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人&ライフ 久保田真澄さん(声楽家)

2006年04月17日 | コラム
 1993年に日本音楽コンクールで3位となり、国立音楽大学大学院終了後はイタリアへ渡った。イタリア6年間で実績を積み、日本にその活躍の場を移した現在、母校で教鞭を執る傍ら年間数本の舞台をこなす。
オペラ歌手として「油の乗る」時期を順調にひた走り、歌うために生まれて来たかに見える久保田さん。が実のところあまりその気はなかった。ピアニストの父に声楽家の母、そして兄もまたピアニストへの道を進んでいた。普通に考えれば当然久保田さんもその道へ。ご両親は久保田さんの非凡な才能を見抜けなかったのか、いやその道の苦しさを誰よりも知る身であったからか「教育者」として安定した人生を勧めた。
教育科で「その気の無かった」声楽の試験が良かった。それも恩師の目に止まるほどだ。師は強く声楽科への転向を勧め、「無理だと思った」声楽で大学院試験を突破した。オペラ歌手へのスタートラインに立ったのだ。
 「これまでひとつとして満足できた舞台はありません」
 たとえ歌う時間が10数分でも1回の舞台に懸ける思い、集中力は常人には計り知れない。先日1日に2回の公演があった。空き時間は4時間。素人には「それくらいあれば」と思えるかもしれない。とんでもない。
「声の当たり所を見つける」といった複雑な喉との相談もあるが、オペラは物語も紡ぐ。時間を懸けて役になりきり情を込めていく。一度演じきり終わると、もう一度やるにはまたそれなりの時間を要するのだ。
 声と演技、技術的なもの全てを網羅し、悲喜劇どちらもこなせる存在感のある歌い手が目標。「大きな役はそれだけで存在感がありますが、小さな役は主役の邪魔をせず存在を示さなければなりません。〝技術〟が要求されます」
花見川区在住。
   文 やまもとみどり

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