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~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

メラトニンと側わん症

2007-10-15 00:28:48 | 特発性側弯症治療方針
特発性側弯症を治療するために様々な研究が世界中で進められています。
そのひとつにメラトニンに着目したものがあります。
国立病院機構村山医療センターの町田先生は、国内でも早くから研究に着手されて
きました。松果体から分泌されるメラトニンの一次的な分泌低下によるホルモンの
機能低下が、何らかの形で側弯変形を惹起していると考えられているようです。
その発症機序に関してはまだ未知の部分が多いようですが、脊柱変形の病因にメラ
トニン、およびメラトニンレセプターが関与していることが示唆されているようで
す。
しかしながら、まだ研究段階であり、メラトニンの薬物治療あるいは、メラトニン
に作用して側弯症を治療する医薬品が開発された、という情報は確認できていませ
ん。順天堂大学整形外科ホームページには「特発性側弯症の原因に関する基礎的研
究によりメラトニンを内服させる臨床試験も始まっているようですが、まだ実用化
には時間がかかると思います。」と記載されています。

一方、ネット検索でメラトニンをひきますと、サプリメントとしてすでに提供され
ており、「脳の松果体が分泌するホルモン。不眠や時差ボケ、活性酸素の除去、
ストレスの緩和、脊椎側弯症の進行を止めるなどの効果がある。ただ、妊娠中や
授乳中の女性は、飲むのをひかえたほうが良い。」「メラトニンは、夜間に脳の松
果体(しょうかたい)で生成され、血液中へ分泌されるホルモンです。人体では、
睡眠や体温の上下動など、24時間周期のバランスに影響してるホルモンとされてい
ます。メラトニンは、睡眠のバランスを整えてくれますので、不眠や時差ぼけなど
睡眠障害が起きた時に服用すると効果があるとされます。アメリカでは栄養補助食
品として一般に流通しています。でも、一時的に使用するのは問題がありません
が、ホルモンですので常用は避けるべき、また、妊娠中や授乳中は飲むべきではな
いとされています。他にもメラトニンには、脊椎側弯症の進行をとめる、活性酸素
を除去するなどの効果が期待できるホルモンです」 という広告文を見ることがで
きました。

しかし、サプリメントと医薬品とは似て非なるもの、と考えたほうが良いと思います。
メラトニン自体は医薬品扱いのホルモン製剤ですので、医薬品として承認を得たも
のは病院で処方してくれるかもしれません。またメラトニンの欠乏等も病院で検査
することは可能のはずです。

メルクマニュアルには、「可能性のある副作用: メラトニンを服用して30分後に、
眠気が生じ、1時間ほど続くことがあります。長期間使用した場合、メラトニンが
安全であるかどうかについては不明です。理論的には、動物の脳由来のメラトニン
を服用すると、ウイルスまたはプリオン感染症が起こることも考えられますが、
人工的に合成されたメラトニンからの感染は考えられません。頭痛や一時的なうつ
が報告されています。ふさぎこんでいる人がメラトニンを服用すると、症状が悪化
することがあります。メラトニンは医師の指示の下で服用すべきです」と記載され
ています。

患者さんにとっては、わらにもすがりたい思いではありますが、先生とよく相談
してみることが大切です。


書籍「メラトニン研究 最近の進歩」より
.....わが国では、医学の立場から、メラトニンの基礎研究および実際の臨床場面
における効果について、独自の研究が積み重ねられ、多くの成果が得られて
きた。そして、ここにその全てがまとめられた。メラトニンの真の姿を解き
明かしたわが国初の学術書......

添付写真は、この本の一章を書かれている町田先生の目次です。
また、下記は学会発表から引用しました。


特発性側弯症における骨量減少について:松果体摘出鶏モデルでの検討
国立病院機構 村山医療センター 整形外科 町田 正文

【目的】最近の報告によれば思春期特発性側弯症女児の27-38% に全身性骨量減少が
みられ,骨量の減少は側弯進行の危険因子であるとされている
(J. Bone JointSurg. 87Am:2709-2716, 2005)が、本症における若年期骨量減少の
発生メカニズムはいまだ不明である.今回これまで特発性側弯症モデルとして用い
てきた松果体摘出ニワトリの頚椎および胸椎の骨微細構造をマイクロCT にて検索を
行い,骨量減少あるいは骨粗鬆症様変化の有無について調べ,メラトニンとの関連
性について追及した.
【対象および方法】白色レグホン種の雌ニワトリ30 羽を松果体摘出群〈20 羽〉
およびsham 群〈10 羽〉の2群に分け、術後毎週麻酔剤の過剰投与によるを行
い、X線撮影にて側弯変形の有無および評価を行った。摘出した第7 頚椎および胸椎
(頂椎)椎体の骨微細構造をマイクロCT により解析を行い、皮質の厚さ、骨梁数、
骨梁の太さ、骨梁間距離などのパラメーターを頚椎および胸椎(頂椎)椎体の
右側,および左側の半分、あるいは凹側、凸側半分を比較した。
【結果】sham群の全例に側弯変形はみられなかった.松果体摘出群では摘出後3 週
より側弯変形がみられ、徐々に増強傾向にあった.マイクロ CT による骨微細
構造では,sham群では海綿骨の緻密化が徐々に増強傾向にあり,左右1/2 の比較で
は統計学的相異はみられなかった.一方,松果体摘出群では摘出後1週ではsham
群との相違はみられなかったが,側弯変形が認められない摘出後2週の椎体の骨微細
構造には骨粗鬆症様変化が頸椎および胸椎に認められた。一方,松果体摘出
群での椎体左右半分の変化はTb. N, BV/TV に認められ,とくに皮質骨の厚さは凹側
が肥厚していた.
【考察】今回認められた骨粗鬆症様変化は局所の頂椎のみではなく頚椎にも同様に
認められ,全身性の骨変化として捉えられた.メラトニンの主な作用は概日
リズムの制御と抗性ホルモン作用であり,メラトニン欠乏によるエストロゲンの
低下によって骨量減少あるいは骨粗鬆症様変化がおきたと考えられる.
【結語】思春期特発性側弯症において,側弯変形の進行と骨量減少にメラトニンの
低下が関与していると考えられた.

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