~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

装具をしなければ50%の確率でカーブは悪化します No.2

2008-02-24 17:36:10 | 特発生側弯症と装具療法

前回、カナダでの臨床試験についての文献をご紹介しましたが、同様の臨床試験が
スゥェーデンでも行われており、その研究結果の概要を見つけましたので、ご紹介
します。ここに入手できたものは概要だけであり、文献全文ではありませんので
詳細までは説明できませんが、前回の研究と合わせて検討することは可能です。

このスゥェーデンの研究でも、やはりスウェーデンの子供達が、本来は治療すべき
患者であるにも係わらず非治療(装具をつけずに経過観察のみ)での結果がどうなる
か、ということに協力してくれた事によって、貴重な医学的データを私たち日本の
こどもたちは受け取ることができます。私たちは、先のカナダの研究とともに
この事実に対して謙虚に感謝しなければならないと思います。

 --------------------------------------------------------------------

思春期特発性側彎症を有する女子における装具療法の効果
Goteborg大学 スゥェーデン

思春期特発性側彎症286人の女子に対するSRS(米国側彎症研究会)基準による研究
において、胸椎あるいは胸腰椎カーブ25度~35度、平均年齢12歳7ヶ月(10歳~15歳)、
の患者の経過観察を行った。患者は、非治療(観察のみ)129人、アンダーアーム型
装具療法111人、就寝中の電気刺激治療46人である。
39人が研究から脱落した。残り247人(286人の86%)を骨成熟までか、あるいは治療
が明らかに失敗と判断し脱落するまで経過を観察した。治療失敗の定義は、カーブ
が初回のレントゲン撮影計測よりも6度以上進行した場合とした。
この定義を用いることで、装具療法患者111人中の17人(15.3%)が治療失敗、非治療
(観察のみ)129人中の58人(44.9%)が失敗、電気刺激療法46人中の22人(47.8%)が
治療失敗であった。統計解析により、今後4年間での治療効果について分析した
ところ、装具療法は74%の成功率、非治療(観察のみ)では34%、電気刺激では33%
であった。

 --------------------------------------------------------------------
(august03より)
前回のカナダでの研究でも、約50%の特発性側彎症の患者さんはカーブ進行が
ありませんでした。そして、このスウェーデンの研究でも、やはり約50%の患者
さんにカーブ進行は見られませんでした。
このふたつの研究により何が明らかになったかといいますと、特発性側彎症患者の
約50%ではカーブが進行しない患者がいる、という医学的検証が確実になった。
ということです。

逆に言いますと、装具療法をしなければ、50%の確率で確実にカーブは進行する、
ということです。そして、今回の研究においても、約85%の患者さんで装具療法が
効果あり、という成績が得られています。

つまり、患者さんにはふたつの選択肢があります。
ひとつは、装具療法により80~85%の確率で、6度以上のカーブ進行を防止するか
あるいは、50%の確率で装具なしの生活を選択するか、ということです。

蛇足的に申し上げるならば、
このように50%の確率で進行しない患者さんがいることにより、そくわんヨガでも
そくわん体操でも、あたかも効果があったかのような錯覚を皆さんは持ってしまう
ということです。
これは、確率の問題です。丁半ばくちと同じです。
患者さんを10人集めただけでは効果があるかどうかは見えませんが、
20人、30人、50人、100人と大勢集めれば集めるほど、そのうちの半分の患者さん
はカーブが進行しない → 治った というような奇跡を錯覚するわけです。

私たちは、海外のこどもたちが示してくれた善意を無駄にしてはいけないと思います。
装具療法は辛いと思いますが、でも、それを乗り越えることが海外の子供達の善意
に応える道だと思います。がんばってください。

 ..................................................................

Effectiveness of treatment with a brace in girls who have adolescent
idiopathic scoliosis. A prospective, controlled study based on data from
the Brace Study of the Scoliosis Research Society
AL Nachemson and LE Peterson
Department of Orthopaedics, Goteborg University, Sweden.

In a prospective study by the Scoliosis Research Society, 286 girls who
had adolescent idiopathic scoliosis, a thoracic or thoracolumbar curve of
25 to 35 degrees, and a mean age of twelve years and seven months (range,
ten to fifteen years) were followed to determine the effect of treatment
with observation only (129 patients), an underarm plastic brace (111
patients), and nighttime surface electrical stimulation (forty-six
patients). Thirty-nine patients were lost to follow-up, leaving 247 (86
per cent) who were followed until maturity or who were dropped from the
study because of failure of the assigned treatment. The end point of
failure of treatment was defined as an increase in the curve of at least
6 degrees, from the time of the first roentgenogram, on two consecutive
roentgenograms. As determined with use of this end point, treatment with
a brace failed in seventeen of the 111 patients; observation only, in
fifty-eight of the 129 patients; and electrical stimulation, in twenty-
two of the forty-six patients. According to survivorship analysis,
treatment with a brace was associated with a success rate of 74 per cent
(95 per cent confidence interval, 52 to 84) at four years; observation
only, with a success rate of 34 per cent (95 per cent confidence
interval, 16 to 49); and electrical stimulation, with a success rate of
33 per cent (95 per cent confidence interval, 12 to 60).

////////////////////////////////////////////////////////////////////
ブログ内の関連記事
「装具をしなければ50%の確率でカーブは悪化します」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/46e346ba22417bf3325fdf5e5445b5b4

(御願い:本ブログ内で使用している「整体」とは、特発性側弯症を医学的根拠を
示すことなく治療できると宣伝し、特発性側弯症という原因不明の病気で苦しんで
いる患者さんとそのご家族を「ビジネス」のために利用している一部の整体のこと
を示しています。そのような整体のために、多くの良識ある整体の方々が同列で
呼称されることは本意ではないかと思いますが、その点に関しては整体という業界
内で解決されることを期待しております。業界基準と倫理規定を持たれている
カイロプラクティックの方々は、もちろん含むものではありません)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 特発性側弯症用装具の販売に... | トップ | 医行為および医師法17条について »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

特発生側弯症と装具療法」カテゴリの最新記事