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マイルドカーブの自然経過 :およそ70%以上は自然緩解(医学データより) Update

2017-12-06 15:51:19 | マイルドカーブ
初回記載:2017年11月6日
追記:2017年12月6日 藤沢市医師会調査報告を追加

追記:2017年12月6日15:40 長崎県立整肢療育園の報告を追加


軽度側弯マイルドカーブの70%以上は自然緩解することを医学データから示してきましたが、2011年の藤沢市医師会による調査報告をネット検索から入手しましたので、アブストラクトのみですが、ここにご紹介したいと思います。

引用「脊柱側弯症学校検診で発見された側弯症の自然経過」臨床整形外科 2011年46巻11号より

過去16年間に10°以上の側弯症で観察期間が12カ月以上の237例を対象に,最終観察時Cobb角が初診時から5°以上変化したものを改善,悪化とし,5°未満の変化を不変として評価した.
結果:結果は改善例16.5%,不変例61.6%,悪化例21.9%であった.
まとめ:初診Cobb角15°以上でRisser sign 0,1,2のものは進行悪化する傾向が大きく,経過観察するうえで一つの指標と思われた.




(comment by august03)
・このように過去から現在にいたるまで、洋の東西を問わず、医学データが積み重ねられることで「見えてくる」ものがあることをお分かりいただけると思います。 医療における「治療方針」というものの基本は、再現性のあるデータ (つまり信頼性のあるデータということになります)をベースとして、標準的な治療方針が定められていくことになります。

・(真の側弯である構築性)特発性側弯症は本当に難しい病気です。原因が不明であることから、なぜ70~80%では自然緩解が得られ、なぜ20~30%が進行していくのかは、未だに原因は特定できません。ただ進行リスクとしては、やはり発見時コブ角の大きさと、そして骨未成熟期がこの調査報告では示されています。

・重要なことは、このように発見された自然経過 (70~80%では自然緩解が得られる。20~30%が進行する)は、たった一人の医師が報告しているものではなく、何十年にもわたり、世界中の、多くの先生方が、研究調査を繰り返してきて、その中から「集約された結果」、つまり医学的エビデンスとなっている。ということです。
このエビデンスをもとに、先生方は、皆さんが経過観察に受診してくれることで、皆さんの側弯が自然緩解する傾向にあるのか、それとも進行性のものであるかを検査して診断していくことができます。

☞ここで皆さんの中には、待っているよりも、側弯整体で施術を受けたり、体操をすることで、その20~30%もゼロにできるのではないか?と思われる方がでてくるのは当然だと思います。何もしないよりも、何かをする(医学的には「介入」という言い方をします)ことは「プラス効果」を持つはずと考えるのは人間として自然な発想であり、ヒトがヒトとして進歩してきた「考え方の原点」だと思います。

行動することは誰にも止める権利はありません。ただ、第三者として述べさせていただきたいことは、側弯体操という行動をとったことで20~30%がゼロになったという医学上のデータは存在しません。 20~30%が、10%に減ったというデータも存在しません。この点については、Schrothシュロス体操 (カテゴリー側弯症と体操療法)に関するトピックスをどうか参照していただければと思います。



◇追記:2017年12月6日15:40 長崎県立整肢療育園の報告

上記で藤沢市医師会での2011年の脊柱検診報告を提示させていただきました。その中で、軽度側弯の中での進行リスクとして、リッサーサイン 0,1,2が述べられていましたが、同様の報告が他にもありましたので、追加いたします。


引用文献「5年間の側弯検査と有側弯児の予後」整形外科と災害外科 1991, 39 (3)
     長崎県立整肢療育園 末廣昌嗣

こちらの文献はさらに古いもので、1991年、いまから26年前のものですが、この中で、先生は脊柱検診において同じ子どもで期間をあけて2回レントゲン検査を実施した 155例について、その内容を分析しています。
要点としましては、

①初診時に軽度側弯であった 155例中、非進行137例(88%, 観察期間17.9カ月)、進行18例(12%,観察期間29.8カ月)  ここにも、非進行つまり自然緩解するというデータが示されています。

②進行するリスクとしては、年齢12歳以下とリッサーサイン 0,1,2 を示しており、これは藤沢市医師会の報告と重なるものです。このことからも、皆さんがご自分の(お子さんの)リスクを考える材料になると思います。






[現時点でのまとめ]
軽度側弯から進行するリスク要因として

 ・初潮前
 ・リッサーサイン 0, 1, 2
 ・年齢12才前
 ・(初診時コブ角の大きさ) .....影響としては、初潮/リッサーが大きいようです


august03



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初回記載分

     4. この「経過観察」vs 「体操療法」に対して、民間療法(整体、カイロプラクテック、ヨガ等)が
      介入し、インターネットを通じて患者(家族)に直接宣伝することが、混乱に拍車をかけている。
      民間療法者に対する対策が求められる。

      ・これら民間療法者を法的に規制するシステムが曖昧
       (法的に規制されないがゆえに「民間療法者」という定義とも言える)
     
      →広告宣伝等は規制対象であると考えるが、現実には野放図になっていると考える。
      →術前・後の写真を提示することによる確証バイアス
       (HP上での前・後の写真掲載は禁止することを厚生労働省が発表)


ここではマイルドカーブの多くが自然緩解することの医学データをご提示します。しかし、側弯専門医の診察・定期検査を受けなくてもいいということを説明するためのものではありませんので、ご注意願います。
ここでマイルドカーブが自然緩解するデータをご提示するのは、あくまでも「民間療法者」対策としてです。

スクリーニングで側弯症の疑いありとされた場合、必ず近所の整形外科医院にてレントゲン写真を撮り、10°~15°以上のコブ角が発見された場合は、次には側弯症専門医(医療機関)の予約をとり、診断を受けることをお薦めします。

◇2010年 韓国 Spontaneous regression of curve in immature idiopathic scoliosis - does spinal column play a role to balance ?
       骨成熟に至っていない特発性側弯症でのカーブの緩解

・169人の特発性側弯症患者を最低1年間フォローアップ
・平均年齢9歳
・平均フォローアップ 21カ月
・初診時全て 25°以下
・初診時全て リッサーサインは 0
・全員、何の治療も実施せず

・グルーブA 55人 : 最終観察時までに 5°以上 ないしは完全に回復した群
・グルーブB 70人 : 最終観察時までに進行も減少もなかった群
・グルーブC 44人 : 最終観察時までに 5°以上の進行があった群 →25°を超えたら装具療法

例 グループA : 初診時 15° → 調査時 7°
例 グループB : 初診時 14° → 調査時 14°
例 グループC : 初診時 16° → 調査時 26°

・169人のうち125人(55+70)が自然緩解したといえる。これは全体の 74% に相当する。









(comment by august03)
・思春期特発性側弯症患者 169人という人数は、データを見ていく上ではかなり信頼性の高い数値と言えます。
・上の2例のレントゲン写真が示すように、初診時から最終調査時(平均21カ月)で完全に真っすぐになった子どもや、側弯症とは呼べないほどに減少した子どもたちの実例です。
・この169人には、初診時から最終観察時まで、定期検査のみであり、施術・カイロプラクテック・側弯体操などは行われていません。
・仮に最終観察時のコブ角が、10数度であったとしても、あるいは20°前後であったとしても、それが骨成熟期に達していた場合の予後は安定したものであることは、これまでの医学データにより示してきたとうりです。
・先生がたはおそらく自然緩解を「治る」「治った」とは定義しないと思います。なぜなら、やはり基本は、その後も「定期検査」を受けることが大切だからです。定期検査を受けて、状態が確認できていることで、適宜な対応が可能となるからです。


また国内では、
◇1990年 特発性側弯症の自然経過

このデータに関しては「そくわんカーブが進行するリスク」を参照ください。



上記表は、オリジナル文献の数値を視認しやすいようにaugust03が作成したものです。
20°未満の約70%はカーブ進行が見られません。



また下記は装具療法によるアウトカムも含まれているかもしれませんが、明確ではない部分もあるため、定期観察のみで緩解した数値として推定してみました。


◇1975年 Scoliosis: A prospective epidemiological study

アブストラクトのみから
・フォローアップ期間 2年半
・(調査対象数は示されておらず)13.6%に側弯症
・このうち平均1年ほどで 22%は改善した spontaneous improvement occurred in approximately 22 per cent of those patients followed for an average of one year


◇1978年 Scoliosis: incidence and natural history. A prospective epidemiological study.

アブストラクトのみから
・26,947人 から 1,122人のデータを得た
・6~10° 男女比 1:1 20°以上 男女比 5:1
・603人を2年間フォロー 初診時20°の骨未成熟の患者の 20%では進行なし


◇1984年 The prediction of curve progression in untreated idiopathic scoliosis during growth

・対象727人 女子 575 (79%) 男子 152 (21%)
・480人(66%)は 平均26カ月(12~88カ月)のフォローアップで、カーブの進行も減少もなかった (不変)

・カーブが改善した78人を加えると、727人のうち558人 (78%)が 緩解したと言える。


◇1988年 Assessment of curve progression in idiopathic scoliosis

・85,622人をスクリーニングし、839人に10°以上の側弯あり
・このうち230人(27%)が5°以上の改善あり
・このうち151人(18%)がカーブの進行も減少もなかった (不変)

・改善した230人に不変の151人を加えると、381人(45%) が緩解したと言える。


◇2000年 Risk factors for idiopathic scoliosis: review of a 6-year prospective study.
アブストラクトのみから
・85627人 (9~15歳)をスクリーニング
・この中から10°以上の側弯を有する群1.7% (1456人)をフォローした
・399人27.4%が 5°以上の改善あり
・218人がカーブの進行も減少もなかった (不変)

・改善399人と不変218人、計617人 42% が緩解したと言える。


(comment by august03)
繰り返しになりますが、自然緩解する可能性があるから、定期検査を受ける必要がないと主張しているのではありませんこと、十分にご理解願います。

その昔、マイルドカーブの治療方針として「放置」という言葉が用いられたことがありました。

この「放置」は、いわば先の小池都知事の「排除」と同じく -使用すべき言葉を間違えた- ものと言えるでしょう。この一言の為に多くの患者さんのお母さん方は民間療法者の「側弯症は治る」「治せる」に飛びついていきました。ちょうどその時期は、パソコン通信サービスが広がり始めたときで、「側弯症掲示板」には多数の書き込みがあった時期でした。整形外科に行っても放置されるだけだ、側弯整体に行けば治してもらえる。うちの子どもは側弯整体で治りました。という書き込みが氾濫していました。

放置しているのではありません。定期検査をして、治療開始時期のタイミングを計っている。ということなのです。なぜなら、経過観察中に、上記の医学データが示すように「緩解」するケースが、とくにマイルドカーブでは多数見られるからでした。

マイルドカーブでは、自然緩解することがあります。ですから、民間療法者の施術を受ける必要はまったくありません。
大切なことは、必ず定期検査を受けて、状態を確認しておく。ということです。

august03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?



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