このドラマ、レンタル屋さんでは「ソン・ジュンギ」のコーナーにあるんですよ。
それはおかしいやろ……。
かといって、チャン・ヒョクコーナーでもおかしい。
これは役者カテゴリでは仕分けできない面白さですよ。
《あらすじ》
イ・ドの作った文字が、素晴らしいものだと理解したチョン・ギジュンは、
イ・シンジョクに指令を出し、取引をやめさせた。
集賢殿廃止と引き替えに、文字公布を認めさせようと思っていた王の計画は、
水泡に帰した。
ギジュンは、イ・バンジを探し出すよう指示。
弟子など取らぬと思われていた彼が唯一とった弟子、カン・チェユン。
彼がいると知れば、密本に協力するよう、説得できるかもしれない。
イ・シンジョクは、取引に応じなかったギジュンの考えが理解できない。
ギジュンは言う。
権力と文字は表裏一体だ。
両班が両班たるゆえんは、文字を知っているからだ。
文字が公布されれば、権力が拡散し、国の根幹を危うくするだろう。
この文字は、特別だ。日を西から昇らせる文字だ。
王は、取引きに応じなかった密本の考えが理解できない。
目的は集賢殿のはずだが、なぜここにきて?
この一撃に、渾身の力を込めた。
それがはずれた今、すさまじい反撃が始まるだろう。
ギジュンは、新しい文字の恐ろしさに愕然とする。
もしこの文字がひとたび表に出れば、疫病のように広がるだろう。
万民が文字を覚え、漢字を捨て去る。
漢字を遠ざければ、朱子学も忘れられる。
万民が読み書き出来るようになれば、士大夫は権力を失う。
権力を失った士大夫は朱子学で国を統率できなくなる。
朝鮮は……滅ぶ。
素養のないものが文字を使えば、人の命を失いかねない。
それほど文字は恐ろしい武器なのだ。
なぜ、このことがイ・シンジョクにはわからない?
彼は、宰相総裁制で権力を握れば、
文字など自由にかえられると考えている。
三峯先生だとて、士大夫に権力を集めるために密本を作ったのではないのか?
科挙の試験が終わった。
提出された答案のうち、もっとも優れたものを主席として認定するのは、王の仕事だ。
イ・ドは、たいへん優秀な答案を選び出した。
名前は、ソヨン。
ソヨンは宮殿に上がり、王から杯を賜った。
家柄を尋ねられたソヨンは、突然衣服を脱ぎ始める。
上等の上着の下から出てきたのは、粗末な着物。
彼は、泮村のだったのである。
科挙の受験をゆるされるのは、良民まで。
が試験を受けることなど、ゆるされないことだ。
しかも、身分の賤しいものが主席認定されるなど、言語道断。
「王様が新しい文字を万人に与えられると聞き、出てまいりました。
わたくしの才をお見せすることができ、悔いはありません」
学士たちは騒然としている。
王は、これがギジュンの策略だと気付き、唇を咬んだ。
ソヨンは国法によって裁かれ、タムナへ島流しの刑となった。
騒ぎは無用だ。
しかし、この事件で多くの士大夫や学士たちが、
新しい文字に反発し、拒否反応を示した。
「まだ終わるまい……」
王は、チョン・ギジュンのさらなる攻撃を恐れた。
成均館の儒生が、を打っている。
「成均館のだからといって、文字を覚えようなどとするな!」
その様子を見たチェユンは、驚いた。
「あいつの目は、戦場で見た目つきだ。
仲間が殺され、たったひとり、破れかぶれで戦う時の目。
文字を少しかじることが、あれほどまでにやつらを怒らせるのか……」
チェユンは、信じられない思いで彼らを見つめるのだった。
もしも、万人が文字を学ぶようになったら、奴碑も科挙を受けられるだろうか?
は法律上無理だが、良民なら可能だ。
もしかしたら、良民出身の官僚が大勢生まれるかもしれない。
本当にすさまじいことなんだな、とチェユンは思う。
恐ろしい事件が、また起こった。
タムナに送られるソヨンを、成均館の儒生が刺し殺したのである。
そして犯人は、大門の上で声明文を読み上げた後、自ら身を投げ、死んだ。
まだ幼さの残る顔から、鮮血が流れる。
身投げを目の当たりにしたチェユンは、つぶやく。
「それほどのことなのか?命を捨てるほど?」
隣で見ていたカリオンは囁く。
「たいへんな事なのです。士大夫が士大夫である理由を取り上げられるのですから」
自分が今まで見聞きした事柄が、
あらためて意味を持って記憶の底から立ち上がってきた。
ソイのいったこと、真剣な目、広平大君の必死の訴え。
王自身の、力強い言葉。
チェユンは、ソイに語る。
「こんなにすごいことだったのか。
王様が作った言葉が世に出るということは……。
お前知ってたのか?」
ソイもはじめは、よくわかっていなかった。
文字の創製を喜んだけど、だんだん不安になった。
下々の者たちが喜ぶことを、お偉方も喜ぶかしら?
「密本が邪魔をしている。チョン・ギジュンを捕まえるしかないんだな」
「チョン・ギジュンのことは誰も知らない。
チョ・マルセンさまも昔の顔しかご存じないの」
チェユンは、マルセンのことばを思い出した。
師匠イ・バンジはチョン・ドジュンの護衛だった。
師匠が、鍵を握っている。
イ・バンジは、都へ来ていた。
ユン・ピョンが接触し、密本への協力を請う。
しかし、イ・バンジは拒否。
「カン・チェユンも協力しています」
「何だと?」
チェユンは、自分と師匠の関係をムヒュルに話した。
(なんという悪縁か……)
ムヒュルは、チョン・ドジュン粛正事件の顛末をチェユンに話してやった。
イ・バンジには愛する女がいた。
それは、チョン・ドジュンの女だった。
あの夜、女は拉致され、連れ去られた。
それを知らされたイ・バンジは主君の元を離れ、女を助けに行った。
すべてが終わるまでとどまれば、女は殺さずにおくはずだった。
しかし、女自身が刃に身を投げた。
女はイ・バンジの腕の中で死んだ。
最後まで、三峯先生を助けに行って、と訴えながら。
イ・バンジは主君の元へ走ったが、主君は殺されていた。
彼は、女も、主君も、救うことができなかった。
女をさらってイ・バンジを足止めする任務を担ったのは、チョ・マルセンだ。
そのマルセンのもとに、知らせが届いた。
墓に酒を捧げて、泣く男が現れた。
マルセンには、それが誰だかわかっていた。
イ・バンジは、ギジュンの元を訪れた。
愛弟子カン・チェユンを巻き込むな、と警告にきたのだ。
政治はくだらない。
何をしても、踏みにじるもの、踏みにじられるものができることにかわりはないのだ。
しかし、ギジュンは納得しない。
護衛イ・バンジの裏切りにより、伯父である三峯先生は死んだ。
そのうえ、密本の書を持ち去り、組織をバラバラにした。
その罪は重い。
主君の女を欲し、主君を見殺しにした裏切り者だ。
イ・バンジは、その償いに殺してくれと頼んだが、
ギジュンの願いをかわりに叶えた。
ユン・ピョンを殺人鬼に仕立てた。
これ以上何をしろと?
イ・バンジは、チェユンが王の暗殺を企てていると聞かされる。
今はまだ密本ではないが、いずれそうなる。
そんな話の最中に、カン・チェユンが外から声をかけた。
「カリオン!カリオンはいるか!」
チェユンは師匠を探すつもりで、旅支度をしていた。
干し肉をもらおうと、カリオンの元へ寄ったのだ。
ギジュンは素知らぬ顔で、チェユンを中に招き入れる。
「先客がいたのか。どうも、雑司僕のカン・チェユンです」
挨拶をしようと、ふと笠を上げたチェユンは、目を疑う。
そこに座っていたのは、師匠イ・バンジその人ではないか!
イ・バンジはいささかも動じることなく、鋭い視線をチェユンに向けた。
これはいったい?
(つづく)
いやいや~、文字の公布が、どれほどすごいことなのか。
わたし自身も、よくわかっていなかったと思います。
あたら若い命を散らせても、阻止せねばならない重大事なのね……。
って、そんなバカなことがあるか!
といいたいが、志願した少年にとっては、
自分の命よりも大事なことだったのです。
国の未来のためだ、とか、そういう教育を受けてたらねぇ。
真面目な子ほど、そう思っちゃうよねぇ。
「ばかじゃねぇの?」とすたこら逃げ出すくらいの子ならよかったのに。
「ぼく怖くて無理です……」でもよかった。
命あってのものだねだよ。
チェユンもだんだんことの重大さを感じている様子。
これまでピンときてなかったタムや、王様の言葉が思い出されます。
文字の公布って恐ろしいものなんですよ……とささやき攻撃。
でもねぇ~、彼には、「ばっかじゃねえの?」って視点を失ってほしくない。
命を差し出さなきゃいけないくらい、大事なことなのかよ?と
いつも疑っていてほしい。
そう思う反面、この「文字公布」は、それほどの事業なんだよ、と
わかってほしい。
矛盾してるよね。矛盾してるけどさ~。
もしも、もしも彼が自分の命を投げ出さなきゃいけなくなった時、
「国のためだ!」とか「民衆のためだ!」とか思ってほしくない。
「ばかみてぇだよなぁ。ばかみてぇだけど、仕方ねぇなぁ」って
苦笑いしてほしいの……。
こんなことを思うのは、イ・バンジ師匠の過去話を聞いたからですよ!
あれそのまんま、チェユンが再現しちゃいそうなシチュエーションじゃん?!
タムが人質にとられてさー、助けに行っちゃってさ-、
彼女は「王様を助けて」とか「必ず文字を公布して!」とか言って
自ら死んでしまってさー、文字は公布されないまま、とかさ。
ありそうでしょ?!
今回の場合、必ず文字は公布されるとわかっているからいいものの……。
あ゛~、こないだまでしあわせモードだったのに、
いきなりフラグがたっちまったよ……。
悲劇か?!悲劇ラストなのか?!
チェユンの小さな望み。
わたしは、「を自由にしてほしい」かと思ってたけど、
どうもそんな感じじゃないみたい。
そりゃあんまりデカすぎる望みだもんね。
チェユンは聡明だし、何があっても生き抜く力はあるけど、
やっぱり視野が狭い。
として生きてきた考えが染みついている、普通の人なんだ。
(そこが王に判官として評価される最大のポイントなのだが)
「ねぇ、兄さん、望みってなに?」とソイが尋ねるあたり、
「タムと一緒になってしあわせに暮らしたい」というド定番なお願いなんだろうな、って気がする。
それはこないだオッケーして放免されかけたんだから、
心配しなくても叶えてもらえるよ。
あのシーンね、ソイにもうちょっと表情があったらな~。
「文字創製ってすごいでしょ?人生を懸ける大義だってわかったでしょ?
で、それはそれとして、兄さんはわたしをお嫁さんにしてくれるでしょ?」みたいな
フツーの女の子としてのかわゆさがあったらなーと思うんですよ。
そうすれば、「それはチョン・ギジュンを捕まえてからな!」と、
大義のために働くことが楽しくなってきてるチェユンの状況が引き立つのにな、と。
これって、定番通り演技しちゃうとすっごいベタなシーンだと思うのですが、
ソイの無表情が微妙な空気を醸し出してます。
「わたしをお嫁さんにしたいってお願いよね?」ってワクワクしてるのか、
「兄さんの願いっていったい……何?」って疑心暗鬼になってるのか、よくわからん。
監督がオッケー出したって事は、そのへんのどっちつかず感でいいのか?
イ・バンジ師匠もなかなか隅におけませんね。
「強がっているが傷つきやすい奴だ」とチェユンのことを評していますが、
これってきっとご自分のことにも当てはまるのよね。
自分とよく似た人間だから、弟子にしたんだね、きっと。
とにかくチェユンをかわいがっていることがよくわかりました。
渋い!渋すぎる!ヨーダっぽいとの評判も納得。人生の師ですね。
それにもまして、かっこいいのはやっぱりチョ・マルセンですよ~。
イ・バンジを足止めするために、卑怯なことも平気でやる男。
そして、それを平気な顔で隠す男。
一筋縄ではいかんわ~。
そのうえ、きっとあの場所に、イ・バンジが来る、と予測できる男。
いつかイ・バンジが、酒を手向けて泣くだろうと考える男。
非情で、繊細で、しかも賢い。
キャー!カッコヨス!
枯れ専もいい加減にしろ!とののしられてもかまいません。好きなんだもん。
先代から、イ・ドのやることを邪魔するな、と言い含められているマルセン。
でもチェユンと王の関係とかよくわからないから、
独自の動きをしそう。面白いですね。
ユン・ピョンは、殺人鬼となるべく、育てられたのか~。
あの時点でだいぶ大きくなってたけどね。
だからイ・バンジは弟子だと認めないのね。
無理矢理だったし、心は教えてないからね。
それでも「師匠」と呼びたいユン・ピョンの心は切ないわねぇ。
が科挙で主席合格……。
いつかはそんな日がくるかも。
今回は、試験問題をきいてギジュンが代筆したものですけどね。
王も愕然。
こういうこともあり得るぞ、という警告。
士大夫は戦々恐々。
人間は、みな平等、とは思えないんですかねぇ。
みなさん学があるのに。
心を教えずして、文字を教えるとたいへんなことになる、というのは、
昨今のラインいじめとか、ネットいじめみたいなものを連想させます。
言葉は武器になる。
もっとも手軽で恐ろしい武器。
なんでもそうですけど、使いようですからね。
誰もが、特権を手放したくない。
その気持ちはわかる。
文字が読み書き出来るようになったら、
「責任を負わされるだけ」という、かつてのチェユンやカリオンの言葉も
理解できます。
それでも、文字が必要なんだ!と王は思う。
民衆も、そう思ってくれたらいいんですけどね。
そんなめんどうなこと嫌だ!って人もいるでしょうね。
まさしく民は幼子のようなもの。
育てなければいけないんですね。
それはおかしいやろ……。
かといって、チャン・ヒョクコーナーでもおかしい。
これは役者カテゴリでは仕分けできない面白さですよ。
《あらすじ》
イ・ドの作った文字が、素晴らしいものだと理解したチョン・ギジュンは、
イ・シンジョクに指令を出し、取引をやめさせた。
集賢殿廃止と引き替えに、文字公布を認めさせようと思っていた王の計画は、
水泡に帰した。
ギジュンは、イ・バンジを探し出すよう指示。
弟子など取らぬと思われていた彼が唯一とった弟子、カン・チェユン。
彼がいると知れば、密本に協力するよう、説得できるかもしれない。
イ・シンジョクは、取引に応じなかったギジュンの考えが理解できない。
ギジュンは言う。
権力と文字は表裏一体だ。
両班が両班たるゆえんは、文字を知っているからだ。
文字が公布されれば、権力が拡散し、国の根幹を危うくするだろう。
この文字は、特別だ。日を西から昇らせる文字だ。
王は、取引きに応じなかった密本の考えが理解できない。
目的は集賢殿のはずだが、なぜここにきて?
この一撃に、渾身の力を込めた。
それがはずれた今、すさまじい反撃が始まるだろう。
ギジュンは、新しい文字の恐ろしさに愕然とする。
もしこの文字がひとたび表に出れば、疫病のように広がるだろう。
万民が文字を覚え、漢字を捨て去る。
漢字を遠ざければ、朱子学も忘れられる。
万民が読み書き出来るようになれば、士大夫は権力を失う。
権力を失った士大夫は朱子学で国を統率できなくなる。
朝鮮は……滅ぶ。
素養のないものが文字を使えば、人の命を失いかねない。
それほど文字は恐ろしい武器なのだ。
なぜ、このことがイ・シンジョクにはわからない?
彼は、宰相総裁制で権力を握れば、
文字など自由にかえられると考えている。
三峯先生だとて、士大夫に権力を集めるために密本を作ったのではないのか?
科挙の試験が終わった。
提出された答案のうち、もっとも優れたものを主席として認定するのは、王の仕事だ。
イ・ドは、たいへん優秀な答案を選び出した。
名前は、ソヨン。
ソヨンは宮殿に上がり、王から杯を賜った。
家柄を尋ねられたソヨンは、突然衣服を脱ぎ始める。
上等の上着の下から出てきたのは、粗末な着物。
彼は、泮村のだったのである。
科挙の受験をゆるされるのは、良民まで。
が試験を受けることなど、ゆるされないことだ。
しかも、身分の賤しいものが主席認定されるなど、言語道断。
「王様が新しい文字を万人に与えられると聞き、出てまいりました。
わたくしの才をお見せすることができ、悔いはありません」
学士たちは騒然としている。
王は、これがギジュンの策略だと気付き、唇を咬んだ。
ソヨンは国法によって裁かれ、タムナへ島流しの刑となった。
騒ぎは無用だ。
しかし、この事件で多くの士大夫や学士たちが、
新しい文字に反発し、拒否反応を示した。
「まだ終わるまい……」
王は、チョン・ギジュンのさらなる攻撃を恐れた。
成均館の儒生が、を打っている。
「成均館のだからといって、文字を覚えようなどとするな!」
その様子を見たチェユンは、驚いた。
「あいつの目は、戦場で見た目つきだ。
仲間が殺され、たったひとり、破れかぶれで戦う時の目。
文字を少しかじることが、あれほどまでにやつらを怒らせるのか……」
チェユンは、信じられない思いで彼らを見つめるのだった。
もしも、万人が文字を学ぶようになったら、奴碑も科挙を受けられるだろうか?
は法律上無理だが、良民なら可能だ。
もしかしたら、良民出身の官僚が大勢生まれるかもしれない。
本当にすさまじいことなんだな、とチェユンは思う。
恐ろしい事件が、また起こった。
タムナに送られるソヨンを、成均館の儒生が刺し殺したのである。
そして犯人は、大門の上で声明文を読み上げた後、自ら身を投げ、死んだ。
まだ幼さの残る顔から、鮮血が流れる。
身投げを目の当たりにしたチェユンは、つぶやく。
「それほどのことなのか?命を捨てるほど?」
隣で見ていたカリオンは囁く。
「たいへんな事なのです。士大夫が士大夫である理由を取り上げられるのですから」
自分が今まで見聞きした事柄が、
あらためて意味を持って記憶の底から立ち上がってきた。
ソイのいったこと、真剣な目、広平大君の必死の訴え。
王自身の、力強い言葉。
チェユンは、ソイに語る。
「こんなにすごいことだったのか。
王様が作った言葉が世に出るということは……。
お前知ってたのか?」
ソイもはじめは、よくわかっていなかった。
文字の創製を喜んだけど、だんだん不安になった。
下々の者たちが喜ぶことを、お偉方も喜ぶかしら?
「密本が邪魔をしている。チョン・ギジュンを捕まえるしかないんだな」
「チョン・ギジュンのことは誰も知らない。
チョ・マルセンさまも昔の顔しかご存じないの」
チェユンは、マルセンのことばを思い出した。
師匠イ・バンジはチョン・ドジュンの護衛だった。
師匠が、鍵を握っている。
イ・バンジは、都へ来ていた。
ユン・ピョンが接触し、密本への協力を請う。
しかし、イ・バンジは拒否。
「カン・チェユンも協力しています」
「何だと?」
チェユンは、自分と師匠の関係をムヒュルに話した。
(なんという悪縁か……)
ムヒュルは、チョン・ドジュン粛正事件の顛末をチェユンに話してやった。
イ・バンジには愛する女がいた。
それは、チョン・ドジュンの女だった。
あの夜、女は拉致され、連れ去られた。
それを知らされたイ・バンジは主君の元を離れ、女を助けに行った。
すべてが終わるまでとどまれば、女は殺さずにおくはずだった。
しかし、女自身が刃に身を投げた。
女はイ・バンジの腕の中で死んだ。
最後まで、三峯先生を助けに行って、と訴えながら。
イ・バンジは主君の元へ走ったが、主君は殺されていた。
彼は、女も、主君も、救うことができなかった。
女をさらってイ・バンジを足止めする任務を担ったのは、チョ・マルセンだ。
そのマルセンのもとに、知らせが届いた。
墓に酒を捧げて、泣く男が現れた。
マルセンには、それが誰だかわかっていた。
イ・バンジは、ギジュンの元を訪れた。
愛弟子カン・チェユンを巻き込むな、と警告にきたのだ。
政治はくだらない。
何をしても、踏みにじるもの、踏みにじられるものができることにかわりはないのだ。
しかし、ギジュンは納得しない。
護衛イ・バンジの裏切りにより、伯父である三峯先生は死んだ。
そのうえ、密本の書を持ち去り、組織をバラバラにした。
その罪は重い。
主君の女を欲し、主君を見殺しにした裏切り者だ。
イ・バンジは、その償いに殺してくれと頼んだが、
ギジュンの願いをかわりに叶えた。
ユン・ピョンを殺人鬼に仕立てた。
これ以上何をしろと?
イ・バンジは、チェユンが王の暗殺を企てていると聞かされる。
今はまだ密本ではないが、いずれそうなる。
そんな話の最中に、カン・チェユンが外から声をかけた。
「カリオン!カリオンはいるか!」
チェユンは師匠を探すつもりで、旅支度をしていた。
干し肉をもらおうと、カリオンの元へ寄ったのだ。
ギジュンは素知らぬ顔で、チェユンを中に招き入れる。
「先客がいたのか。どうも、雑司僕のカン・チェユンです」
挨拶をしようと、ふと笠を上げたチェユンは、目を疑う。
そこに座っていたのは、師匠イ・バンジその人ではないか!
イ・バンジはいささかも動じることなく、鋭い視線をチェユンに向けた。
これはいったい?
(つづく)
いやいや~、文字の公布が、どれほどすごいことなのか。
わたし自身も、よくわかっていなかったと思います。
あたら若い命を散らせても、阻止せねばならない重大事なのね……。
って、そんなバカなことがあるか!
といいたいが、志願した少年にとっては、
自分の命よりも大事なことだったのです。
国の未来のためだ、とか、そういう教育を受けてたらねぇ。
真面目な子ほど、そう思っちゃうよねぇ。
「ばかじゃねぇの?」とすたこら逃げ出すくらいの子ならよかったのに。
「ぼく怖くて無理です……」でもよかった。
命あってのものだねだよ。
チェユンもだんだんことの重大さを感じている様子。
これまでピンときてなかったタムや、王様の言葉が思い出されます。
文字の公布って恐ろしいものなんですよ……とささやき攻撃。
でもねぇ~、彼には、「ばっかじゃねえの?」って視点を失ってほしくない。
命を差し出さなきゃいけないくらい、大事なことなのかよ?と
いつも疑っていてほしい。
そう思う反面、この「文字公布」は、それほどの事業なんだよ、と
わかってほしい。
矛盾してるよね。矛盾してるけどさ~。
もしも、もしも彼が自分の命を投げ出さなきゃいけなくなった時、
「国のためだ!」とか「民衆のためだ!」とか思ってほしくない。
「ばかみてぇだよなぁ。ばかみてぇだけど、仕方ねぇなぁ」って
苦笑いしてほしいの……。
こんなことを思うのは、イ・バンジ師匠の過去話を聞いたからですよ!
あれそのまんま、チェユンが再現しちゃいそうなシチュエーションじゃん?!
タムが人質にとられてさー、助けに行っちゃってさ-、
彼女は「王様を助けて」とか「必ず文字を公布して!」とか言って
自ら死んでしまってさー、文字は公布されないまま、とかさ。
ありそうでしょ?!
今回の場合、必ず文字は公布されるとわかっているからいいものの……。
あ゛~、こないだまでしあわせモードだったのに、
いきなりフラグがたっちまったよ……。
悲劇か?!悲劇ラストなのか?!
チェユンの小さな望み。
わたしは、「を自由にしてほしい」かと思ってたけど、
どうもそんな感じじゃないみたい。
そりゃあんまりデカすぎる望みだもんね。
チェユンは聡明だし、何があっても生き抜く力はあるけど、
やっぱり視野が狭い。
として生きてきた考えが染みついている、普通の人なんだ。
(そこが王に判官として評価される最大のポイントなのだが)
「ねぇ、兄さん、望みってなに?」とソイが尋ねるあたり、
「タムと一緒になってしあわせに暮らしたい」というド定番なお願いなんだろうな、って気がする。
それはこないだオッケーして放免されかけたんだから、
心配しなくても叶えてもらえるよ。
あのシーンね、ソイにもうちょっと表情があったらな~。
「文字創製ってすごいでしょ?人生を懸ける大義だってわかったでしょ?
で、それはそれとして、兄さんはわたしをお嫁さんにしてくれるでしょ?」みたいな
フツーの女の子としてのかわゆさがあったらなーと思うんですよ。
そうすれば、「それはチョン・ギジュンを捕まえてからな!」と、
大義のために働くことが楽しくなってきてるチェユンの状況が引き立つのにな、と。
これって、定番通り演技しちゃうとすっごいベタなシーンだと思うのですが、
ソイの無表情が微妙な空気を醸し出してます。
「わたしをお嫁さんにしたいってお願いよね?」ってワクワクしてるのか、
「兄さんの願いっていったい……何?」って疑心暗鬼になってるのか、よくわからん。
監督がオッケー出したって事は、そのへんのどっちつかず感でいいのか?
イ・バンジ師匠もなかなか隅におけませんね。
「強がっているが傷つきやすい奴だ」とチェユンのことを評していますが、
これってきっとご自分のことにも当てはまるのよね。
自分とよく似た人間だから、弟子にしたんだね、きっと。
とにかくチェユンをかわいがっていることがよくわかりました。
渋い!渋すぎる!ヨーダっぽいとの評判も納得。人生の師ですね。
それにもまして、かっこいいのはやっぱりチョ・マルセンですよ~。
イ・バンジを足止めするために、卑怯なことも平気でやる男。
そして、それを平気な顔で隠す男。
一筋縄ではいかんわ~。
そのうえ、きっとあの場所に、イ・バンジが来る、と予測できる男。
いつかイ・バンジが、酒を手向けて泣くだろうと考える男。
非情で、繊細で、しかも賢い。
キャー!カッコヨス!
枯れ専もいい加減にしろ!とののしられてもかまいません。好きなんだもん。
先代から、イ・ドのやることを邪魔するな、と言い含められているマルセン。
でもチェユンと王の関係とかよくわからないから、
独自の動きをしそう。面白いですね。
ユン・ピョンは、殺人鬼となるべく、育てられたのか~。
あの時点でだいぶ大きくなってたけどね。
だからイ・バンジは弟子だと認めないのね。
無理矢理だったし、心は教えてないからね。
それでも「師匠」と呼びたいユン・ピョンの心は切ないわねぇ。
が科挙で主席合格……。
いつかはそんな日がくるかも。
今回は、試験問題をきいてギジュンが代筆したものですけどね。
王も愕然。
こういうこともあり得るぞ、という警告。
士大夫は戦々恐々。
人間は、みな平等、とは思えないんですかねぇ。
みなさん学があるのに。
心を教えずして、文字を教えるとたいへんなことになる、というのは、
昨今のラインいじめとか、ネットいじめみたいなものを連想させます。
言葉は武器になる。
もっとも手軽で恐ろしい武器。
なんでもそうですけど、使いようですからね。
誰もが、特権を手放したくない。
その気持ちはわかる。
文字が読み書き出来るようになったら、
「責任を負わされるだけ」という、かつてのチェユンやカリオンの言葉も
理解できます。
それでも、文字が必要なんだ!と王は思う。
民衆も、そう思ってくれたらいいんですけどね。
そんなめんどうなこと嫌だ!って人もいるでしょうね。
まさしく民は幼子のようなもの。
育てなければいけないんですね。
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