高校になると
周りが急に大人びてくる
自分だけ何も変わらないように思えて…
クラスの中でも
一番大人びた子
学校を休みがちになった…
ある日の学校帰り
行こう…と言われて
連れて行かれた場所…
小さな喫茶店
一番奥のテーブルに二人で座り…
少し悩んでいた
時々ここに来て
一人で勉強をしている、と言った…
一日だけ
その子と一緒に
その場所で
教科書を開いた…
友達と話をしていた時
急に教室に入って来た…
その子は私の腕をつかみ
屋上へと走った…
淡々と話すその子に
私はかける言葉が無かった
…
「話を聞くしか出来ない
何もしてあげられない
ごめんね…」
…
「いい…ありがとう」
笑って言ったその子の顔が切なかった…
授業が始まっていた教室に
後ろからそっと入り席に着いた
教科書の字がだんだん見えなくなっていった…
混沌とした時間
たくさんの矛盾の中で
小さな言葉も
心に深く突き刺さる
一度だけ
聞いた事がある
「私の事、分かる?」
振り向こうとする背中に
「私の事なんか分からない…」
その人は
私の目を見て
「分かる」
と言った
それ以上は聞かなかった
それでいいと思った…