『 閉店』を知ってからどのくらい時が経っただろう。
下駄箱を開けて目にするだけの靴。
夏が過ぎ少しひんやりとした空気を感じるようになって、
やっぱり履きたいなぁ…という気持ちになってきた。
それと、娘がいたくその靴を気に入っていて、
「ステキ!」
と褒めてくれていたことも何だか嬉しくて、
取扱っている店を探した。きっと修理も値が張るだろうな…と思いつつ。
そうして訪れた小さな靴屋さん。
そう…『 靴屋さん』と呼びたくなる雰囲気のその店はとても居心地がよく、
なぜそうなのかは店主が現れて納得した。
柔らかな物腰、温かい声、知識に裏打ちされた確かな言葉…。
履き古された靴を手に
「10年ですか…修理もせずによくもってくれましたねぇ」
と自分のことのよう。
そうして修理と、
革が伸びすぎてしまった靴の“今”を天秤に
かけること数十分、
店に来た時には考えもしていなかった
“買い換え”がコトンと“今”を押しやった。
その天秤は左右にゆらゆらと、ゆらゆらと揺れ、
やはり…と言った方がいいのだろう、
“買い換え”に傾いたのだった。
またこれからの十数年、
いや手入れを念入りにすれば数十年、
お気に入りの靴を履ける喜びは
どう表現したらいいのだろう。
新しい靴は数日後に入荷予定。
この店にまた来られる…と、
それもまた嬉しくなった。
☆紐の色と足先の素材が変わったけれど、履き心地はあの時のまま☆