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【マレーシア】バイオ燃料に熱い視線、新たな成長産業へ

2005年11月29日 | マレーシア/新嘉坡/インドネシア
 パーム油の生産大国であるマレーシアで、新たなエネルギー素材としてのバイオマス(生物資源)に注目が集まっている。バイオディーゼルやバイオガスへの利用・研究も進んでおり、成長産業としての期待も高い。7月には九州工業大学がマレーシア・プトラ大学(UPM)、連邦土地開発公団(FELDA)と共同で取り組むバイオガス実証試験場が完成。バイオディーゼルについても、政府は公用車への利用を来年1月からスタートさせるほか、民間企業も新規生産に向けた動きを加速させている。

 政府は来年1月1日からバイオディーゼルの公用車への利用を当初計画を1年前倒ししてスタートさせる。また、3カ月前に発表したバイオ燃料の製造・利用振興策では、バイオディーゼルを年間75万トン輸出し、17億リンギの外貨獲得を目標に設定した。

 こうした動きに対し、ジョホール州政府系投資会社のジョホール・コープは先ごろ、地元でのバイオディーゼル生産を巡り、欧州系企業と合弁交渉を進めていることを明らかにした。パーム油生産や川下部門のオレオケミカル(油脂化学)での優位性をアピールし、関連企業の誘致にもつなげたい考えだ。2,000万米ドルの初期投資を想定し、年産10万トン規模の工場を建設するという。

 このほか、農園経営のゴールデン・ホープ・プランテーションズが来年6月にスランゴール州バンティンで、IOIコープがオランダのロッテルダムまたはジョホール州パシルグダンでバイオディーゼルの生産に乗り出す。ゴールデンは年3万トンの生産を予定。一方、IOIコープは日本や韓国などへの輸出を計画しているという。

 ■日本企業にもチャンス

 日本貿易振興機構(ジェトロ)は現在、バイオ技術分野の産業支援の一環として、マレーシア企業と日本企業のマッチメイクに取り組んでいる。地元紙の報道によれば、先ごろアブドラ首相に対し、日本で開催されるバイオテクの展示会・フォーラムへのマレーシア企業の参加を支援する意向を伝えた。ジェトロ・クアラルンプール事務所は28日、NNAの取材に対し、「パーム油のエネルギー利用などをとっても、マレーシアはバイオテクノロジー分野の研究開発で先行してる面がある。たとえば健康ブームの日本と食品関連分野で手を組むといったことも考えられる」と期待を示した。

 ■パーム油廃液を再利用

 NNAは先ごろ、今年7月に完成したバイオガス実証試験場を視察した。場所はクアラルンプールの南西に位置するネグリスンビラン州。FELDAのパーム油精製所に併設して建てられた。約500立方メートル規模の発酵タンクで発生させたバイオガスを、20立方メートルのタンクに抽出する施設だ。油ヤシがうっそうとおい茂るプランテーションのなか、周囲にはメタンガスの臭いが充満している。

 パーム油の精製工程では、油ヤシの果房を果実と空房に分けた上で、果実を圧搾し、絞り出した原油をタンクに送り精製する。この際に果房の約80%が空房や廃液として廃棄される。廃液の主な処分方法には、巨大なため池(ラグーン)へ流し処理する方法と、上部に蓋のないバケツ状のタンク内で処理する方法がある。タンク内で廃液は炭酸ガスとメタンガスに分解し空気中に放出され、浄化された残りの廃液は河川へ流される。

 発生するメタンガスは炭酸ガスの21倍もの温暖効果を持つ。メタンガスの大気への放出を抑え、天然ガスとして利用できれば、温暖化対策にもなる。また、大部分が廃棄処分されている空房からは、微生物などによって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックや食用糖類の原料を取り出すこともできる。

 この試験場は、廃液からメタンガスを取り出して貯蔵するシステムを作り、発電などのエネルギー源としての利用や、空房の有効利用を実証するためのもの。今年2月の京都議定書の発効で、温室効果ガスの排出権取引が動き出しており、将来的には巨大市場が生まれる可能性がある。

 この日の視察に参加した東京電力火力部の末武悟氏は、「中東よりマレーシアからエネルギーを運ぶほうがコストが抑えられる。また、新たなビジネスとしての可能性もある。今はまだ様子見段階ではあるが、クリーンな次世代燃料として期待を寄せている」と語った。


 囲みのコラム

 バイオガスは高騰を続ける石油の代替エネルギーとして、また次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めている。マレーシアはその燃料源となるパーム油を年間1千万トン生産する世界屈指のパーム油大国。生産の際に排出される膨大な量のパーム油廃液と油ヤシ果実の空房の大半が廃棄物として処分されているが、九州工業大学、UPM、FELDAは共同で、資源としての再利用を目指して研究を進めている。この日の見学会には研究に携わる教授や学生、マレーシア天然資源・環境省や東京電力などの職員が多数参加し、施設の仕組みなどの説明を受けた。

(NNA) - 11月29日10時29分更新

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