鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

貴方も「貴族」になりませんこと?―シーランド「以外」での爵位称号購入のススメ―

2022-06-28 19:19:20 | その他サブカルチャー
皆様ごきげんよう、東條でございますわ。
まだ6月というのに暑さ厳しい折、皆様いかがお過ごしでらっしゃいますかしら?
賃金労働者の方々におかれましては待ちに望んだ賞与の支給もあったと存じますけれども、昨今の情勢下、なかなか大きな買い物とか旅行とかをするという訳にも参りませんわよね。
ですのでわたくし、皆様にあまり金銭的負担なく豊かな生活を送っていただきたいと思いまして、次のようにご提案いたしますの。


爵位買いましょう、爵位。


ええ、先ほどから慣れないお嬢様口調みたいな文章でこの記事を書き綴っておりますのも、つまりはそういうことでございますわ。ちなみに今回は全編通してこの口調で参りますのでお覚悟くださいませ。

爵位を買う、というと皆様おそらくシーランド公国の爵位のことを連想されるでしょうね。
けれどもわたくし、シーランドの爵位についてはあえてここでおすすめしようとは思いませんの。と申しますのも、シーランドの爵位を購入する方法については「爵位 購入」などのキーワードで検索すれば大量の記事がヒットいたしますし…正直なところ、「爵位を買うならシーランド」のような固定観念が広まってしまうのはあまり面白くありませんわ。皆様には、もっと広い選択肢があるということを知っていただきたいんですの。

ですから今回は、シーランド「以外」の爵位称号を購入する方法についてご案内差し上げたいと思いますわ。

実を言いますと、称号を販売している組織というか団体というか、とにかくその手の主体というのは結構ありますの。ただし、その多くはシーランドのように独立国を称している訳ではなく、単なる「ちょっとユニークなプレゼント」の通販サイトのような形になっておりますわ。下記にその例を挙げていくことといたしましょう。なお、中にはわたくし、およびわたくしのお友達が既に購入して郵送物が届くことを確認している主体もありますので、そうしたところにつきましては実際に届いた書類などの写真をご参考までに皆様へお披露目することにいたしますわね。あ、ちなみにそれぞれの称号には女性形もございますけれども、煩瑣を避けるためにここでは男性形のみ挙げさせていただければ幸いですわ。例えば「”Lord”を販売している」と書いた場合、大抵は”Lady”も販売しておりますので、そこは補って読んでくださいましね。


1.Consultingdigital.com(http://www.consultingdigital.com/adelstitel.php)
 2004年以来、貴族の称号を含む様々な称号の証明書を販売してきたサイトだそうですわ。取り扱われている爵位称号の中で最も安いものは15ユーロで、領地名(例えば” Herzog von Pleß”でしたら” von Pleß”に相当する部分を本記事では便宜上このように表記させていただきますわ。支配権を喪失した旧領名や家門の発祥地、あるいは叙爵される前からの姓をこの位置に持ってくる場合もありますので必ずしも適当ではない場合があることについてはご勘弁くださいませ!)がなく、かつ電子メールによるPDFでの配送となるようですの。実体のある証明書が郵送されてくるわけでないのは残念ですけれど、逆に考えれば住所の入力間違いや郵便事故などで証明書が届かない、というリスクについては避けることができるというメリットもありますわね。ちなみに実体のある証明書が発行されるプランは29ユーロで、領地名があるものも含め基本的にはこの価格が標準になっているようですわ。特徴的な称号としては” Bojar de Transilvania”というものがありまして、こちらを購入するとスラヴ圏における称号である「ボヤール」を名乗れる、ということになりますわね。立て付けとしては発行主体がトランシルバニアに土地を所有していて、このプランを購入することによってその土地の共同所有者になるので土地所有に結びついた「ボヤール」称号を名乗れる、ということになっているようですわ。


2.Noble-society.net(https://noble-society.net/ja/)
 こちらも大体2000年頃から称号を販売しているらしいサイトですわ。というかわたくしも先ほどアクセスして気づいたのですけれど、いつの間にか公式に日本語対応してますわね…。確実に日本にそういう需要があることが把握されているようですわ…。ともあれ、こちらのサイトではドイツ系の爵位称号のみならず、スコットランドやアイルランド、フランス、イタリアなどの称号が販売されておりますわ。ちょっと珍しい例をいくつか申し上げますと、例えば(ご時世的に少々いかがなものかとは思いますけれど)ロシアのバシコルトスタンにある土地の共同所有者になるという立て付けで得られる” Tsar of Marinovka”、つまり「マリノフカのツァーリ」という称号ですとか、「エジプトにおける称号」とされている” Pasha of Safaga”、つまり「サファガのパシャ」などというものもありますわね。面白いのが東アジアの称号とされるものも取り扱われているところで、例えば日本の称号とされている”Shogun kara Taishi”などというものもありますわ。これ、おそらくはドイツ語のvonや英語のofに相当する語として「~から」を入れているのだと思いますけれど…Taishiが何なのかはよく分かりませんわね。明らかに自動翻訳された「神の恩寵による、侍マスターである私は…」から始まる文言と謎のおじさまや鳥居といったエキゾティックジャペァーン要素がこれでもかとばかりに詰め込まれた証明書は一見の価値ありですわ。わたくしが自分のお小遣いで買えと言われたら躊躇してしまいますけれども。ちなみにこちらのサイトと全く同じ称号を扱っているhttps://adelstitel-kaufen.com/というサイトもあるのですけれど、どうやら両方とも同じくterra presenta ltd.という企業(?)が運営しているようですわ。


3.ADELSTITEL KAUFEN(https://adelstitel-kauf.eu/)
 「高貴な称号を購入する」というそのものずばりのサイト名、決して嫌いではありませんわよ。こちらではKaiserからRitterまで様々なドイツ系の称号が販売されておりますけれども、それぞれの称号と「利用することが可能」な領地名を自由に組み合わせて購入することができるのが特徴ですわね。ただ、この領地名の選択が購入の際に入力必須な項目となっている点がいささか気になりますわ。わたくしでしたらKaiserの称号などはそういったものがない方がよいと思うのですけれど…。他の販売主体に比較して価格や称号の独自性の点で少々物足りない部分があるようにも思われるのですけれど、一応こちらのサイトで購入できる称号についてはその使用権を法的に確保するため、ブランド名として特許庁に登録されている、ということが謳われておりますわ。


4.4micromax(https://www.4micromax-online.de/)
 こちらでは基本的にFürst(公爵/侯爵)、Graf(伯爵)、Lord(貴族の称号としては訳しにくいですけれども、あえて訳すならば「卿」になりますかしら?)およびそれ以外のいくつかの称号を購入することができますわ。日本への配送は行わないということになっておりますけれども、実際には日本へ送ってほしい旨と支払いをPaypalで行いたい旨を問い合わせ欄からご相談すれば送料を含む支払総額や支払先を教えていただけますわ。親切ですわね!
価格は爵位称号そのものよりもむしろ領地名の方に紐づけられているようでして、例えば同じFürst でも”von Lilienthal“なら19,95ユーロ、”von Königsberg”なら29.95ユーロで、ここに日本への送料とPaypal使用手数料が上乗せされて支払総額になるとイメージしていただければ結構ですわ。ちなみに2022年6月現在で19.95ユーロの称号を購入した場合、支払総額は25.65ユーロとなっておりますけれども、送料などについては変更になる可能性も考えられますので注文の度に支払総額をたずねるのをお勧めいたしますわ。
ちなみに、こちらから届くのは以下のような書類ですわ。証明書と領地名に関する小冊子が主ですわね。

   


さて、爵位称号を販売している主体の中には、そこが独立した国家である、もしくはその系譜を受け継いでいると称しているところもございますの。もっとも有名でかつ一定の実態があるのがシーランドですけれども、他にも例えばこんなところが爵位を販売しておりますわ。


5.GRAND DUKEDOM OF POMERANIA AND LIVONIA(https://www.royaltitles.net/)
 「ポメラニア・リヴォニア大公国」ですわね。ルードヴィヒ1世(Prince Ludwig I)を元首、彼の兄弟であるフェルディナンド(Prince Ferdinand)を継嗣とする亡命政府のようなもの…と主張しているようですけれど、まあミクロネーションと見なしてよろしいと思いますわ。実際、爵位称号を販売する以外の目立った活動は行っていない様子ですし…。ちなみにこちらで扱われております称号はLordからPrince Elector & Margrave (Kürfurst und Margrave)、すなわち「選帝侯にして辺境伯」まですべて同一価格の199ユーロ(送料として別に20ユーロ)だそうですわ。配偶者の方もご一緒にペアで申し込まれると299ユーロと少しお安くなる感じですわね。これまでご紹介した他の主体に比べて少々お高い価格帯になりますけれど、書類のみならず” Blue & Gold Neck Medal with Blue Ribbon”が付属するという特長がありますわ。見たところプール・ル・メリット勲章ですけれど。


6.Großherzogtums Ahlensteyn
 「アーレンシュタイン大公国」ですわ。これはeBayでこの国の紙幣や勲章(といってもメダル本体は紙に印刷されたものなのですけれども。コスト削減ですわね! SDGsですわ!)を販売している個人が創作した架空の国家で、本人が販売ページの説明欄でそのように言及したりしていますわ。称号としては"Edler von"が3ユーロ台で販売されておりまして、送料込みで2022年6月現在の日本円換算ですと概ね1000円強といったところですわね。ちなみにこちらはわたくしのお友達が実際に購入しておりまして、以下のような書類が届くとのことですわ。

     


いかがでしたかしら? 一口に「爵位を買う」と申しましても、ざっと調べただけでもこれだけの選択肢がありますの。シーランドだけですと入手可能なのは”Lord”、”Baron”、”Count”および”Duke”といったところですけれども(あとはナイトとしての敬称ですかしら?)、ドイツ系の称号などまで含めますとぐっと幅が広がりますわね! わたくしが見たところ、一番入手が難しいのは子爵に相当する爵位称号ですわね。「ポメラニア・リヴォニア大公国」での選択肢の一つとして以外には見た記憶がございませんわ…。

なお、一言申し添えておきますけれども、これらの称号はすべて民間称号ですわ。ミクロネーションがその「国家」の爵位と称して授与しているものであれ、それ以外の主体がある種の商標のような形でその使用を許可しているものであれ、いずれにしても月の土地を買うのと似たようなもので、公には概ね何の意味も持ちませんの。と申しますか、下手に公的な場所で通用させようとしたら軽犯罪法でポリスの御厄介になりかねませんわ。そこまで事態がエスカレートするようなことは滅多にないとは思いますけれど…。
まあ、こういう称号の購入と申しますのは、言ってしまえばちょっとしたごっこ遊びのようなものですわね。でも、たった数千円から数万円で生涯、あるいは子々孫々に至るまで(なにしろ一部の発行主体はそれらから購入した爵位について継承できるものと明言しておりますので!)楽しめるとしたら、それはとても有意義なお遊びではなくって?
この記事が、皆様のよりよい精神生活のために多少なりともお役に立てれば幸いでございますわ。それでは本日はこれにて、ごめんあそばせ!

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2 コメント

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Unknown (シキさん)
2023-02-17 23:29:10
質問ですが1.Consultingdigital.com(http://www.consultingdigital.com/adelstitel.php)でルーマニア(トランシルヴァニア)の爵位を買おうと考えていますがクレジットカードはVISAなら使えますか?
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Unknown (東條)
2023-09-21 00:18:20
>シキさん 様
お返事が大変遅れまして申し訳ない…!
そちらのサイトから自分で購入したことはありませんので確実に使えるかどうかは分かりません。
もしかしたら、Kontakt(http://www.consultingdigital.com/kontakt.php)のページから事前に相談しておくと話がスムーズになるかもしれませんね。
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