~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

安全な脊椎手術には術中モニタリングは必須 : 電気生理の知識を有する医師は稀有な存在 (京都第一日赤・大澤先生)

2018-05-02 14:55:55 | 脊椎手術術中モニタリング

脊椎手術は決して簡単な手術ではありません。ヒトの全身の運動機能、感覚機能を司る脊髄をその対象とし、そして周囲には大小の動脈・静脈に取り囲まれた部位にメスを進めるわけですから。

ゆえに、(すべての手術がそうであるように) 脊椎手術を安全に執り行うには、医師の習熟した経験と豊富な知識は絶対必須となります。

それにプラスして、もうひとつ 多くの皆さんには耳慣れない用語だと思いますが、「電気生理学」という分野に精通しているかどうか、ということも見逃すことのできない重要なポイントとなります。

国内で脊椎手術を行う医療機関の大半には「脊椎術中モニタリング」装置が導入され、手術中の患者さんの脊髄・神経の安全に大きな役割を担っています。もしも、この医療機器を使用しなくても、問題なく脊椎手術ができるという医師がいたとしたら、その人はまさに「神ワザ」的手技のドクターと言えます。しかし、「ワザ」は「ワザ」であっても、ヒトは神ではありませんから、必ずミスを犯します。ヒトはミスを犯すリスクをもった存在であると認識している医師は、決して無謀なことはしません。リスクを最小にする為に、自分の技術を過信せずに、最先端の医療機器に頼るべきところは頼る。というスタンスをとるのがつねでしょう。

そして、さらに望むならば、整形外科医が「電気生理」を学び、そのなんたるかを熟知していてくれるならば、患者にとっては最良の医療環境ということになると思います。

日本国内ではこの電気生理の分野が整形外科医の手から離れて、神経科やあるいは検査技師の皆さんに委ねられている。というのが現実の姿でしょう。特に手術中に行う「脊椎モニタリング」を担うのは多くの場合、検査技師さんということになると思います。

カテゴリー「脊椎手術術中モニタリング」の幾つかの記事の中で、この辺りの事情や、安全なモニタリング手術のための要点などについて記載していますので、そちらも参照していただきたいのですが、術中モニタリングを実施する上で、ベストなシナリオは、執刀医である整形外科医師が「電気生理」に精通していることです。これは、“術中モニタリング”という医療機器を操作する上でも、さらにもっと重要なこととしては、モニタリング中にこの機械が示す様々な「脊髄や神経の反応」がどういう意味であるかを瞬時に理解できるかどうか、ということです。機械の操作は検査技師さんができます。しかし、機械が示した電気信号の変化が、手術を受けている患者さんの体の中の電気生理としてどういう意味を示しているかの判断は、技師さんにはできません。 手術中、電気反応に変化をもたらす要素は数限りなく存在します。麻酔も影響します。患者さんの血圧、体温も影響します。手術室にある他の多くの医療機器(からのノイズ)も影響します。そして、手術操作自体も影響します。

患者さんにとっての良い手術結果とは、「安全」であることはもちろんですが、側弯症であれば、できるだけ「真っすぐ」な脊柱を取り戻したいはず。そして「真っすぐ」を再建するためには、脊髄・神経にダメージを与えずに手術をすすめていくことが求められ、それには「術中モニタリング」が必須となります。

 

国内で、脊椎手術をされる先生で電気生理も得意とする、というドクターは非常に少ないのですが、その稀有な存在の先生が、京都におひとりおられましたので、ここにご紹介したいと思います。

 

 

◇京都第一赤十字病院  (京都脊椎脊髄なんでもクリニック)  大澤透部長

☞このふたつの医学論文は、電気生理を用いた(外来)検査法に関するもののようですが、電気生理という学問で興味深いのは、一般的に整形外科の検査ではレントゲンやCT,MRIなどの画像に頼るわけですが、画像では「見えない」ものが「電気生理によって見える」ということがあります。 例えば「腰痛」の場合、しばしば画像検査では原因部位が明確にならない、という現象が起こることがあります。そういう場合、電気生理検査を行うことで、ここが原因高位だ。と特定することができたりします。もちろん、画像と電気生理の両方が同じ部位を原因として特定してくれることがベストなわけですが。 

ですから、ふたつの医療知識と技術.....つまり画像と電気生理に秀でている医師、というものが、患者の立場としてはベストな医師ということになるわけです。

 

全国の学校で、脊柱側弯検診が実施され、もしかするとすでにコブ角50度以上で手術を.....と指導されている子ども達もいるかもしれません。どこの病院にいけばいいの?  と探されているご両親もおられるかもしれません。

病院選択は (私が述べるまでもなく) 非常に重要です。

そのとき、安全な手術という視点にたったとき、その医療機関に「術中モニタリング機器」があるかどうか、という確認はもとよりですが、誰がそのモニタリングを行っているのか、という切り口での確認もすることをお薦めしたいと思います。 そして、医師に向かって直接は聞きにくいことですが、執刀するその主治医が電気生理にも詳しいのかどうか、ということも質問して欲しいと思います。

ここで私が望んでいることは、日本の整形外科が発展していくうえで、先生方がなかなか学ぶ機会の少ない「電気生理」を、患者さんが話題にすることで、整形外科の先生がたの意識や状況が変わっていく。ということです。 ある意味、「食わず嫌い」的なものが「電気生理」です。でも、これを学ぶことが患者さんからの信頼をえるひとつの道ということになれば、多く整形外科医の皆さんも電気生理を学ぶことになるでしょう。それは翻って、患者さんにとっての安全につながることになります。

 

august03


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 脊柱側弯検診 - 二次検査連絡... | トップ | 世界に誇りうる日本の脊柱側... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

脊椎手術術中モニタリング」カテゴリの最新記事