引き続き下出先生の書籍より一部引用させていただきました。
(page115)......装具療法で側弯変形を矯正すると述べましたが、たしかに装具をつけているあいだは変形は矯正されますが、外すと時間とともにもとにもどってしまうという限界があります。だから装具療法の最終目標は進行性の側彎変形を進行させないというところにあり、矯正効果は期待できないのが現状です。そのため、変形が進行しない患者さんや、手術が必要な高度の側弯変形のある患者さんには装具療法は無意味です。そのうえ、装具自体がかなりきついもので、つける人にとっては決して楽なものではなく、むやみにつけるのはかえって有害なものともいえます。 (中略) 保存療法にはこのほかに体操療法や牽引療法といって体を長軸方向に引っ張るという治療法もありますが、十分な効果は期待できません。.......
(page164)....装具療法中は、とくに運動、なかでも腹筋や背筋を強くする運動をよくすることが大切です。背骨を支え、背骨の正常な形をつくっているのは背筋や腹筋の背骨をとりまく筋肉群で、これらが衰えると背骨の変形が進行しやすくなるだけでなく、体幹機能の発達全体にもよくありません。装具をつけるとややもすれば運動不足になりがちですが、意識していろいろな運動やスポーツに参加することを心掛けることが大切です。(略)....まわりの人たちも装具をつけさせることだけに執着することなく、心の支えになることも忘れてはいけません。そして、運動やスポーツに積極的に参加していくことを心がけたいものです。
☞(コメント by august03)
スクリーニング検査で側弯症の疑いがあるとされた患者さんの「全員」がカーブが進行するわけではありません。変形が進行しない患者さんの比率のほうが高い、ということをまず知識として押さえて欲しいと思います。そして、どういう患者さんにおいてカーブ進行のリスクが高いのか、ということを知っていただきたいと思います。病院での検査では、発症時(発見時)年齢、発見時のカーブの大きさ、骨成熟度、女性の場合は初潮の有無、近親者での側弯症の有無などが検討されることになると思います。若くて(例えば初潮前とか)、発見時カーブが大きく(例えば20度以上とか)、ご両親や兄弟姉妹などに側弯症患者さんが存在しているような場合は、カーブ進行が速いというリスク要因が大きいとして、レントゲン検査の頻度も多くなるかと思います。逆に言えば、リスク要因が小さい場合は進行速度も遅かったり、幸いなケースでは進行せずに骨成長時期が終わる、という事もありえることになります。ここに示したデータは、The natural history of adolescent idiopathic scoliosis (Indian J Orthop. 2010)からの引用ですが、リッサーサインが2-4で、発見時角度が5~19度の場合は、カーブ進行はわずか1.6%です。あるいは、発見時年齢が16歳でそのときの角度が19度以下の場合、カーブ進行は0%です。もちろんこれは調査研究データであって、全ての患者さんがこのようになることを保証するものではありません。しかし、どういう経過をたどるのだろうか? という目安(予想)にはなります。
少し視点を変えていえば、このデータで10~12歳の発見時角度が60度の場合、100%手術となっているわけですが、どうして60度になるまで気づかずにいたのか!! ということが問題点として浮かんできます。0度から一瞬で60度になるわけではありません。例えば、8歳時には30度であったかもしれません。30度前後であれば、装具療法を行うことで、そのまま30度程度に抑え込める可能性がでてきます。皆さんの地域の学校での側弯症検査(スクリーニング)がどういう頻度で行われているかはわかりませんが、学校まかせにするのではなく、家庭でもお子さんの背中を見ましょう、ということはとても大切です。その為にも、正しい知識の普及が必要です。
参考記事として
「特発性側わん症 発見時からの進行の確率とリスク」
1998年文献(ギリシア)スクリーニングで、少なくとも10度以上あると判明した特発性側弯症1436名のうち、839名がカーブ進行に関する調査に参加した。
これらのこども達は、平均3.2年間のうちに、1回~4回のフォローアップのために病院を訪れ、臨床症状とレ線撮影を行った。この3.2年間のうちで、カーブが進行したのは、14.7%だけであった。少なくとも5度以上自然に治っていたことが観察されたこどもが27.4%いた。
そのうち、80名(9.5%)は完全に消滅していた。患者の18%は、進行もしていないし、消滅もしていないという調査時と同じ角度のままであった。残り40%の患者も、カーブが5度以上進行しているような、大きな変化は見られなかった
☞(コメント by august03)要点:スクリーニングで側弯症と診断された患者さんが全てカーブが進行するわけではありません。自然経過として、消滅する・進行せずそのまま・進行が進むがマイルドカーブの範疇・手術を要する進行が進む、というタイプに区分することができます。そして、どのタイプであるかを見極める為に「経過観察」という処置が行われます。
「若年(学童期)性側湾症とリスクファクターについて」
2006年文献(フランス)若年性側弯症は、変化が激しく進行しやすいリスクをもっている
発育速度のピークはもっとも注意を必要とする時期である。成長と関連しているカーブの進行は、適正な治療のためにも注意深い分析が必要とされる。
☞(コメント by august03)要点:発見時の年齢、あるいは発症時の年齢と言うべきかもしれませんが、思春期特発性側弯症の中でも、例えば小学低学年、中学年時に発症した側弯症と、例えば高校生で発症した側弯では、その進行速度が異なってくることから、小学生や中学生で発症した側弯の場合は、特に注意深く観察していくことが必要。(高校生はしなくても良いという意味ではないので、注意願います)
「骨成長終了後に進行する脊柱側わん症 現実と向き合う為に」
関連記事:「子どもの背骨の病気を治す」
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
(page115)......装具療法で側弯変形を矯正すると述べましたが、たしかに装具をつけているあいだは変形は矯正されますが、外すと時間とともにもとにもどってしまうという限界があります。だから装具療法の最終目標は進行性の側彎変形を進行させないというところにあり、矯正効果は期待できないのが現状です。そのため、変形が進行しない患者さんや、手術が必要な高度の側弯変形のある患者さんには装具療法は無意味です。そのうえ、装具自体がかなりきついもので、つける人にとっては決して楽なものではなく、むやみにつけるのはかえって有害なものともいえます。 (中略) 保存療法にはこのほかに体操療法や牽引療法といって体を長軸方向に引っ張るという治療法もありますが、十分な効果は期待できません。.......
(page164)....装具療法中は、とくに運動、なかでも腹筋や背筋を強くする運動をよくすることが大切です。背骨を支え、背骨の正常な形をつくっているのは背筋や腹筋の背骨をとりまく筋肉群で、これらが衰えると背骨の変形が進行しやすくなるだけでなく、体幹機能の発達全体にもよくありません。装具をつけるとややもすれば運動不足になりがちですが、意識していろいろな運動やスポーツに参加することを心掛けることが大切です。(略)....まわりの人たちも装具をつけさせることだけに執着することなく、心の支えになることも忘れてはいけません。そして、運動やスポーツに積極的に参加していくことを心がけたいものです。
☞(コメント by august03)
スクリーニング検査で側弯症の疑いがあるとされた患者さんの「全員」がカーブが進行するわけではありません。変形が進行しない患者さんの比率のほうが高い、ということをまず知識として押さえて欲しいと思います。そして、どういう患者さんにおいてカーブ進行のリスクが高いのか、ということを知っていただきたいと思います。病院での検査では、発症時(発見時)年齢、発見時のカーブの大きさ、骨成熟度、女性の場合は初潮の有無、近親者での側弯症の有無などが検討されることになると思います。若くて(例えば初潮前とか)、発見時カーブが大きく(例えば20度以上とか)、ご両親や兄弟姉妹などに側弯症患者さんが存在しているような場合は、カーブ進行が速いというリスク要因が大きいとして、レントゲン検査の頻度も多くなるかと思います。逆に言えば、リスク要因が小さい場合は進行速度も遅かったり、幸いなケースでは進行せずに骨成長時期が終わる、という事もありえることになります。ここに示したデータは、The natural history of adolescent idiopathic scoliosis (Indian J Orthop. 2010)からの引用ですが、リッサーサインが2-4で、発見時角度が5~19度の場合は、カーブ進行はわずか1.6%です。あるいは、発見時年齢が16歳でそのときの角度が19度以下の場合、カーブ進行は0%です。もちろんこれは調査研究データであって、全ての患者さんがこのようになることを保証するものではありません。しかし、どういう経過をたどるのだろうか? という目安(予想)にはなります。
少し視点を変えていえば、このデータで10~12歳の発見時角度が60度の場合、100%手術となっているわけですが、どうして60度になるまで気づかずにいたのか!! ということが問題点として浮かんできます。0度から一瞬で60度になるわけではありません。例えば、8歳時には30度であったかもしれません。30度前後であれば、装具療法を行うことで、そのまま30度程度に抑え込める可能性がでてきます。皆さんの地域の学校での側弯症検査(スクリーニング)がどういう頻度で行われているかはわかりませんが、学校まかせにするのではなく、家庭でもお子さんの背中を見ましょう、ということはとても大切です。その為にも、正しい知識の普及が必要です。
参考記事として
「特発性側わん症 発見時からの進行の確率とリスク」
1998年文献(ギリシア)スクリーニングで、少なくとも10度以上あると判明した特発性側弯症1436名のうち、839名がカーブ進行に関する調査に参加した。
これらのこども達は、平均3.2年間のうちに、1回~4回のフォローアップのために病院を訪れ、臨床症状とレ線撮影を行った。この3.2年間のうちで、カーブが進行したのは、14.7%だけであった。少なくとも5度以上自然に治っていたことが観察されたこどもが27.4%いた。
そのうち、80名(9.5%)は完全に消滅していた。患者の18%は、進行もしていないし、消滅もしていないという調査時と同じ角度のままであった。残り40%の患者も、カーブが5度以上進行しているような、大きな変化は見られなかった
☞(コメント by august03)要点:スクリーニングで側弯症と診断された患者さんが全てカーブが進行するわけではありません。自然経過として、消滅する・進行せずそのまま・進行が進むがマイルドカーブの範疇・手術を要する進行が進む、というタイプに区分することができます。そして、どのタイプであるかを見極める為に「経過観察」という処置が行われます。
「若年(学童期)性側湾症とリスクファクターについて」
2006年文献(フランス)若年性側弯症は、変化が激しく進行しやすいリスクをもっている
発育速度のピークはもっとも注意を必要とする時期である。成長と関連しているカーブの進行は、適正な治療のためにも注意深い分析が必要とされる。
☞(コメント by august03)要点:発見時の年齢、あるいは発症時の年齢と言うべきかもしれませんが、思春期特発性側弯症の中でも、例えば小学低学年、中学年時に発症した側弯症と、例えば高校生で発症した側弯では、その進行速度が異なってくることから、小学生や中学生で発症した側弯の場合は、特に注意深く観察していくことが必要。(高校生はしなくても良いという意味ではないので、注意願います)
「骨成長終了後に進行する脊柱側わん症 現実と向き合う為に」
関連記事:「子どもの背骨の病気を治す」
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?