~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯症手術 前方固定法(anterior approach)の説明

2009-09-28 23:31:55 | 側弯症手術について
オリジナル投稿:2009年9月28日
追記:2017年11月13日 ☞青字


(添付画像は 下記URL [ Spine Universe ]より引用させていただいております)
  http://www.spineuniverse.com/displayarticle.php/article614.html

 プロゴルファー ステイシールイスが行った脊柱固定手術を「前方固定法」と
いいます。以前にも別のきっかけで「前方固定法」を記事にしたことがあるのです
が、これを機会に、しばらく集中的にこの手術法を中心として、特発性側弯症に
おける手術について情報の提供と説明をしていきたいと考えています。

私august03は、このブログ Step by stepのなかでこれまでも同じ発言をさせて
いただいてきていますが、私は一義的に手術を勧めることはしません。
当人にとっては辛いことかとは思いますが、第一には保存療法つまり装具療法に
ともかく励んでいただきたいと願っています。おそらくそれは二年以上にわたる
長期間の日々になると思います。基本的に一日20時間前後の装具装着は、この湿度
の高い、冷房の行き渡らない社会環境のなかでは過酷な日々だと思います。
しかし、手術はあくまでも最後の最後の手段です。それが怖いから、危険だから
避けた方が良いというのではありません。側弯症手術に限らず、身体にメスを入れず
に済ませられる治療方法がある限り、私はどういう病気の治療に対しても、一義的
には保存療法に励むべき、というスタンスです。
そして、残念なことですが、それが奏功せず、手術が最良の方法という結論がださ
れたならば、今度はできるだけ時間をおかずに手術に臨むべきと考えます。
手術というものも、タイミングが大切だからです。側弯が悪化しているとはっきり
したならば、それは元に戻ることはない。と考えるべきです。

この日本の側弯症をめぐる社会環境/医療環境が大塚整体をはじめとする側湾整体
のために大きくゆがめられ、いまだにそれらのサイトを見ると、あたかも全ての
側弯症が治療...元のようにまっすぐになる。という「錯覚」を抱かせる言説を
弄していることが、この日本における側弯症治療をゆがめている元凶です。
欧米ではそのようなサイトによる弊害を克服するために多大な労力と時間をようし
ましたが、10年前にはその弊害を克服し、現在では側弯症治療方法に対する社会的
偏見の時代は終わりを告げています。
日本はそれに比べ10年遅れています。この失われた10年を早く取り戻さなければ
なりません。それが次世代のこどもたちへの、私たち大人の役目だと、私は信じます。

外山滋比古「思考の整理学」(筑波書房)から一次情報、二次情報というコトバを
援用させていただきますが、
病気の情報で第一に大切なことは、「事実」は何か? ということです。
この医学的事実を「第一次情報」と呼ぶとき、皆さんは誰からの情報が医学的事実
として正確であると考えられるでしょうか?
側湾整体は医学的事実を述べているでしょうか ?  そもそも医学を学んでいない
ものがどうして病気を語れるのか ?
さらには、医学を学んでいないものがどうして病気の治療に手をだせるのか?
という法的問題も実はそこには発生しているのですが、ここではあくまでも情報
という面にだけ絞って話をすすめることにします。

事実を一次情報と呼ぶとすれば、二次情報はその説明/解説ということになります。
一次情報が間違っていれば、当然ですが、その説明/解説も間違い、ということです

側湾整体の得意な手口が、「患者さんの写真」や「家族からの感謝の手紙」という
ものですが、これは一次情報でしょうか? 二次情報でしょうか ?

写真は何を語っているのでしょうか? 医学的事実でしょうか? 仮に事実とすれば
それは何を示した事実でしょうか? 患者さんが治癒したという事実を示している
のでしょうか? なぜそういえるのでしょうか? 施術前後の写真で分かる?
そこには何が写っていますか? そこにあるのはある一瞬を撮影した瞬間的画像です

Step by stepの多くの記事を読まれている方はおわかりになっていると思いますが
側弯症とは、完全に治癒する/完全に進行がストップするとは限らないことが判明
しています。
患者さんにとってはショックな事実かもしれませんが、それが医学的事実です。
瞬間を切り取ってみたところで、何も意味がありません。
つまり、一次情報として言えることは、側湾整体では側湾症が治ることはない。
ということです。

側弯症は経年的に進行することがある、というのが一次情報であるとき、
二次情報つまり説明/解説として述べられることは、

 1.骨成長の終了とともに側弯カーブの進行も終了する患者さんもいる
 2.同上において、その後進行速度は遅くなるが年数をかけて進む患者さんもいる
  医学データとしては、毎年、平均0.5度から1度ほどと言われている。
 3.仮に0.5度/年とすれば、20年で10度、30年で15度、40年で20度とすれば
  たとえば、装具療法終了時20歳30度であれば、60歳のときに50度、
  70歳のときに55度、80歳のときに60度ということ。
  女性の平均寿命との関係で考えれば、60度前後でよほどの腰痛等の痛みが
  あれば別であるが、そうでなければ、おそらく医師は手術を勧めはしない
 4.つまり、特発性側弯症患者さんは、できるだけ早期に発見し、装具療法に
  よって、30度前後で抑えられれば、その後の人生においては、側弯症のことを
  心配する必要は基本的にはない

これが二次情報ということになります。
そして、もう一度一次情報に戻って医学的事実を述べますと、骨成長が終了以前に
側弯カーブの進行が40度を超えた場合、手術を視野にいれることになります。
50度を超えた場合、それ以降の進行速度はスピードを増すことが判明しています。
手術に踏み切るかどうかの最終判断は患者さん本人とご両親の結論にゆだねられる
わけですが、骨が成長を続ける余地があるということは、それは同時にカーブも
進行する。という理屈はいたって明解なことと言えます。それが骨成長終了後の
進行スピードとは比較にならないほどに速い、ということはお判りになると思い
ます。

二次情報としてもう一度整理しますと、

 5.骨成長終了以前に、40度以上は黄色信号
 6.50度を超えた場合は、カーブ進行速度が速まるため手術治療が第一選択肢
 7.20歳前後で50度を超えた場合、遠からず手術となる可能性
 8.平均余命にも影響するであろう

このような説明になります。

側湾整体は、「手術は失敗することもある」「手術で失敗すると下半身不随になる」
というような喧伝をして、手術に対する恐怖心をあおり、そのことにより、逆に
側ワン整体の施術があたかも安全で効果があるかのような「錯誤」を与えることに
なるわけですが、ここでもう一度、一次情報と二次情報に立ち戻って考えてみて
ください。
いま、あなたのお子さんが50度を超えていたとしたら、おそらくは10年以内には
手術をせざるえない状態にまで進行しているでしょう。10年ではなく、5年以内かも
しれません。
いま側湾整体の宣伝に騙されて、恐怖心から手術をしなかったとしても、やがては
ご自分のほうから手術をしてでも治して欲しい、と専門医師のところに駆け込む
ことになると思います。なぜそう言えるのか、それは一次情報がそれを示している
からです。

三次情報的な言い方をすれば、「医学を信じますか? 側湾整体を信じますか?」
ということになります。

 
本題に入ります。

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特発性側弯症に対する脊柱固定手術法は大きく分類しますと、どこの部位から脊柱
に至るか....つまり、どこの部位を皮切して矯正すべき骨に達するか (これをアプ
ローチといいます)の違いにより、大きくふたつに分類されます。

 背中の真後ろを皮切するアプローチ = 後方アプローチ(posterior approach)
 脇腹を皮切するアプローチ     = 前方アプローチ(anterior approach)

添付の写真は、前方アプローチを行った場合の皮切を示しています。

もう一点、基礎知識として覚えておいていただきたいのは、後方固定と前方固定
という用語の意味するところが何か、ということです。
これは、手術で用いるインスツルメンテーション(チタン製のロッドやスクリュー)
で脊椎のどの部位を固定しているかで後方固定とか前方固定という呼び方をしています。
図解したほうが理解しやすいので、この点も後日別途説明を加えることにします。

前方固定を行うか、後方固定を行うかは、主治医の先生の考え方や患者さんの状態
により個人個人で事情が異なることになりますので、ここではその点の説明は割愛
させていただきますが、どちらかが優れているとか、こちらのほうを推薦するとか
というようなそういう次元のことではなく、それぞれにメリットとリスクがあるも
の、という形でとらえていただきたいと思います。

前方固定の場合は、下記のようなメリットとリスクが想定されています。

  メリット - 皮切がひとめにふれにくい
       - 固定椎体の長さが比較的少なくできる
       - 矯正率が比較的高いと言われている

  リスク  - 癒合不全率に関するデータがまだ少ない
       - 呼吸機能に対する影響があるかもしれない
       - 万一、再手術が必要となった場合に困難を伴う

また前方固定を行う場合のもうひとつの特徴は、開胸術thoracotomy approachを
伴うことにより、リブハンプrib humpへの矯正が一度の手術で済ませることが
できる。というメリットがあるのですが、同時にこのアプローチを行うことによる
呼吸機能の低下という報告もあります。

(次回へ)

☞下記の医学文献はgoogleに「Rib deformity in scoliosis」を検索するとダウンロード可能です。
これは2003年に公表されたもので、ちょっと古いのですが、リブハンプについて非常に大切なことが記載されています。
いま2017年は、当時とは手術技術に大きな進歩がありましたので、単純に当時の手術成績と比較することはできませんが、脊椎固定術を行っても、リブハンプが期待したようには減少しておらず、術後にコンプレインになるケースが米国では見られることが記載されています。この文献をダウンロードして、手術について先生と話し合われときには、患者さんの希望というものをしっかりと伝えて、先生の見通しなどと合わせて、事前に心構えをしっかりと持てることが大切と考えます。






☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?



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