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人&ライフ 金坂菊江さん

2006年08月03日 | コラム
 花見川区花園の自宅一室に山になった端布と縫いかけの小物が広げられていた。扇子入れだという。色とりどりにまるで花が咲いたようだ。しかしこれは序の口だった。。その後続々と巾着や手提げ、財布にティッシュケース。少し大きいものでショルダーバッグも登場。それもひとつやふたつではない。いくつものダンボールに丁寧にたたんで収められている。また部屋の片隅に立つ洋裁用のボディには「頼まれて」仕立てた女性用の上着が着せられていた。そう、何を隠そう花坂さんはこの道ウン十年の洋裁のプロ。洋裁だけではなく和裁歴の方はもっと長い。「おばあちゃん子だった」金坂さんは物心つくころから祖母の傍らで針を持った。長じては洋裁を学び22歳でワイシャツ職人と結婚。以来10年前に先立たれるまで夫唱婦随でシャツを縫い続けた。
「先に逝っちゃってぇ…」と横目で睨む先にはおよそ職人らしくない上品な笑みを浮かべる遺影があった。
あっけない夫の死をゆっくり悼む間もなく、ちょうどその頃から金坂さんは地域の老人会の活動が忙しくなった。次々に役が回ってくるようになったのだ。生来の穏やかさと明晰さから「代表」を務めるものも少なくない。そのひとつ「エルダ花見川」(高齢協)の活動では自宅を交流の会場として開放している。「金坂さんち」から2年前に「アカシア会」と改称し、老人会のメンバーや公民館活動で知り合った友人など十数人が毎月一度、金坂家に集まる。小物作りや紙芝居を楽しんだり、時には「ここでルンバを踊ることもあるのよ」と社交ダンスの練習場にもなるという。小物は「ちょいちょいと」ブラウス、バッグも「一日有れば」という手際の良さで溜まっていく作品は商品として店先に並ぶこともある。
   文 やまもとみどり

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