~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

お母さん方へ : 千葉大学MRI調査報告 - 世界トップレベル大学の脳外科医レビュー報告 : 特発性側弯症の影に隠れた重篤な病気 (お母さんの愛情は専門医師のいる病院にお子さんを連れていくことです)

2018-03-20 12:24:45 | 側弯症と脊髄空洞症
追加記載:2018年3月20日

本当に側弯症を勉強した専門医であれば、ここに示す医学論文は十分に勉強しているはず。
真の医学情報を患者さんならびにそのご両親に提供せずに、民間療法者に協力するその姿勢が、
私には信じられません。


     お父さん、お母さん、

     お子さんの病気を治療するのは、

     民間療法者やそれに協力する整形外科医ではありません。 

     本当の側弯症専門医師のいる病院に行ってください。




ふたつの医学報告をご紹介します。

1996年 英国
S.C. Evans 「MRI of Idiopathic Juvenile Scoliosis. a prospective study」
 プロスペクティブ研究-幼児特発性側弯症患者におけるMRI検査

・4才から12才、31人の幼児期特発性側弯症患者に対してMRI検査を実施
・8人(26%)に脊髄異常を確認
・これに対処したうえで、側弯症治療を実施。
・幼児期特発性側弯症患者に対しては、MRI検査は必須であると考える。


1998年 米国
Gupta, Purnendu 「Incidence of Neural Axis Abnormalities in Infantile and Juvenile Patients With Spinal Deformity: Is a Magnetic Resonance Image Screening Necessary?」
Spine: January 15th, 1998 Volume 23 Issue 2 p 206–210

・1992年~1996年のあいだに治療した 新生児から10才までの側弯症患者34人
 に対するレトロスペクティブ研究
・ならびに新生児から10才までの側弯症患者64人に対するプロスペクティブ研究の報告
・34人中の6人17.6%に、また64人中の13人20.3%に脊髄異常があった。
・乳幼児に限っていえば、6人中の3人50%に脊髄異常があった。
・乳幼児から小児における側弯症患者ではMRI検査は必須であると考える



 特発性側弯症という病気には、「自然緩解」する場合があることが知られています。
 その割合については、当ブログでも記載していますので、そちらを参照ください。

 残念ながら、10年以上前は現在のようなインターネットは普及しておらず
 また民間療法者の危険性を直接皆さんに訴えるホームページもブログもありませんでした。

 医学情報を知ることのない多くの側弯症のお子さんもつお母さんがたが、
 民間療法者のもとに駆け込みました。

 なぜなら、その民間療法者自身も真の医学データを知ることもなく
 目の前で、曲がった脊椎が緩解していく姿をみて、「自分の施術・療法」が効果を得た !と
 錯覚したのでしょう。

 その当時の多くの整形外科医師も、特発性側弯症にそのような特徴があること
 自然緩解する患者が一定の比率で存在する、という知識を得ていませんでした。

 
 2018年という現在において

 正しい医学情報にもとづかずに、「側弯症は治る」と宣伝する民間療法者に
 協力する整形外科医師がいることが非常に残念でなりません

 その民間療法者の特発性側弯症ビジネスモデルを模倣している整体やカイロが
 インターネット上に数多くの宣伝広告、偽医学をまき散らしているのを見るにつけ
 憤りを感じます

 その特発性側弯症ビジネスモデルに乗ろうとしている理学療法系の人たちの
 発言を読むたびに、皆さんの知識、技術、経験の進むべき方向は違うのでは?
 と感じます。

 特発性側弯症は、〇〇療法や、施術や、体操で、「治る」

 .....治れば一番良いのでしょうが

 残念ながら、

 そのようなものではありません

 お子さんは、本当の意味で、特発性側弯症を知る専門医師のいる病院に

 連れていってください



ブログ内参考記事「側弯症の原因のひとつとしての Neural Axis Abnormalities



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  側弯整体の無責任な言葉で、こどもたちを危険な目に合わせないで下さい




 この記事では思春期特発性側弯症患者さんへのMRI検査の重要性について記載しています。
 今回、千葉大学による同様の調査報告を見つけましたので、ここにご紹介します。

2005年千葉大学
Spine (Phila Pa 1976). 2005 Jan 1;30(1):108-14.
Preoperative MRI analysis of patients with idiopathic scoliosis: a prospective study.
(プロスペクティブ研究:思春期特発性側弯症患者-術前でのMRI検査分析)
Inoue M, Minami S, Nakata Y, Otsuka Y, Takaso M, Kitahara H, Tokunaga M, Isobe K, Moriya H.



要約しますと、

・思春期特発性側弯症患者へのMRI検査を実施することで、脊髄における異常の発見が
 増えてきている。
・脊髄空洞症やキアリ奇形を有している側弯症患者さんでは、側弯症治療に先立って
 そのような異常の有無を確認し、もし異常を発見した場合には、それにどのように
 対応していくかを検討・対処したうえで、側弯症自体の治療を実施することが
 重要である。
・思春期特発性側弯症患者250人をMRIで検査。44人(18%)に脊髄に異常を認めた。
・手術も含めこれら脊髄異常への対応を行ったことで側弯症に対する手術自体も
 無事行うことができた。


「側弯症は治る、側弯症を(私は)治した」という安易な発言で、患者さんやご両親に
アピールしている民間療法者、さらには、その民間療法者を援護・協力している
整形外科医がいますが、彼らの発言にはどこにも、側弯症の影に隠れている「脊髄関連の
病気」については一切触れられていません。側弯症を専門とする整形外科医師ならば、
当然、知っているはずの医学的事実について、患者さんがたに注意喚起することもなく
民間療法者の施術のすばらしさだけを文学的に表現する。

この構図は、先にご紹介した赤ちゃんに施術して死亡事故を発生させた「民間療法者と
その協力医師」の関係とも言えるでしょう。
民間療法を絶賛したその共著者の医師は、事故後、一切発言せずに素知らぬ顔をしている
ようです。

医師の責任とは、どこにあるのでしょう ?


 人は弱い生き物です

 目の前に、自分が「欲しい」と切望していた「水」が現れたら

 その本当の中身を確認する前に、思わずその水をすくって飲んでしまいます

 ましてや

 医師(メデイカルドクター)が、この水を飲めば病気は治りますよ、と言ってくれたら

 何の迷いも、躊躇もなく、その水を飲み、

 そして、その水に病気治療の全てを賭けるでしょう


 医師の責任とは、どこにあるのでしょう .......


august03

追加記載:2018年3月19日


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下記は2018年3月15日追加

 韓国 Ulsan University Hospital (ウルサン大学病院)で 思春期特発性側弯症374名に対する
MRI検査の結果その6% (100人あたり6名)に脊髄空洞症等があることが判明し、脊椎固定術にさきだって
 対応できた。という2017年の医学報告(Asian Spine Journal 2017, 11(1))を見つけました。



 同調査を行った韓国の先生がたは、思春期特発性側弯症患者に対して、ルーティンな検査として
MRI検査を行うことが患者の安全にとって大切であることを論文の中で述べています。



 
 ☞ 特発性側弯症患者さんの検査における MRIの重要性は、下記の米国の脳外科の先生がたも
述べているわけですが脊髄異常の発生は、今回の韓国のデータからも証明されているように、
人種差とかを越えて、この病気の特徴のひとつとして 10%前後 (100人の患者のうち10人前後) 
に発見されうることがわかります。

   このようなデータから言えることは、

   1. 医学上の事実は、各国での調査・研究・追試験・検証などによって、「事実」が見えてくる

   2. 特発性側弯症患者さんの検査では MRI は重要であり、MRI検査を受けることができる
    思春期特発性側弯症を専門に診ている医師の勤務する医療機関を受診することが、
    お子さんを守る上で とても大切
 

august03



下記は前回までの記載分
 
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初回記載:2018年2月27日
追加記載:2018年2月27日09:30



[ 思春期特発性側弯症患者さんの10人にひとりには、

MRI検査により側弯症の影に隠れた病気が発見されます。

側弯症治療にはまずこの病気を治すことが重要です。
]



 思春期特発性側弯症で、コブ角20~40度の患者さんの場合、その約50%は進行性ではありません。
 (さらに装具療法により70~80%は進行が抑制されます。23時間装着では90%が抑制。)

 ですから、側弯整体の民間療法や体操療法を頼って通った患者さんは、あたかも「それ」によって
 側弯症が治ったように錯覚します。 民間療法者なども、その医学的現象を知ってか知らずか
 あたかも自分達の「それ」によって側弯症を治したかのように信じ込んでしまい、
 さらに広告宣伝に力を入れています。

 思春期特発性側弯症の原因が不明であるがゆえに、患者さんは、そして患者さんが「こども」である為に
 そのご両親が「治したい」の一心で、ネットを検索し、あるいは「出版された本」を見て
 それらの実施者のもとに行く、という構図があるわけですが、それがもたらす危険性に目を向けて
 いただく為にこれを記載しています。

 今回、新たに見つけた情報は、2017年発表という最新のものであり、
 世界的に有名なコーネル大学脳神経外科医師をはじめとする、ペンシルバニア大学脳神経外科、
 テンプル大学脳神経外科等の脳外科医師等により執筆された医学論文からです。 

Wikipediaより

-コーネル大学:アイビー・リーグを構成する一校であり、世界屈指の名門大学として不動の地位を確立している。特に機械工学、生命科学、物理学、建築学、造園学、コンピュータ工学、経営学、医学、農学分野は著名である。世界における大学ランキングでは、Webometrics Ranking of World Universitiesで2015年度は5位にランクされ、またノーベル賞の全部門で受賞者を輩出する等、研究・教育の両面において世界最高水準を保持している。


 この論文が掲載されているのは「 NEUROSURGICAL FOCUS 」という脳神経外科学専門誌であり、
 この専門誌は、オープンアクセス誌とは異なり、編集に責任を持つドクターがその氏名を公表していることを私たちも
 インターネット上で確認することができます。

 つまり、しっかりとした学術知識を持った先生がたが執筆した論文を、しっかりとした裏付けのある
 査読を行う専門誌によって発表された論文、ということです。


この論文からは多くの情報を得ることができましたが、ここでは、側弯症の影に隠れているかもしれない
別の病気に絞って記載します。



◇ Ajit Jada et al: Evaluation and management of adolescent idiopathic scoliosis: a review
  Neurosurg Focus 43 (4) E2, 2017
  思春期特発性側弯症の評価と治療法: レビュー報告

 要点・これまで思春期特発性側弯症の患者では「痛み」はないもの。
   というのが常識的に存在していた。
   痛み、神経学的欠損、神経根症候、運動障害、腸あるいは膀胱失禁、感覚異常などは
   まれなものである。しかし、これらの症状があった場合は、医師は側弯症の影に存在する
   別の病気を考慮すべきである。


   ・(同論文は Ramirez等による「The prevalence of back pain in children who have
    idiopathic scoliosis」を引用していることから、ここにその内容を紹介します)

   ・思春期特発性側弯症患者2442人の調査から
    -23% 560人が初診時に腰痛を訴えていた。 さらに9% 210人が経過観察中に腰痛を訴えた

    -この腰痛は、次の要素と関係していた・15才以上・リッサーサイン2以上・初潮は終わっている 
     ・過去になんらかの傷害

    -この腰痛は、性別・家族履歴・脚長差・カーブの大きさ等とは関係していなかった

    -さらに精密に検査をしたところ、560人のうちの 48人(9%)に病理学上の症状があった。

     脊椎すべり症あるいは脊椎分離症

     ショイエルマン病性脊椎後弯(scheuermann kyphosis)

     脊髄空洞症

     椎間板ヘルニア

     水脊髄症

     二分脊椎

     脊髄内腫瘍

    -痛みのある左カーブの胸椎側弯症や神経症状のある患者は、なんらかの病気を有している
     可能性がある。
  
    -思春期特発性側弯症患者は、十分な検査を行い経過観察期間を通じて適切に診断を
していくことが重要

    -痛みを訴える患者で一般的な原因は、類骨骨腫(osteoid osteoma)

    -レントゲン撮影はもとよりのこと、MRI検査は全ての側弯症患者において実施すること



(メモ:類骨骨腫 主に10∼20 歳台に発生。脊椎(後方要素に多い)脊椎発生例では腰背部痛や
側弯をきたすことがある。下写真参照)








 ☞このStep by stepを読まれ、もしこの内容に興味を持たれる先生がおられましたら、
  ぜひとも下記の文献も入手されることをお薦めしたいと思います。

  Davis Jon ; Indications for Magnetic Resonance Imaging in Presumed Adolescent Idiopathic
  Scoliosis. JBJS oct 2004 volume 86 Issue 10, p2187-2195

    ・MRI検査をすることで、思春期特発性側弯症患者の約10%に脊髄に異常を発見
 
    (写真C2は、MRI検査で発見された水脊髄空洞症)



Jin Sup Yeom; Scoliosis associated with syringomyelia: analysis of MRI and curve progression European Spine Journal Oct 2007 volume 16 Issue 10 p1629-1635


Hojjat Hosein; Clinical Finding and Results of Surgial Resection of Thoracolumbar Osteoid Osteoma. Asian Spinal Journal 2014, 8(2) p150-155


Sonia F calloni; Back pain and scoliosis in children: When to image, what to consider
Neuroradiology Journal vol 30.Issue 5, 2017.


(comment by august03)

・「側弯症の病院選択」において、手術をすることの可能性を考慮して「(思春期特発性)側弯症専門医師」のいる病院で
診てもらうことをお薦めしました。

・これらの専門中の専門と言える病院で診てもらうことの最大のメリットは、これらの病院の先生がたは
 思春期特発性側弯症の患者さんの「診察」に長けている。ということです。
 今回ご紹介した米国の脳外科医師が指摘しているように、さらに掲示文献においても指摘されていることは
 側弯症は脊柱がカーブするだけではなく、その裏には、さらに治療を必要とする病気が隠れていることがあり、
 その割合は、患者さんのうちの10%に発見される。とのこと。

・これらの病気を発見できるかどうかは、お子さんの生死にも関わってくることです。

・そして、これらの病気を発見するには、MRI装置やCTが必須であり、そして熟練した専門医の知識と経験が必要、
 ということになります。 この米国脳外科医は「全ての思春期特発性側弯症患者は MRI検査をすること
 と指導しています。


・O整体を始めとして、思春期特発性側弯症ビシネスモデルは、ビジネスとして安定しており、
 これを捨てるのは死活問題でしょう。しかし、医学の進歩は、検査機器の発達とともに、側弯症の解明に
 様々な光を当ててきています。
 民間療法者や、体操で治ると喧伝している整形外科医の皆さんは、これらの文献で示されている医学的
 事実に対して、どのように考えるのでしょう?

・お子さんの病気を治したいと願っているお母さん、病気は「病院」で治すものですよ。
 MRIやCTなどのしっかりとした検査機器があり、熟練した経験と知識を有する専門医のもとで診てもらい
 治療してもらうことに努力するのが、お母さんの愛情ではないでしょうか。


 august03


関連トピックス:

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