いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

【無韓系】小野寺の弟 小野寺の姉

2015年07月05日 | 無韓系日記
片桐はいりさんが大好きなので、一度観たいと思っていました。

いや-、いい映画だった!

《あらすじ》

両親ははやくに他界し、姉ひとり弟ひとりの小野寺家。
弟 進は30を超え、7つ離れた姉 より子も独身である。
住宅地に立つフツーの一軒家に小綺麗に住まうふたりは、
仲の良い姉弟だ。

調香師の進は失恋の痛手を引きずり、
商店街の眼鏡屋勤務のより子は、
営業マンの浅野にほのかな恋心を抱いている。

ある日、誤配された郵便物をわざわざ届けにいったことで、
進に新たな出会いが……。


みたいな映画です。

派手な事件が起こるわけではないのですが、
計算され尽くした脚本と絶妙な会話で展開していく物語。
観た人はみんなほっこり、しあわせな気分になると思います。

「小津作品の現代版」って言ったら過言ですか?

「ほっこりしあわせ」って実は地雷用語な気もするけど、
この作品に関してはこれしかないでしょう。

心がすさんだ時に観てください。

では、以下でネタバレしつつ感想を……。

※絵本作家役の山本美月さんがお好きな方はこれ以降ご遠慮ください




まず小野寺家が不思議な空間なんですよねー。
古い一軒家で、調度もすごく昭和っぽい。
昭和レトロっていうほどオシャレじゃ無くて、生活感もちゃんとあって、
でもセンスがいい。

鰹節をちゃんと削ったり、キュウリのヘタをくるくるしたり、
きちんと生活しているんだな、という上品さがある。

じゃあ昔なのか、っていうとそうではなくて、
時代はやっぱり今なんだろうな~ってのが、
ハロウィンセールなんかの雰囲気でわかる。

映画全体の空気感が好きだ。

スタートレックの映画であるんだけど、
めちゃくちゃ文明の進んだ星があって、
やろうと思えば未来都市でエアカーびゅんびゅん飛びまくって、みたいな
生活はできるんだけど、
選択的に中世的田園都市風の生活をしている人たち。

なんだかそういう世界みたいな感じがして、
日本人もそろそろそういう選択をしてもいいんじゃないかと思わせる心地よさがあります。
(わたしが昭和の人だからかもしれないけど)

そんな世界で交わされる小野寺姉弟の会話は、
丁寧な言葉でありながらもどこかコミカル。
舞台の脚本みたいだという感想を読みましたが、わかる、わかる、です。

そもそも片桐はいりさんが大好きなので、
そのお芝居を観られるのが至福というか……。

弟役の向井さんも、ゲゲゲの時もそうでしたが、こういう役いいですよね。
ムサイ役の方が真価を発揮すると思うんですよ、この人。
イケメンイケメン言われてハデハデのカッコイイ人を演じてもあんまり良くない。

向井さんの背が高いのですが、
はいりさんも負けじと高身長なので画面のバランスもよくて。
おふたりとも妙にスタイルがいいですから。

また子役もいいんだ、これが!

美形の及川さんにも、
イケメンなんだろうけど性格的に地味で別にパッとしない営業マンという役を
ふっていて、キャスティング絶妙だな~と思いました。

で、さっき赤字で注意を促しといた絵本作家役の山本美月さんなんですが……。
綺麗と可愛いを併せ持ったキレ可愛い人で、
元カノに似た薄幸そうな雰囲気も持ちつつ、いい感じです。

けど、いかんせん演技力が~。

最初から、ヘタ!と思って観てたわけじゃないですけど、
彼女が登場すると急に力が抜けちゃうんだよな~。
初登場シーンが終わると、
「ハァ?」っていう違和感が。

う~んと思いながら観ていたんですけど、
たぶんこれってわざとなんでしょうね。

だっておかしいじゃないですか。
彼女以外はみんな力のある役者さんで、同じ空気感を保った演技をしているわけで、
じゃあ山本さんだけキャスティングミスなのかといったら、まさかと思うわけですよ。

この世界にわざわざ違和感を持ち込んだってことは、
やっぱりなんらかの意図があるとしか思えない。
進の状況を変えることになる要素としての違和感なのでしょう。
絶対わざとだと思うわ。

物語の鍵になる、より子の歯は、一瞬だけ見ることができます。
あっ、黒い歯があるな、って最初の方で一回だけ。
その後は観客には見えないままで、エピソードが進むのですが、
その話になる度に、あの画面が思い浮かぶ。

これ、DVDになってから観ればいいかと思っていたのですが、
映画館の大スクリーンで観たら、もっと強烈な印象だったかもしれないです。

私語厳禁のラーメン屋のエピソード時点では、
より子さんの恋についてあまり心配はしていませんでした。
なんだかんだ浅野さんがより子さんに親切だったので。
だからわりと最後まで、彼女はしあわせになるのかな?と思って観てた。

不安な感じがしたのは、雨の日にむかいのブティックが休みだった時がはじめて。
そこからたたみかけるように、ちょっとよそよそしい浅野さんだったり、
待ってるより子さんだったり、(早めの到着が原因ではありますが)
ぐんぐん不安が増してきて……。
そんな緩急も良かったなぁ、と。

圧巻はより子がひとり部屋で泣くシーンで、
スポットライトが当たったような照明のベッド。
もちろん泣き顔のアップなんかなくて、
本当にここが舞台のような演出で、すごく好きでした。



わたし個人的に、ドラマの中に出てくる絵本の扱いに非常に不満がありまして。
だいたい何かの代弁みたいなことをさせられてるじゃないですか。
今回も同様で、人に優しくしようとしたけどそれって本当の優しさなのかな、とか、
優しくするってどういうことかわかった犬が家に帰る、とか、
なんでそんなメッセージを直接言っちゃうんだ?と、倒れそうでした。

そもそも言いたいことをそのまんま文章にしてる絵本って、なんなの?
作者がアホなの?子どもを馬鹿にしてるの?
とか、思いますが、まぁ今回は作者がまだまだ未熟なので、
こんな感じで描いちゃうのもうなずけるし、
そういう絵本も実際たくさんありますからね。

それはいいんですけど、
重ねていいますが、
映画の主題っぽいことをなんで絵本にして説明しちゃうのか、と。

ここまでやったとすると、
実は映画の主題はそんな浅いものじゃないってことを暗に言いたいんですね?
とつらつら考えていまして、
結論としては、

人に優しくする前に、まず自分に優しく。

そんな風に感じましたです。

絵本のタイトルが「嗅ぐんだ!ペロ」の時点で、
ああ、ネタなんだな……という気もしましてね。

進が元カノと別れた原因がお姉さんとの同居にあったりとか、
元カノのシビアな女の視点が、弟進のものとは質が違ったりとか、
ぴりっとする要素が入っている物語でしたので、
絵本うんぬんも額面通り受け取るのは早計な気がいたします。

そのくせ、30過ぎても一人芝居を続ける友人は
すぱっとストレートな発言をしてくれたりですね、
ひねくれすぎず、素直すぎない脚本だな、と思いました。
最後の唐辛子はいい暗喩ですね。

今回、家の大きいテレビで観たのですが、
外は大雨ってせいもあり、
テレビのボリュームが100を突破しました。

だって聞こえないんだもん~。

ほんとに静かな映画で、音楽も最小限。
一人で観るならヘッドホン使うことをおすすめしますので~。

あの1000円札の束、いくらあるのかなぁと感慨にふけりつつ、
この先少しだけ変わって行く小野寺姉弟をまたみてみたいと思いました。

伏線っぽい場面や、登場人物の心情については
その他のブログでみなさんお書きになっている通りですので、
当ブログではこのへんで締めさせていただきたいと存じます。

恩師の言い間違いに吹き出しつつ、
姉と弟の互いを思う愛情にほろっとしつつ、
自分でもいい笑い方をしながら観られた映画で、心が穏やかになりました。
これ、映画館で観た人同士が温かい一体感に包まれる映画だと思います。

そういえば、小野寺の姉、小野寺の弟って言い方、
学校の先生によくされましたよねぇ。
兄弟がいて、同じ学校に通ってた人には馴染みのある呼称でしょう。
恩師の存在が映画の柱のひとつって感じさせるタイトルでもあるのかなぁ。


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