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田中悟の片道旅団

大阪で芝居と弾き語りをしています。

あるいは彼女の退屈な夜

2025年04月10日 |  歌詞
ずっと静かにしていたかった。
出来ることならこのまま時を止めてしまいたかった。
だからせめて時計を止めた。
相対的に時の流れがはやくなったようにも思えたけど、
もう色んなことがどうでもよくなって仰向けに寝そべった。
全ての約束を反故にしてもいい。
願いはたったひとつで、それは君と時を共有することのみ。
だけどどうだろう。
君はすぐに退屈そうな顔をする。
眠れないのに夢から覚めることもない。
抱き合っていても肌と肌が触れ合うこともない。
言葉を交わしても沈黙が消えることもない。
そうこうしているうちに夜は海に姿をかえる。
暗闇が光り出す。
ホワイトノイズに包まれた小さな部屋で魚になるには二人はあまりにも不器用だ。うまく泳げない。
遠い記憶を辿るように、
朝まで退屈を齧るしかなくて、
キスさえせずに重なりあった。
そうやってこの退屈な夜を二人で黙って齧りあうだけだった。





あるいは彼女の退屈な夜

目が覚めないのなら
眠っちまいな
気もそぞろなベッドで
どっちつかず
時間ならさっきさ止めてあげたよ
愛のふりして
無理しなくてもいいんだよ

甘い香り漂うビスケットでさえ
すぐに湿気っちゃってさ
嫌んなっちゃうって話
救いがあるならば
例えば天使の唄
あるいは彼女の退屈な声

夜に眠れないとか
すぐ言うのに
一緒にいる時だけ
だるそうにする
眠剤のピルケース隠しちゃったよ
愛のふりして
矛盾嗜めているのさ

遠い記憶辿れば人は海に還る
今この瞬間も
あぶくみたいだよ
辿り着いた場所は
狭い入り江の奥
あるいは彼女の退屈な夜

もっと深い場所で絡まっていたいけど
形があるようで
無いような揺れ方
ここは見つめあう時だけ
現われて来る世界
あるいは彼女の退屈な世界

あるいは彼女の退屈な夜









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