中国は日本に勝利した。したんだ

今年は抗日戦争勝利60周年です。中国が日本に勝利した、ということだそうです。

人民日報:中共は全民族団結による抗戦の支柱
http://news.sina.com.cn/c/2005-08-15/05306690747s.shtml

この手の論評は以前にも紹介した気がします。見出しに見覚えがあります。要約すると

「日本の無条件降伏は、この1世紀で中国人民が初めて外敵を打ち破り、中華民族が衰退から発展への重大な転換点となった」
「弱かった中国が最終的に強敵に勝つという奇跡を成し遂げたのは、共産党が全中国人民の意思を代表し、返り血を浴びるような最前線に立って偉大な抗日戦争を指揮したから」

というところになろうかと思います。

各所に中華人民共和国国家の歌詞が散りばめられるなど、非常にイタい文章ではありますが、人民日報なので当たり前。15年戦争をにおわせ、自国内での勝利を誇るだけでは飽き足らず、日本の侵攻を中国で食い止めたなどの新説をばら撒き、最後に「我々の心は一つ。中華民族の輝かしい未来に向かって、前進」で締めるという徹底ぶり。これを書いた人民日報の中の人は、書いている時は気持ちよかったでしょうね。

共産党にも言いたいことはあるでしょうから、トップが延安にいながらどうして支柱になりえたのか(精神的支柱とかかな)、数々の会戦で偉大な勝利を収めながら全体的な戦局は押され気味だったとか、実際に日本軍と戦った国民党の3文字が1回しか出てこないとか、色々突っ込みどころは満載ですが、そこはあえてスルーしてあげましょう。

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ところが、抗日戦争における中国の役割など紙くず同然と言ってのけた人がいます。「日本の敗戦はアメリカの大爆撃と海上封鎖」とし、人民日報=共産党の主張と完全に逆をいくもので、アメリカの参戦が無かったら中国人は早晩亡国の民となっていただろうとまで言っています。

「面倒だから」と彼の主張を要約してくれていますので、それに乗っかります。

 呉康民:中国は日本敗北に多大な貢献
http://hk.news.yahoo.com/050817/12/1foiq.html

1:中国の8年間の抗戦で多くの日本軍を殲滅し、また日本軍をけん制した。日本軍の中国における死傷者は400万人を超え、1941年太平洋戦争が発生した当時日本の総兵力は51個師団だったが38個師団が中国に投入された。中国での投降時には108万で、どこの戦地よりも降伏した数が多かった

2:米軍が太平洋戦争に参戦し、海・空軍が日本軍を殲滅し、最後には原爆を2発投下し、日本を屈服させた

3:ソ連が最後に参戦し、関東軍の精鋭を壊滅させ日本の退路を経った

これだけ読むと1が主要な原因としか思えませんが。原文では「アメリカの力を過大評価しているだけで事実に異なる」と明報の怒る通り、アメリカの貢献を第一にしています。


 蔡子強:中共は日本の敗戦にどのような貢献があるのか
http://hk.news.yahoo.com/050811/12/1fh8z.html

確かに、日本は中国の戦地へ陸軍の兵力を大幅に割いており、南方への戦力投入をある程度は遅らせたかもしれないが、日本の敗戦時に中国にいた200万の陸軍はボロボロになってはおらず、これが日本敗戦の原因になったとは思えない。だから、日本は中国に負けたなんて思っていない、というのが蔡子強教授(香港中文大学政治学)の主張なのです。

教科書を改ざんとか言っている人なのでアレですが、明報(おそらくは中共中央も)「事実と異なる」と猛反発するのもうなづけます。戦勝国としての貢献が台無しですから。モスクワでソ連の参戦に賛意を表し、「ウチも頑張ったんだよ」と言ってみても、誰もほめてくれる人がいません。だって勝ってないもん。あ、言っちゃった。

それでも自画自賛し、「抗日戦争勝利60周年記念」を盛大に祝わって、いちいち勝利を確認していなければやっていけない国です。

9月には日本軍の中国における武装解除や満州事変など、記念日が待っています。また衆議院選挙後の靖国参拝や、中共トップの入れ替えも十分ありえる状況です。

そういえば、尖閣諸島の灯台接収は春節直前に行われ、中華民族の大事な休日を目前にしての暴挙で人民の感情は傷つくわ、抗議行動は休みを挟んだのでグダグダになるわで散々でした。"918"に合わせて参拝し、また人民の感情を傷つけてみるのもありかと。十一でも可。

私の文章もグダグダですね。
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