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海外文献: Failure of Intraoperative Monitoring

2016-09-18 17:14:09 | 脊椎手術術中モニタリング
海外文献より
Failure of Intraoperative Monitoring to Detect Postoperative Neurologic Deficits: A 25-year Experience in 12,375 Spinal Surgeries.

・脊椎手術において術中モニタリングは手術を安全に遂行するうえで必須な作業となります。国内でも普及している技術です。しかし、まだまだ課題も多くあります。国内での課題はまた次回のテーマとさせていただきますが、ここでは日本以上に実践されている米国からの文献を一件ご紹介します。
・25年間、12375脊椎手術における経験 : 術中神経モニタリングで発見できなかった術後神経マヒについて
・これは、1985年から2010年での1施設における12,375脊椎手術の記録....これがどんなにすごいビックデータであるかをぜひともわかって欲しいと思います。 日本でこのような長期間にわたる、しかも膨大な臨床データを調査し、保管し、まとめるということができる医療機関はまず皆無でしょう。 医療技術事態に日米の差があるとは思いませんが、医療機関とその周辺の研究体制には雲泥の差があるのは歴然としていますし、それが残念ながら、新しい医療を切り開くという意味での日本の「遅れ」の原因であろうことは、誰の目にも明らかだと思います。
・この調査で述べられていることは、

-SSEP, DNEP, MEP などの複数の方法を用いて術中神経モニタリング12,375例を実施
-このうち45例(0.36%)で false negative (偽陰性)の症状が発生
(メモ:偽陰性とは、術中モニタリングをしている時には、異常は示さなかったのに、術後に「異常」が発見されることを言います)
-およそ82.2%(45例のうちの37例では) あきらかな偽陰性であった。
-45例のうち8例 (0.064%)は、回復不能な神経マヒが残った。
-統計学的有意差をもって、術中モニタリングで発見できなかった神経マヒは、回復不能な神経マヒとなる。

☞ 回復不能な神経マヒが残存した患者さんの疾患名と年齢は、次のとおり。
 ・脊椎下垂症 11歳、17歳、54歳
 ・変性性脊柱管狭窄 61歳、70歳
 ・フラットバック症候 69歳
☞ 回復不能な脊髄マヒが残存した患者さんの疾患名と年齢は、次のとおり。
 ・フラットバック症候 34歳
 ・外傷に多発骨折 18歳

☞ 神経モニタリングを勉強してきた私として、もっとも気になったのは.....あるいは安心したのは、これらの偽陰性であった手術で
 用いられていたモニタリングの方法だったのですが、それは DSEP,spontaneouse EMG, DNEP(descending neurogenic evoked potential) であり、triggered EMGや MEPでの偽陰性ではなかったことです。

☞ この文献で新たに勉強となったのが、DNEP(descending neurogenic evoked potential)なのですが、この方法を国内では見たことがなく
いいとか悪いとかではないのですが、こういうところでまた海外との「差」を見た思いがしています。


august03



☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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