか危惧される。 もっとも、ある地質学者は「大陸棚には10兆円相当の資源があるだろう。しかし、今の技術でそれを掘るには10兆円以上かかる」と話していた。 

沖ノ鳥島は小さな島であるが、貴重な海洋権益をもたらす大きな海を持つ島だ。サンゴ礁でできている島はとてもデリケートで、1930年にあった6つの露岩が、1952年には5つ。1987年には2つだけとなり、建設省(現・国土交通省)は貴重な島を守るために鉄製の消波ブロックとコンクリートなど総工費約285億円の保全工事を行なった。 このコンクリート護岸も劣化が激しく、1999年大規模な改修工事が行なわれ、東小島には8億円もする高価なチタン製のネットが被せられた。年間の維持費は2億円。2004年中国外務省から「沖ノ鳥島は、国連海洋法条約でいう『岩』であり、排他的経済水域を有しない」との指摘があった。「岩」では、排他的経済水域が認められない。国連海洋法条約によると島として認められるためには、人が住んでいるか、経済生活が必要。東小島は、地質学的に言えば「岩」である。しかし、この地質学上の岩が、国際法上の「島」であることを確かにしなければならない。  

沖縄の東392kmにある南大東島の主要産業は公共事業。他国の侵入や実行支配を許さないためには、人が住み経済活動を続けなければならない。年間およそ30億円は国境の島を守る国益への投資と考えなければいけない。 最果ての地で、自衛隊の駐屯がなくても、経済活動・文化活動を維持することで、領土の保全をしている。   

日本の沿岸警備の盲点は、海上保安庁と海上自衛隊の両者の連携が密接ではなく、指揮命令系統の統一がとれていないところにある。海上保安庁の人員を増加し、対潜哨戒機や大型高速巡視船などの装備を充実させる施策を取る必要がある。 
フィリピンとインドは、海軍から分離独立したコーストガードを設立している。 
インドネシアにおいては海洋漁業省が設立され、マレーシアでは首相府の国家安全保障局海洋部。隣国の中国では国家海洋局、韓国では海洋水産省が設立されている。しかし、日本には統一した海洋政策といえるものがまだ無い。 
アジアの国々は、隣国との紛争・対立で多くの血を流してきた。そのため軍部が前面にでることの恐ろしさを充分に認識している。だから海の治安維持を行うのは、軍事力ではなく、国際法に基づいた海上警察力であるとするのがアジアの潮流である。