高知県立大学がん看護学領域修了生の会:アストラル

高知県立大学大学院がん看護学領域修了生のネットワーク作りと情報交換の場

インテンシブコースⅠ研修生8名に修了証書が授与されました!!!

2015-02-26 | 勉強会参加報告
平成26年度のインテンシブコースⅠは、10月26日(土)に開講し、約4か月間にわたる講義・演習と見学実習を開催してきました
4ヶ月間の集大成となる、実習の振り返りと事例検討会が2月22日(日)に行われました

1.見学実習の振り返り
各実習施設における学びを共有し、今後の看護実践への活用を検討することを目的に、8人の研修生がそれぞれ見学実習の記録や学びを持ち寄り、2グループに分かれて学びを共有しました。
研修生からは、見学実習を通して下記のような学びが挙げられました。

訪問看護ステーション
・利用者の状況に応じて臨機応変に対応するためには、限られた訪問の時間で情報収集を行い、限られた時間で多職種と連携をとる必要があると学んだ。そのためには看護師が予測的な視点を持ち、利用者のちょっとした変化を捉えたうえで多職種と情報共有することが大切である。
・利用者や家族の声を大切にし、関係作りを行うことが大切だと改めて感じた。

在宅療養支援診療所
・利用者や家族が行っていることを否定せず、相手の価値観を大切にした声かけを行っていた。また、「今までやってきた方法が間違っている」という言い方をするのではなく、「この方法が~をする上でもっと良いと思います」という風に、根拠をもとに提案をしていた。
・患者の苦痛を早急に緩和するため、メールや電話などを活用したタイムリーな情報共有を行っていた。

調剤薬局
・ただ薬剤を届けるのではなく、訪問時には内服の状況や、利用者の睡眠や食事、排泄など生活についても情報収集を行っていた。
・利用者の生活の様子やADLに応じて内服を分包したり、カレンダーに貼るなどの工夫を行ったり、物品を工夫するなどして、自宅で内服が継続できるように個別性を考慮した対応がなされていた。
・利用者や家族が生活で大切にしていることなどを否定するような形にならないように、薬剤説明や情報提供は少しずつ行っていた。

がん診療連携拠点病院
・在宅看護を続けていく上で必要となる、がん診療連携拠点病院の役割を理解することができた。
・緩和ケアカンファレンスは、医師・看護師・ソーシャルワーカー・薬剤師・栄養士などが情報共有する場であり、患者さんの今後の方向性について検討する場になっていることがわかった。
・緩和ケアカンファレンスでは、患者の生活の拠点がどこになるのかを考慮に入れた上で、市内でなくても継続して治療が受けられるように往診医や訪問看護を探し、個々の患者にあった療養環境を調整していた。
・キャンサーボードでは、治療方針を決める場としても活用されていることが理解できた。
・自施設のキャンサーボードにも積極的に参加していきたい。


実習の振り返りの様子
 


2.事例検討
事例検討では、がん患者や家族との関わりの中で研修生が困難を感じた事例を通じて、研修での学びを活用したディスカッションが行われました。
今回は、病院に勤務している研修生と、訪問看護を行っている研修生の2人から事例が提供されました。

1事例目は、入院時から在宅療養を希望していたが、訪問-外来-病棟の連携が図れずソーシャルワーカーが未介入であった事例について、以下の視点からディスカッションを行いました。
①どのような情報共有・連携ができるか
・患者が在宅を希望しているという情報をキャッチしたときから、患者の生活面をトータルでみることのできるケアマネージャーを入れておく必要があった。
・エンパワーメントモデルから考えてみると、意思決定の支援ではなく、「患者・家族とともに在宅療養生活の目標を設定し、共有する」というサポートが必要だった。
・在宅移行に向けた情報共有・連携を行う際、本人・家族の希望やニーズを大切にすること、カンファレンスを活用して早期から先を見通した調整をおこなうことが重要である。

②どのような援助ができるか
・家族の介護負担などを考慮し、時期を見極めながらデスエデュケーションを行う必要があった。
・患者と家族の意思や想いが統一できるように関わることが大事である。

事例検討を通して、研修での学びを活用しながら充実したディスカッションがなされていました。
教員からは、地域包括支援システムを構築する観点から考えても、在宅⇔病院の連続したケアサイクルを回していく必要があり、そのサイクルの中で患者の生活史や希望を中心とした関わりを重視する必要があること、在宅⇔病院のケアサイクルを円滑にするためには外来看護の機能の重要性が高まっていることなどが解説されました。
グループディスカッションを通じて、在宅移行を支援するための連携・情報共有システムを構築する必要があることを学ぶことができました。

2事例目は、疼痛の増強に伴って怒りを表出するために対応に困難を感じた事例が紹介され、以下の視点でディスカッションを行いました。

①どのような情報があると身体面と精神面がより理解できるか
・疼痛の出現状況(部位、程度、正常、日内変動、緩和因子、増強因子)
・がんや転移に関する詳細な情報          ・疼痛以外の症状の有無
・疼痛や鎮痛剤による影響(睡眠障害、活動性など) ・疼痛コントロールの目標はどこか

②在宅療養が継続できるようにどのように職種と連携をとり、どのような看護ができるか
・その人がなぜ怒りをぶつけるのかの理由を理解する必要がある。
・看護師が客観的かつ冷静な評価・対応を行い、精神科や緩和ケア医などの専門家につなぐ必要性について判断を行う。
・疼痛だけでなくその他の症状(睡眠、排泄など)についても評価をしておく必要がある。

研修生は、自施設での経験やインテンシブコースⅠでの学びをもとに、積極的に意見交換を行っていました。
教員からは、疼痛という一つの症状に目を向けるのではなく、他の症状にも目を向けてその人の身体を包括的にアセスメントしていくことが重要であること、精神面への援助を検討する際にもその人の生きてきた歴史を考慮した関わりが必要であること、の振り返りがなされました。
約4ヶ月のインテンシブコースを経験して、またさらに成長した研修生の姿をみることができました


3.閉講式
閉講式では、藤田佐和教授から修了生8名に、エールが送られました
そして、最後には、修了生8名1人1人に、修了証書が授与されましたこの研修を通じて多くの学びと仲間を得た修了生は、清々しい表情を浮かべながら修了証書を受け取っていました

閉講式の様子
 


修了生からは・・・
患者さんに後押しをしていただきながら参加してこの修了証書を受け取ることができてよかった
実践で活用できる技術を習得できたので同僚にも学びを伝えていきたい
このコースで出会った方との横のつながりを大切にして訪問看護をがんばりたい
といった感想と抱負が述べられていました

修了生は、日々の業務との調整を行いながら、約4ヶ月のインテンシブコースⅠに参加されていました
このインテンシブコースで得た学びをもとに、それぞれの立場からがん患者さんやご家族への看護の質の向上に貢献していってくださることを願っています


平成26年度インテンシブコースⅠ修了生と藤田佐和教授