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「黄金~」観てきたよ その2

2012年12月03日 | 韓ドラ雑記
番外編のはずの日本映画、感想が長くなってしまってすみません。
その2で終わりますよ。

映画を観た後に、舞台挨拶の様子とか、
井筒監督のオールナイトニッポンとか聞いたりして、
妻夫木くんがとてもこの作品を気に入っている様子がうかがえました。

「ジャパン・ノワール」って言ってましたね。
井筒監督の言葉だそうですが、なんか響きがかっこいいですよ。
1940年から50年代に作られたアメリカの犯罪映画を
「フィルム ノワール」と称するわけですが、
日本でも、その空気感をまとった映画ができた、ということなんでしょうね。
こういう出口のない閉塞感漂う犯罪映画というのは、
観ていて苦しいというか、ひりひりしますね。

では引き続き、ネタバレしながらまいりますので、
未見の方はお気をつけください。

どうしても小説と比べながらの感想になりがちなのですが、
ご容赦ください。

登場人物たちは、それぞれに鬱屈したものを抱えて生きているのね。
北川は一見、幸福そうで何もないように見えるけど、
犯罪に向かわずにはいられない何かがある。
これは性癖としか言いようがない気がしますけれども。

そんな彼が、
「この件は楽しくやりたいんだ。楽しくなきゃ意味がねえ」
というのですが、もう最後はどんどん楽しくない方に進んじゃうんですね……。

原作では、北川と幸田が殺人を犯して、
それにうすうす感づいた野田がびびり、
「あんたは別世界の人間だよ」と幸田に言う展開になるのですが、
映画の中では殺人まではしてないです。

話がややこしくなるのではぶいたとは思うのですが、
北川や幸田の躊躇なき暴力を描くために入れてもよかったのにな、と
ちょっと残念でした。
ハルキにしても、北川にしても、幸田にしても、
暴力をなんとも思ってない。
ほんとに野田だけがふつーの感性の人だと思うわ。

北川は、妻子を轢き殺された現場に居合わせて、
必死で助けを呼ぼうとするのですが、
葬式後もそんなにとりみだしたり、ぎらぎらしたりしません。
それより弟ハルキの思いつめようが心配。
そして「独りになってみると案外気楽だな」みたいにさらっと言います。
これは喪失後の虚脱感、といいうよりは、彼の本音だと思うのね。
もともと回線がどっかおかしい。

どこかおかしい人たちが集まって、
ぶっとんだ犯罪計画を実行するのをみていると、
自分の頭もだんだんしびれてきて、気持ちよくなりました。
自分をとりまく現実が、ゼリー状になってくみたい。
確実に麻痺してる感じ。
映画館で映画を観る醍醐味でもありますね。

強奪計画を実行している場面は、原作通り忠実に描かれていて、
プラ爆弾を酒饅頭一個分とか言いながらコネコネしてるとことか、
細かいなーと思いながら観てました。
「どっちだと思う?」とか、そこんところはしっかり調べてないのかよ……と
彼らの行き当たりばったりぶりにあきれつつ、
すごい金塊なのに全然ハイテクじゃない金庫に入ってるのが
なんかリアルだったり、面白かったです。
原作では銀行の人に接触するはずだったんだけど、
どっちにしろ失敗するので、映画ではそういう工作部分ははぶかれてましたね。

しかしなんといっても圧巻なのは、
モモと幸田が撃たれちゃうあたりから、教会のシーン。
銃撃戦の緊迫感もいいし、
ふたりが震えながら押しずしをほおばるシーンがすごいです。

ふたりが出会ったのは真夏で、計画が実行されたのは真冬なので、
半年くらいはなんだかんだ一緒にいたわけじゃないですか。
でもなんか映画自体に色がない、というか、
街の色みたいなものも全然写りこんでないので、
その時間の流れが私には全然実感できなかったんですね。
半袖から長袖になっててもみんな地味~な色だし、
なんか真夏の空気感とか秋の気配とかも感じなかったし。
撮影は冬場の4か月くらいだからしょうがないし、
ただ私が見えてなかっただけかもしれないのですけども。

そんなわけで、ああ、モモと幸田のつながりをもうちょっと
丁寧にみたかったな……と感じるのですが、
あの教会のシーンを観ちゃうと、
あれだけで十分かもなぁと思ったりもして。

うだうだと、一体何がいいたいんだって感じですが、
とにかく箱寿司のシーンは最高だと、それだけは絶対です。

幸田がモモのために、じいちゃんを始末しにいって、
じいちゃんが自殺しているのを発見するシーンも、
文句なくいい。
あ、文句はあるか。
「父さん……」は言わせすぎか、と思ったもんね。

しかしこのシーンの妻夫木くんを観て、圧倒されたというか、
役者ってすごい……と肌が粟立ったです。
チャンミンも本当にいい現場にいたなぁ、勉強になったろうなぁとか
偉そうに思っちゃったりして。

原作ラストは、海を渡る船の上で幸田が死んでいくわけですが、 
映画はトラックの荷台で、海を渡る船はイメージとして描かれていました。
そして、北川がひとがたの包みをトプンと河に沈めて終わりましたね。

あれは……幸田なんだな……と思う頭の片隅で、
あんなじゃすぐ浮かんできそうだよ……と心配してました。
船の上ラストだったら、そのまま海に捨てたろうな、と思えたんだけどね。
あえて大阪の街中で幸田は沈められました。
あのやるせなさ、虚脱感、あっさり感。
ほんのちょっとの爽快感さえ井筒監督は許さなかったんだなー。

その後の色気もそっけもないエンドロールもすごい。
あんなもんですかね?活字もごく普通のやつで、あっさりでした。
流れてた曲は、まあどうでもいいか、って感じかな。
全然印象ないし。
大阪の喧騒が流れてるだけでもよかったんじゃないかとも思いました。

昔は映画館は総入れ替え制じゃなかったので、
気に入った映画はもう1回続けて観たりできたんだけど……。
観終わった後、もうちょっと暗がりに潜んでいたいなーと
思わせる映画でした。

うんうん、チャンミンもよかったよ。
原作にはない、お兄さんを殺すシーンが冒頭にあってよかったと思う。
アパートに上がる時、階段でけつまずいたのは演技じゃないよなー。
教会でも、美しくも醜くもなく、ただ固くなって死んでいったのがよかった。
スパイじゃなくなっても、ただあいつの頭を撃ち抜いて終わりにすればよかったのに……。

チャンミンが観たい!って観に行った人も、
最終的にはチャンミンもただ役者のひとり、と思える映画だし、
そういう演技を、彼もしていたと思います。
メイキング……観たいなー。


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