鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

埋もれた軍歌・その21 満洲国建国の歌

2014-06-13 07:49:41 | 軍歌
さて、6月もそろそろ半ばですがまだ私は就職先が決まりません。いけませんねえ。
まあそんなことは置いておいて、今回の軍歌に参りましょう。
今回ご紹介するのは「満洲国建国の歌」。はい、なんのひねりも面白みも無い曲名でございます。もっと頑張れ。
底本は昭和7年6月に発行された『時局の生んだ軍歌唱歌』という本で、まあぶっちゃけた話満洲事変の流行に乗って出版された本です。当然ながら、載っている歌も大体が満洲事変・満洲国関係の歌です。
で、この「満洲国建国の歌」は村岡樂童の作詞・作曲になるものです。この人は本来作曲畑の人で、満洲国初代国歌の作曲にも関わっている人なんですが、この「満洲国建国の歌」では作詞もこなして当時のレコード評者を驚かせてますね。


満洲国建国の歌(唱歌) 村岡樂童作詞、作曲

(一)東方(ひがし)日出づる国より黎明来(きた)れり
   おゝ凛たるその東雲(しのゝめ)に
   今ぞ明けゆく満蒙の蒼空(あをぞら)
   仰(あふ)ぎて讃へよ声朗かに

(二)東方日出づる国より力は来れり
   おゝ凛たるその力こそ
   統べと惠みを洽(あまね)く垂れて
   楽土の礎築かん為めに

(三)東方日出づる国より使命は到れり
   おゝ凛たるその使命こそ
   東洋平和の理想を楯に
   久遠の反映冀(ねが)はん為ぞ

(四)東方日出づる国より青雲(あおぐも)轟く
   おゝ凛たるその青雲の
   若き生命(いのち)に希望(のぞみ)は燃えて
   歓喜のその声天地に満てり



埋もれた軍歌・その20 征独の歌

2014-06-08 00:22:59 | 軍歌
このブログでの軍歌紹介も20回目。今回ご紹介する「征独の歌」は、昭和5年に兵書刊行会から発行された『新進軍歌全集』に載っていた軍歌です。大正時代を経てまだ満洲事変が勃発する前という微妙な時期に発行されているだけあって、中々面白い軍歌が載っています。
作詞者・作曲者はともに不明。同じ題名の詩は有本芳水や武石一羊によるものが確認されていますが、有本によるものは「ああ東海の日本国/建国以来の屈辱に/立ちて扶桑の精これる/正義の剣をひらめかせ」という句が入っているはずなのでこれとは別であることが分かります。武石による詩はまだ未確認です。


征独の歌

何を囀る独逸国 神をあざむき人を誣(し)ひ
平和を破りて世を乱す 傲慢無礼の怪鬚(かいぜる)王
神の憤(いか)りを知らざるか 世界の輿論を聞かざるか
汝が如何にあらぶとも 鷹に反抗(はむか)ふとびなるよ
萬騎五萬騎十萬騎 山野にはびこり寄(よす)るとも
春の野山の夷(えびす)狩り いざいざ来たれ独逸兵
恨(うらみ)は積もる二昔 吾(わが)忠勇の同胞(はらから)が
血潮に清めし遼東を 汝の汚がすにまかせんや
腰におびたる日本刀 肩に担へる村田銃
弱きを救ふ日本魂(やまとだま) 如何で汝を赦るすべき
天に叫べる声をきけ 義の鉾とりて禍(わざわい)の
悪魔の群(ぐん)を切りすてよ 平和の園(その)は開かれん
あな心地よや暴虐の カイゼルこらす時は来ぬ
二十年来忍びたる 恨みを報ひん時は来ぬ
神のさとしに導かれ 世界の声に送られて
懸軍萬里東洋の 平和の為めに義の為めに
若し彼をして勝たしめば 世界は暗(やみ)となり果てん
暗(やみ)のこの世に生きんより 波に沈まん野に消えん
軍人ならぬ吾(わが)肩も 銃を担ふに堪えぬべし
よし細くとも吾腕(わがかいな) 剣を振ふに足るならん
海には艨艟百余艘 陸には貔貅(ひきゅう)五十萬
おくるも国の誉まれなれ 噫(あゝ)忠勇の国民よ
子の従軍を老母(はは)祝ひ 夫の出征新妻(つま)誇れ
やがてカイゼルうち懲(こら)し 凱歌をあげて帰るなり


※貔貅:大陸における伝説上の猛獣。転じて、勇ましい兵卒の例え。


いやあ、凄まじいですね。こんなこと歌ってた国が10年しないうちに日独防共協定結んでるんだからまことに国際情勢は複雑怪奇。
まあ、戦争した国がその後接近すること自体はわりとよくある話ではあるんですが…閑話休題。
内容は第一次世界大戦を意識したものですが、題名などから見ても日本にとってこの戦いが「対独戦争」であったことが分かります。
で、日本にとって当時のドイツはかつて三国干渉で日本の権益を不当に奪い取った憎い国。欧州大戦は格好の口実、この機に乗じて積年の恨みを晴らしてやろう…というのがこの歌の主題ですね。一応「平和の為めに義の為めに」とか誤魔化してはいますが、最初の方で個人的(?)恨みをぶちまけてるのでわりと台無しです。
軍歌集に載っているということは一応曲がついていたと思われますが、音源があればぜひとも聞いてみたいところです。新規録音でも可。