鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

埋もれた軍歌・その1 「国民歌」

2012-01-31 13:59:52 | 軍歌
世の中、「軍歌が好き」という人は意外と多くいます。
カラオケには「軍歌」という項目が設けられている場合も多いですし、日本国内に限らず諸外国の軍歌研究を趣味にしていらっしゃる方というのも結構いる。
ネット環境が整備されたこのご時世、YouTubeやニコニコ動画を探すだけでもかなりの軍歌音源が見つかります。いい時代になったものです(そうか?

・・・しかしですな。そうして現在も聞かれる軍歌というのは、長い年月の間で淘汰されること無く残ってきたものだけなのだという事実は、我々は忘れるわけにはいかんのです。
歌い継がれる名曲の陰には、ろくに歌われずに忘れ去られていった幾多の駄曲・・・と言ってはなんですが、まあ人気を得られなかった曲が数多ある訳です。
そういった不人気曲を知ってこそ、今ある名軍歌の素晴らしさと言うものはより一層引き立つのではないでしょうかっ!
・・・いやまあ。ぶっちゃけた話、有名な軍歌を紹介したところで幾多の有名サイト様に勝てるわけでもなし、いっそどマイナーな歌を紹介してやろうと云うだけのしみったれた根性なのかもしれませんが(何

何はともあれ、今回ご紹介する歌は昭和9(1934)年に成武堂から発行された「ポケット軍歌集」の「第二篇 国民及び軍人精神の歌」に掲載されている歌です。題名はそのものずばり「国民歌」。作詞者、作曲者ともに不詳です。


  国民歌

一 天照らす太陽(ひ)を名に負いて
   天地(あめつち)と共に国あり
  天地と共に君あり
   天地と共に民あり
  おお、おお、日本国(ひのくに)
   日本皇帝(ひのきみ)、日本国民(ひのたみ)
ニ 天照らす太陽(ひ)を国章(しるし)とし
   六合(りくごう)に洽(あまね)き御稜威
  とこ若き帝國(みくに)の命
   けがれなき民族(うがら)の血潮
  おお、おお、日本国(ひのくに)
   日本皇帝(ひのきみ)、日本国民(ひのたみ)
三 太陽民族(ひのうがら)身ぬちに燃ゆる
   わが希望(のぞみ)太陽(ひ)の如(ごと)若し
  太陽民族身ぬちにこもる
   わが力太陽の如強し
  おお、おお、日本国(ひのくに)
   日本皇帝(ひのきみ)、日本国民(ひのたみ)
四 太陽民族身ぬちに薀(つ)める
   わが愛(まこと)太陽の如博(ひろ)し
  太陽民族身ぬちに斎(いつ)く
   わが太陽の如明(あか)し
  おお、おお、日本国(ひのくに)
   日本皇帝(ひのきみ)、日本国民(ひのたみ)
五 大地(おおづち)に人とし萌えて
   蒼生(ひとくさ)と共に栄えむ
  大空に我が太陽とかかり
   人類(もろびと)に光は投げむ
  おお、おお、日本国(ひのくに)
   日本皇帝(ひのきみ)、日本国民(ひのたみ)


・・・いやあー、凄いですねえ。この言葉の選び方のセンス。「太陽民族」と書いて「ひのうがら」と訓ませるところなんか、いっちゃなんですけど厨二病満開ですね。こりゃ流行りませんわ。
やたら「太陽」「日」(どちらも「ひ」と訓ませる)という語を使っている辺り、作詞者のこだわりを感じさせます。
そのこだわりが聖徳太子の「日出処の天子」的な感覚、すなわち日本を諸国家の再東端に置くという地理感覚から発するのか、それとも天照大神を八百万の神の頂点とし、しかも日本国民の総氏神とする国家神道観から発するものかは分かりませんが。いや、きっとその両方ともあるんだろうなー。
ところでこの歌、今のところ音源が確認できておりません。ご存知の方がいらっしゃいましたら是非ご一報を。

蒐集品を晒してみる・その⑦ 日本・大日本武徳会員之章

2012-01-30 13:47:52 | 蒐集品


今回ご紹介するこの徽章は、別に珍しいものじゃありません。
この手の徽章を蒐集している人なら誰でも一度はお目にかかったことがある筈の徽章、「大日本武徳会員之章」です。
大日本武徳会は明治28(1895)年に結成された団体で、武術・武道の振興、教育、顕彰をその目的としていました。昭和17(1942)年からは戦争の影響もあり武道関係組織を統制する政府の外郭団体となりましたが、敗戦後の昭和21(1946)年、GHQの指令により解散を余儀なくされました。現在でも「大日本武徳会」を名乗る団体はありますが、組織的には繋がりはありません。まあ、団体側は戦前の大日本武徳会を受け継ぐものと主張しているようですが。
政府の外郭団体になった昭和17年度末には会員数224万人を数えたという話ですから、まあ大量の会員章が残されているわけです。

本章の部分は古来の神鏡をかたどり、その中に光芒を放つ「武徳」の文字が隷書で書かれています。下部には二本の矢と弓が交差するように配置されていますが、よく見ると二本の矢は鏃が違っています。恐らく「狩股」と呼ばれる二股の鏃と「平根」と呼ばれる身幅の広い鏃と思われます。何の意味があるのかはいまいち分かりませんが。



裏面には「大日本武徳会」の文字が書かれています。
今のように安全ピン式に留めるものではなく、先の尖った一本のピンを服に刺して留める形式ですね。怖いです。



箱に入った様子。本来は箱に「武徳会員之章」と書いた紙が貼ってある筈なんですが、文字の部分が辛うじて残っているだけになっています。

あ、因みに今回から「蒐集品を~」シリーズは、新設したカテゴリ「蒐集品」に移動しました。まんまですね(笑)

蒐集品を晒してみる・その⑥ 日本・愛国婦人会特別有功章

2012-01-23 21:37:44 | 蒐集品


という訳で、今回もまた愛国婦人会の徽章をご紹介。
今回は凄いですよー、何しろ「特別有功章」です。
愛国婦人会有功章規則に拠れば、この徽章は「会資一千円以上を寄贈し又は功労顕著なる者に対して」贈与されるとなっています。
この金額、現在の金額になおすと大体どのくらいの価値になるのか。
単純比較は難しいですが、日本銀行のサイトに載っている企業物価指数を参考にして計算してみると、この規則が制定された大正6年の価値で大体現在の70万2800円相当。また、規則が改正された昭和6年の価値ではおよそ89万3500円相当となります。
無理して出せば何とかならなくも無さそうですが、昭和6年の職業婦人の月収が30円前後(横浜市社会課『昭和六年社会事情調査』1932年)、昭和12~13年の官公吏(公務員)の平均実収入が90円程度(内閣統計局『家計調査報告』1939年)という数字を見る限り、実際の価値感覚はもっと違いそうな気も。なんにせよ、そう気楽にぽんぽんと出せる金額ではなかったようです。

徽章そのものに目を向けてみると、章本体の形状こそ以前紹介した三等有功章竝附加章と大差無いものの、全体が非常に鮮やかに彩られているのがわかります。白色の織地に紫の中央線が入った綬や、先端に金色の金具が付いた紫色の紐。章本体も白地に赤、緑、桜、藍などの七宝で彩られています。



裏面の様子。章本体の部分には「愛国婦人会特別有功章」と刻まれています。
三等有功章竝附加章などとは違い「特別」の文字が入れられていますね。
また、ピンが半襟型の部分とは別の部品に付けられていることも分かります。



箱も三等有功章竝附加章とは違い、勲章式の漆塗りに金文字となっています。大きさもかなりありまして、縦は三等有功章竝附加章のおよそ1.8倍程度の長さがあります。また、蓋の下部にはこれも勲章式の留め金が付いています。
ところで、左下に写っているのは一緒に落札した愛国婦人会特別会員章です。大きさの比較になるかと思って置いたんですが、考えてみれば一般の人にはこの会員章の大きさがどれだけか分からないという…(笑)
因みに今調べてみたところ、会員章の鏡型部分はおよそ一円玉程度の大きさでした。ご参考までに。

蒐集品を晒してみる・その⑤ ベトナム・K82型陸軍制帽

2012-01-14 14:50:46 | 蒐集品


という訳で、この間届いたベトナム人民軍の制帽を紹介します。
この制帽はK82型(type K82)、つまり1982年から2009年末までの制式によるものだそうで。
少佐の軍装一揃いと一緒に買ったので、多分士官用。まあ飾り顎紐が黄色の編み紐なのを見りゃ大体分かりますけど。
通気口は両側に二つずつ付いています。



帽章のアップです。葉っぱに囲まれたコカルデに描かれているのは稲穂、星、歯車。
どれも共産圏ではよく使われる意匠で、あまり面白みはありません。材質は金属。



内側の様子です。サイズは57ですね。検印らしきものも見られます。中央に貼ってあるタグの「Cục Quân Nhu」とは「陸軍」の意味だそうで。
面白いのは内側から実用の顎紐がのびていること。材質はおそらく合成皮革ですが、本来のあご紐と同様に互い違いにすることで長さを調節するようになっています。鮎川が知る限り飾り用のあご紐とは別に実用のあご紐をつけている例としては他に人民解放軍の07式制帽がありますが、人民解放軍のそれはゴムひもで長さを調節するようになっています。

愛国婦人会有功章規則。

2012-01-07 01:53:04 | 蒐集品
・・・なんてものが載ってる本が大学の図書館にありました。凄いぞ早稲田!
という訳で、昭和16年発行「愛国婦人会四十年史附録」より引用。


有功章規則(大正六年十二月二十日愛甲第一六七号、改正昭和六年十二月十日愛甲第二七八号)

第一条 有功章は会資を寄贈し又は功労顕著なる者に対し之を贈与す
第一条の二 有功章は特別、一等、二等、三等に分ち更に一等、二等、三等有功章を各二種に区分すその制式附図の如し
第二条 有功章の贈与は左の区別による
    一、会資一千円以上を寄贈し又は功労顕著なる者に対しては特別有功章
    二、会資五百円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては一等有功章竝附加章
    三、会資三百円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては一等有功章
    四、会資二百円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては二等有功章竝附加章
    五、会資百五十円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては二等有功章
    六、会資一百円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては三等有功章竝附加章
    七、会資五十円以上を寄贈し又は功労前項に亞く者に対しては三等有功章
第三条 佩有功章者有功章の階級を進められたるときは前有功章は之を還納すべし
第四条 特別維持会員にして会費百五十円以上を納入したるときは会資寄贈者に準じ有功章を贈与す特別維持会員にして会資
    百円以上を寄贈し有功章を贈与せられたるときは毎年の会費は別に出金を要せずして之を納入しつつあるものと看做す
    特別会員、通常会員にして会資百円以上を寄贈し有功章を贈与せられたるときは特別維持会員に列せられたる者とし
    て毎年の会費は別に出金を要せずして之を納入しつつあるものと看做す未だ会員たらざる者にして会資百円以上を寄
    贈し有功章を贈与せられたるとき亦同じ通常会員にして第二条第七号に依り有功章を贈与せられたる者は特別会員に
    列せられたるものとす
    未だ会員たらずして第二条第七号に依り有功章を贈与せられたる者亦同じ
    男子にして有功章を贈与せられたるものは賛助員に列せられたるものとす
第五条 本規則施行上必要なる規定は別に之を定む

附則

一、本規則改正以前に贈与せられたる特別徽章は特別有功章と引換を経る迄之を佩用することを得
二、大正六年十二月愛庶第一九九号有功章規則に関する説明は之を廃止す


・・・ここから分かることですが、まず前回の記事で「愛国婦人会三等有功章附加章」と書いたのは実は間違いであると。
本来の名称は「愛国婦人会三等有功章附加章」らしいですね。
また、授与基準も明確に分かりました。それから勲章と同様に上位の有功章が授与されたら下位のものは返納すると。
それからここが重要ですが、男性でも授与されるんですね、この徽章。なんだ、佩用できるじゃん!
という訳で、佩用規則などもまた後ほど引用しますー。