オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

天国の駅

2015-02-08 | 映画

昭和45年6月11日、東京小管拘置所内で、一人の女死刑囚の刑が執行された。林葉かよ、47歳。

昭和30年春。結城つむぎの織女として、また美人としても評判のかよは、まだ32歳の女盛りであった。夫の栄三は傷痍軍人で、下半身マヒの障害者。しかも初夜を迎えないままに出征したため、嫉妬心のかたまりとなって、かよに辛くあたった。そんな彼女に目をつけて接近したのが巡査の橋本だった。満たされぬ日々に悶々とするかよと深い仲になるのに時間はかからなかった。妻の浮気を知った栄三は狂ったように折檻し、思いあまったかよは夫を毒殺。しかし警察はズサンな調べで脳内出血による死亡として処理した。
 栄三の死後、警察を辞めた橋本はかよの世話で東京の大学へ通わせてもらうようになった。そんなある日、橋本は東京から幸子という女を連れて来た。橋本は、かよとの噂を打ち消すために、幸子と仮の夫婦になるのだと言い訳をするのだが、かよと幸子は、橋本に騙されていたことを知り、手切金を渡して縁を切った。妙な連帯意識で姉妹のように仲良くなった二人は、錦谷温泉郷にたどりつき、かよは土産物店を開き、幸子は芸者として、人生の再スタートを切った。そして、結城の頃から、かよに想いを寄せていたターボという知的障害の一雄も、この地に住みついていた。大和閣の主人・福見は、かよに惹かれ、何かと援助を申し出た。橋本がかよに金をせびりに来た時も、福見は手切金として200万円を渡して追い返した。しかし、福見には精神病院に入院している妻・辰江がいる。そこで、ターボのかよに対する気持ちを利用して、かよに危害がかかるとそそのかし、辰江を殺害させた。邪魔者はいなくなり、福見とかよは晴れて結婚し、幸子も芸者を辞めて大和閣に落ち着いた。ところが、200万円を使い果たした橋本が再び舞い戻って来た。幸子は、やっと幸福をつかんだ自分とかよを、不幸におとしいれようとする橋本が許せなかった。殺すしかないと決心した幸子は、登山列車から橋本をつき落とそうとする。しかし、逆に谷底につき落とされてしまった。最愛の幸子を失ったかよは復讐のため橋本と会おうとするが、福見は許さなかった。かよは福見に過去の夫殺しを告白し、別れようとするが、福見は許さない。一方福見も、先妻殺しをそそのかしたターボの存在が邪魔になり殺そうとする。しかしターボの抵抗にあい、かよに手助けを求めたが、かよは逆に福見を殺してしまった。かよは自分を最も愛してくれていたのはターボであることに気づき、山越えの逃避行を図る。駅へたどり着いた時、結城の事件以来、かよを追っていた五十沢刑事が待ちかまえていた。
「何で二人も夫を殺した」と五十沢に聞かれ、「愛がほしかったんだと思います」と答えるかよだった。
 
 
ホテル日本閣事件という実際に起こった殺人事件をもとに作られた映画だ。小林カウという女性が引き起こしたもので、女性として戦後初の死刑執行を受けた。夫二人を殺した小林カウは性欲と物欲に支配された毒婦で清純派吉永小百合が演じること自体に無理がある。従って、実際の事件を相当脚色したため、話に無理がありすぎて、サユリストでなければ見ていられない代物だった。
実際の死刑囚カウは、美しいとは言えない中年女性。犯行自体も同情の余地なく、死刑になるのが当たり前。カウは罪を少しでも軽くしようと、担当捜査官に色目やスキンシップを計り、愛嬌を振りまいていたそうである。どうせやるなら、事実に沿った吉永小百合の汚れ役こそ見たかったが、世のサユリストたちは許さなかったかな?
 
 脚本は早坂暁。あの「夢千代日記」の早坂暁が書いたということで期待したが、肩透かしだった。小林カウという化け物のような犯罪人を脚色すればするほどチンケな人物になってしまう。唯一、エロ亭主として異才を放っていたのは津川雅彦。色気不足の吉永を補う津川雅彦のいやらしい演技が光った。それにしても見る価値の感じられない馬鹿馬鹿しい映画だった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿