アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

徳川家綱 伊達騒動編

2021-09-12 08:07:26 | 漫画


松平信綱
「遠路より訪問して頂き、ご苦労をおかけいたしましたな」

独立性易
「とんでも御座いません」
「このような年寄りに公方様との謁見を許されたことは
大変な名誉に御座います」

松平信綱
「いやいや、実は儂が僧殿に興味があったのじゃ」

独立性易
「私は縁があり明の隠元僧侶の御加護にあのますが
実際は儒学者なのです。
医術、水墨画や印には精通しておりますが、
お経は読めないので御座います」

松平信綱
「いやいや、失礼致した」
「では、お医者殿とお呼びしましょう」

独立性易
「医術でしたら、明から引き継いでおり、
日の国で穎川入徳とも情報交換がありますので
お力になれるかも知れません」

松平信綱
「ところで先生の見立ては?」

独立性易
「公方様は病弱ではありません」
「精神的に衰弱しているので御座います」

松平信綱
「ほーぉ」
「精神的とな?」

独立性易
「はい」
「何か心当たりは御座いますか?」

松平信綱
「ははは」
「大有じゃ」

独立性易
「では、その心労を取り除いて上げて下さいませ」

松平信綱
「んぅ」
「今は無理じゃ・・・」
「そうじゃな・・・心労であれば
いずれ解決するじゃろー」

独立性易
「私の見立ては以上に御座います」

松平信綱
「噂通りの名医じゃな」

独立性易
「そのような・・・・」

松平信綱
「ところで、上様が何故に心労か?分かるか?」

独立性易
「いいえ」
「わたくしには、思いも付きません」

松平信綱
「ははははは」
「実はな、上様は偽物なんじゃ」
「将軍という大きな役割に精神的に参ってしまったのじゃな」

独立性易
「そのような・・・
お戯れを・・・・」

松平信綱
「いやいや、心配はいらん!」
「先生に迷惑は掛からん!」

独立性易
「では、何故に、このような秘密をお話になるので
御座いますか?」

松平信綱
「聞きたいか?」

独立性易
「いいえ」
「聞きたくありません」

松平信綱
「いいや、ダメじゃ聞いておけ」

独立性易
「・・・・・・」

松平信綱
「そう迷惑そうな顔をするな」

独立性易
「しかし・・・・」

松平信綱
「実はな、上様は水戸におるのじゃ」
「あのなぁ 水戸には朱舜水がおる
朱舜水に対抗するには先生が必要なんじゃ」

独立性易
「わたくしを朱舜水の対抗馬にとお考えですか?」

松平信綱
「まさしく、察しが利くのぉ」

独立性易
「おおぉ」
「大変なことになってしまった・・・・・」


アプリコット
「こんにちは、わたしチューリップ国のアプリコットよ」

独立性易
「ああ、異国の姫様じゃな」

アプリコット
「如何したの?」
「沈んだ、お顔だわね」

独立性易
「ああ、大変な問題を抱えてしもーた・・・・」

アプリコット
「将軍家綱様の事ね」

独立性易
「おおぉぉ・・・・・」

アプリコット
「如何したの?」「青ざめたお顔だわ」

独立性易
「・・・・・・・」

アプリコット
「心配しなくても大丈夫よ」
「私は意地悪じゃないわ」
「イタズラは好きだけど
愛のあるイタズラよ」
「心配しないでね」

独立性易
「ああぁ・・・・・」

アプリコット
「何で、そんなに怯えているの?」

独立性易
「んんぅ」
「確かに」
「其方に邪心は無い」
「清らかな心じゃ」

アプリコット
「まぁー」
「先生は心がよめるのかしら」

独立性易
「わたしが江戸に招かれたのは
わたしの知識と才能によるものではないのです」
「わたしの評判を聞いた江戸家老様が
わたしを利用するためなのです」

アプリコット
「利用されるのが怖いのね」

独立性易
「わたしに多くの医術の知識があっても
これ程までに有名になることはなかった」
「わたしが名医と呼ばれるのは知識のよるものではないのです」

アプリコット
「まーぁ」
「先生は心がよめるようにして、病気もわかるのかしら」

独立性易
「ははは」
「病気だけではない」
「未来も見通せる」

アプリコット
「あッ」
「分かっちゃったわ」
「先生はご自分の未来を見通してしまったのね」

独立性易
「んんゥ」

アプリコット
「でもね、運命は変えられるわよ」
「仮病を使って逃げることもできるわ」

独立性易
「日の国では武士道がある」
「わたしは日の国の一員として
恥かしいことは出来ない」
「この国には誇るべく武士道があるのです」

アプリコット
「でも、先生は僧侶なんでしょ」
「武士じゃないわ」

独立性易
「はははは」
「そうですな」
「わたしは僧侶です」

アプリコット
「逃げちゃえば?」

独立性易
「そうなァ」

アプリコット
「逃げても大丈夫よ」

独立性易
「んんゥ」

アプリコット
「ちょと」
「顔色が良くなってきたわ」
「元気が出てきたみたいね」

独立性易
「ああ」「そうか・・・そうよなァ」



松平信綱
「遠慮はいらん」
「儂は、先生には安心して江戸で暮らして欲しいと思っているのじゃ」

独立性易
「有難きご配慮に感謝致します」

松平信綱
「ただ、儂も年を取り過ぎた」
「今の安定した幕府の体制を永遠に存続させるためにも
先生の助言が必要じゃ」

独立性易
「なにを仰せでしょう」
「わたくしこそ年を取り過ぎております」
「他にも優秀なる儒学者は大勢おりますから
若くて将来を託せる者を起用なされたら宜しいかと・・・」

松平信綱
「優秀なる者は大勢おるが
油断がならないのじゃ」
「優秀であることが疑念を招き入れておるのが現状なのじゃよ」

独立性易
「何故、わたくしを信頼なされます・・・・」
「わたくしめのような成りあがりこそ
疑念を招くとはお思いなされませんか?」

松平信綱
「先生が表だって政務に立ち入る必要はありません」
「先生に期待するのは
・・・・・」

独立性易
「・・・・・・」

松平信綱
「この江戸城にいる偽の将軍を認知していてほしいのじゃ」

独立性易
「と、申されますは」
「将軍が偽物であると知っているにも関わらず
知らぬふりをしろと申されますか?」

松平信綱
「知らぬふりでは無い
偽将軍が本当の徳川家綱であるとする
証人となって欲しいのじゃよ」
「つまり、生き証人じゃ」

独立性易
「何故に?」

松平信綱
「江戸の重鎮でも偽将軍のことを知る者は少ない
かと言って、多くの者に真実を知らせると
いろいろと面倒なことが起こる」
「そこで・・・・」
「先生が真実を知る生き証人となって
正当なる将軍がお帰りになる為の
準備をしておく必要があるのじゃ」

独立性易
「わたくしが断れば如何なされますか?」

松平信綱
「無理にとは申さぬ」
「先生ならば安心して任せられると
思っておるのじゃ」
「是非、引き受けて欲しい」

独立性易
「・・・・・はい」
「そのような大役わたくしめに務まりますか不安ではありますが
命に代えてお勤め致したく決意致し謹んでお引き受け致したく・・・・」

「承知いたしました」



朱舜水
「お待ちしておりました」
「先生のご活躍、同胞者として誇らしいことです」

独立性易
「いやいや」
「貴方の方こそ、江戸にも名前が知れ渡っておりますぞ」

朱舜水
「おお、そうじゃ」
「奥の間で其方を持て成す準備が出来ておる
上様も来られるやもしれませんぞ」

独立性易
「ははは」
「それは楽しみじゃな」
「では、早速」

朱舜水
「水戸様は好奇心が旺盛でな
特産品等、ご自分で見聞なされて
ご開発じゃ」

独立性易
「ほぉー」
「外来の特産品ですかな」
「長崎ではオランダが主だっておったが
最近はエスパニアが盛んだとか」

朱舜水
「いやいや」
「まだまだ、貿易は明との交易が大きいぞ」
「まっ、水戸様は欧州がお気に入りじゃがな」

独立性易
「実はな、わたしが此処に来たのには理由があるのだ」

朱舜水
「・・・・・ああ」
「他に訳があることは、分かっておる」

独立性易
「江戸より大切な客人が水戸に来られている筈」
「わたしは、そのお方とお会いしなければなりません」

朱舜水
「んゥ」
「そうじゃな」
「わたしも薄々と感付いておったが
あのお方は公方様ですな!」

独立性易
「いかにも」
「わたしは第四代将軍徳川家綱様に会いにきたのです」

朱舜水
「おおゥ」
「大変なことだ」
「あのお方は公方様なのだな!」

独立性易
「いかにも、その通りなのだ」
「わたしは伊豆様(松平信綱)よりの特命で
公方様の後見役を仰せ付けられたのです」

朱舜水
「ほーォ」
「其方は晴れて大出世の大政参与か?」

独立性易
「いやいや」
「わたしは幕府のまつりごとには関与しない」
「まさか、そのような大役はありませんな」

朱舜水
「んゥ」
「何故かな?」
「後見役は名ばかりか?」

独立性易
「いやいや」
「わたしのような成り上がりが
江戸家老は無理ですな」
「わたしは江戸の客人なのだよ」




家綱
「何じゃ!」
「お主は信綱の使いか?」

独立性易
「はい、伊豆様より公方様の後見人を賜りました」
「就庵僧人です」
「後見人と申しても形式的なものでありまして
実行支配はありませんので
公方様のお守り役とお考え下さい」

家綱
「んんゥ」
「松平信綱が儂を連れ戻そうとしておるのじゃろーが!」

独立性易
「伊豆様は公方様がお帰りになった時に
混乱なく速やかに登城できるようにとの
ご配慮に御座います」

家綱
「何じゃ」
「迎えに来たのかと思ォーたわ」
「しかし」
「いままで御無沙汰無しとはなァ・・・・」
「まったくもって、信綱は儂の事が邪魔なんじゃろォーな」

独立性易
「いいえ、伊豆様は公方様の事を大変心配しております」
「ここ水戸で元気にお暮しと聞けば
安心することでしょう」

家綱
「じゃけどなァ」
「儂が水戸に行くと言えば
止めるどころか率先して協力しておったぞ」
「本来、心配なら止めるじゃろーが」

独立性易
「それは、江戸に危機が迫っていたからに御座いましょう」
「反乱や大火等 江戸は大混乱で御座いました」

家綱
「んんゥ」
「信綱に申しておけ」
「儂は旅に出るとな」

独立性易
「何処に行かれるのですか?」

家綱
「あてなど無い」
「儂は隠密将軍家綱じゃ!」

独立性易
「では御供を手配致さねばなりません」

家綱
「ははは」
「勝手にせい」

独立性易
「しかし、公方様がこのように御活発だとは
思いもしませんでした」

家綱
「そうか」
「儂は城で畏まって礼儀正しく学問とやらに興じるなど
まっぴらなんじゃ」
「実践あるのみじゃ」

独立性易
「ほーォ」
「朱舜水先生の教えと通じるものが
御座いますな」

家綱
「其方は朱舜水と同郷じゃな」
「学問だけでは、頭でっかちでやぼじゃ
学問で手に入れたものは実行して初めて意味を持つ
旅は学問の実践場じゃ」

独立性易
「しかし、戦国の世が終わったと言えども
紛争は絶えず、飢饉や、自然災害が絶えません」
「公方様の身に何かあれば
幕府の一大事で御座います」
「旅は他の者に任せて
情報だけを得れば良いのではありませんか?」

家綱
「ははははァ」
「それが頭デッカチというものじゃ」

独立性易
「おおゥ」
「公方様は冒険心にとんだ御活発なお方じゃ」
「とても、儂の手には負えない・・・・」

家綱
「貴方、心配致すな!」
「儂は己の身は己で守る」
「責任は己にあって
貴方にはない」

独立性易
「では、旅立ちは少しお待ちください」
「御供の者と軍資金、諸藩への根回し如何御座います」

家綱
「んゥ」
「あのなァ」
「諸藩に根回しは止めじゃ」
「根回しされては隠し立ても多かろーォからな」

独立性易
「では」
「何方に参るのかだけは、お教え下さい」
「公方様の身に危険がありましたら大変で御座います」

家綱
「付いて参れ」

独立性易
「わたしを御供に?」

家綱
「心配ならば、そう致せ」

独立性易
「こような老いぼれ」
「足手まといになりますぞ」

家綱
「構わん!」

独立性易
「公方様は何を知りたいので御座いますか?」

家綱
「仮早稲米じゃ」

独立性易
「仮早稲米?」



独立性易
「仮早稲米でわたしが知りうることでは
災害や飢饉で米が緊急に必要になる時のために
農民が仮に納める年貢米のようなもので
その年に全て返却される筈ですから
旅をして分かるような事ではありませんよ」

将軍家綱
「ああ」
「お主の言う通りじゃ」

独立性易
「詳しいことは伊豆様に教えて貰えば宜しいのです」

将軍家綱
「ああ」「そうそう」
「あのな」
「信綱がな」
「仮早稲米の事で謝罪すると言っておったがな」
「やっぱり、謝罪するのは止めたそうじゃ」
「なんでも、由井正雪に責任転嫁したみたいじゃ」

独立性易
「えェー」
「由井正雪は公方様を人質にして
幕府を転覆させようとしたのですよ」
「伊豆様は貴方様をお守りしたのですよ」

将軍家綱
「ああ」「そうそう」
「信綱がな」
「徳川 頼宣が由井正雪と結託していると
言っておったぞ」

独立性易
「いえいえ」
「それは由井正雪の陰謀です
騙されてはなりません」

将軍家綱
「あのなァ」
「儂は松平信綱が信用ならん人物だと言っておるのではないのじゃ」
「誰にでも隠し事はあるのじゃろーが」
「お主も何か隠しておるじゃろォーに」

独立性易
「公方様に隠し立てなど決して御座いません」
「お戯れはなりません」

将軍家綱
「すまんのォー」
「随分と歩いておる」
「馬に乗るか?」

独立性易
「これはこれは」
「公方様」「お疲れですかな」
「それでは、駕籠なり用意せねばなりませんな」

将軍家綱
「いいや、儂は一向に構わないのじゃ」
「この方が話ながら旅ができる」

独立性易
「では、若狭の大老様に聞いてみれば
如何でしょうか」

将軍家綱
「酒井忠勝は松平信綱に執心じゃ」
何を聞いても首座信綱に聞いて後に返答しておるぞ」
「ただ、興味深い事が分かったのじゃ」
「その昔、忠勝は大老に相応しき大藩を断り
器の大きさを世間に知らしめたことがあった」
「しかしな、その後に大藩を譲り分けておれば良かったと後悔しておる」
「この後悔と仮早稲米の根深さには大きな関連があることが
分かったのじゃ」
「さらに、土井勝利が勘定奉行と結託して借り受けた
百万貫が諸大名に貸し付けられたのじゃが
その利子が膨大に膨れ上がり返済不能に陥っている」
「この資金の淀みと仮早稲米の関係も明らかになっておる」

独立性易
「何と!」
「そこまでお調べが出来ているとは
思いもしませんでした」

将軍家綱
「酒井忠勝に聞いても無駄じゃ」

独立性易
「ああっ」
「大老様も首座様も口をつむいでおられるのですか」
「このような大事をこのような小さな将軍一人で解き明かそうと
なさっておるとは・・・・」

将軍家綱
「おい」
「如何した」

独立性易
「いえいえ」
「目にゴミが入ったようです」

将軍家綱
「そうか」
「やはり、馬を用意しよう」
「これから、関所を越えて陸奥の国に入ろう」

独立性易
「仙台に向かう御意向でしょうか?」

将軍家綱
「仙台藩は幕府の縮図じゃ」
「幕府の家老が口を噤んでおるのじゃ
埒が明かないからな」
「伊達政宗由来の地に行って調べてみよう」

独立性易
「では田村宗良様に連絡を入れておきましょう」

将軍家綱
「誰じゃ?」

独立性易
「少しばかり縁のあお方に御座います」

将軍家綱
「如何様な縁じゃ」

独立性易
「他愛のない事ですが
水墨画や和歌、印等のことで
交流が御座います」

将軍家綱
「絵描きか?」

独立性易
「伊達政宗の孫だと聞いておりますが・・・」
「なにせ、遠方の地
それ程、親しい仲では御座いませんので
詳しい事は後ほど調べておます」

将軍家綱
「いや、調べは入れるな!」
「情報は直接仕入れる方が良い」

独立性易
「はい」
「では、直接本人にお会いいたしましょう」

将軍家綱
「んんゥ」



田村宗良
「これはこれは、夢のようです」
「わたしのような未熟者の為に
先生自らお越し下さり、あんや、いやいや
何と言ったら良いものやら
大変に恐縮に御座います」

独立性易
「はははァ」
「そのようにかたくなるものではない」
「緊張するな!」

田村宗良
「おおォ」
「儂は夢を見ているのだろォーか・・・・」
「あんや、夢では御座らん」
「いやいや、やはり夢じゃ」

独立性易
「其方が、そのように面白きお方だとは
思いもせなんだ」

田村宗良
「おおおおおォ」
「面白いですか」
「いと可笑しで御座いますな」
「いやはや、趣があって楽しいのは
良い事じゃ」
「今宵は先生の為に歓迎会じゃ」

独立性易
「おいおい」
「大げさにするな」
「質素が大道じゃ」

田村宗良
「おおおおおォ」
「わびさびの心境で御座いますな」
「では、茶など点てますので」
「ゆっくりと旅の疲れを癒してくださいませ」

独立性易
「そうか」
「では、ゆっくりとさせてもらうかな」

田村宗良
「早速ですが、先生に見立てて頂きたき事が御座います」
「お願いしても宜しいでしょうか?」

独立性易
「んんゥ」「はてさて」
「お主は健やかじゃ」
「病は無いぞ」

田村宗良
「おおおォ」
「正しく名医!」「されど、見立て違いで御座います」
「実は、お願いの見立ては病ではなく
この宗良の進退を見定めて頂きたいのです」

独立性易
「ほォーオ」
「内部事情も知らぬわたくしめに
進退を占えと?」

田村宗良
「ああああァ」
「いやはや」
「失礼仕りまして御座います」
「ご無礼をお許し下さい」

独立性易
「なになに」
「無礼など無いぞ」
「心配いたすな」
「貴方には何か心配事があるのじゃな」

田村宗良
「ご存知とは思いますが
この宗良は伊達政宗の孫にあたります」
「政宗公は世に知れた豪傑」
「そして、後を継がれた忠宗公は守成の名君と誉れ高き
名将で御座いました」
「しかし、今」
「藩主は幼子となり」
「実質の政務は後見役のわたし(宗良)になっております」

独立性易
「大出世ですな」
「目出度いことじゃ」

田村宗良
「あああああォ」
「先生!」
「茶化さないで下さい」
「わたしは悩んでおります」

独立性易
「んんゥ」
「あい、わかった」
「では、お主の進退を見立ててやろう」

田村宗良
「先生!」
「お願い致します!」

独立性易
「お主が藩主を目指せば
放蕩者の汚名を着せられよう」「だが」
「目立たぬように和歌や書に勤しんでおれば
災いから逃れることが出来よう」

田村宗良
「では」
「このままでは身に危険が迫っていると・・・・」

独立性易
「いかにも」
「お主はまだ若い新参じゃ」
「古参がお主を許しはしないじゃろーな」

田村宗良
「いったい何が起こっているのでしょうか」

独立性易
「知りたいか?」

田村宗良
「はい」
「是非とも!」

独立性易
「では、仙台藩のことを包み隠さず
話すことじゃ」
「隠し事があれば
お主の進退を見定めることは
あい、ならん」

田村宗良
「うぉぉぉぉぉー」
「包み隠さず・・・・」
「恐ろしい・・・・・」

独立性易
「無理にとは申さぬ」
「しかし、道を間違えば地獄行じゃ」

田村宗良
「うぎゃーーーーーー」
「儂は地獄に行くのか・・・・」

独立性易
「包み隠さずに申すのじゃ」

田村宗良
「おおおォーーーー」
「おじょろじィーーーー」
「地獄行の獄門じゃーーーーー」

独立性易
「・・・・・・・・」



立花忠茂
「宗良から聞いたが、客人とは其方かな?」
「んんぅ」
「おォ」

将軍家綱
「おい」
「忠茂!」
「儂を忘れたか!」

立花忠茂
「なんと、上様ではありませんか!」
 ーーーー畏まるーーーーー

将軍家綱
「思い出すのォー」

立花忠茂
「はい」

将軍家綱
「儂が大坂から帰ったとき
お主に八つ当たりしたのォー」

立花忠茂
「あィやー」
「そのようなこと・・・・」

将軍家綱
「儂は旅に出られなくなって退屈じゃった」
「だからな、
大きな声で叫んでおった」
「つまらん!」とな
で、「お主、何と答えた?」

立花忠茂
「はい」
「申し訳ございません」とお答え致しました。

将軍家綱
「そうじゃ」
「そこで、儂が何故に謝ると聞いたら」
「お主、何と答えた」

立花忠茂
「はい」
再び「申し訳ございません」とお答え致しました。

将軍家綱
「毎日、八つ当たりじゃった」
「難儀であったのォー」

立花忠茂
「とんでも御座いません」
「上様の侍従に叙されたことに感謝こそすれ
そのようなこと・・・・」
「上様が御活発な事」
「この忠茂、嬉しい限りで御座います」

将軍家綱
「ところで、お主は此処で何をしておるのじゃ」

立花忠茂
「はい、仙台藩の相談役をしております」

将軍家綱
「では、儂に教えてくれ」

立花忠茂
「はい、なんなりと」
「忠茂の知る限りの事お答えいたします」

将軍家綱
「仮早稲米の事じゃ」

立花忠茂
「おおゥ」
「何と申されました!」
「仮早稲米!」

将軍家綱
「何を青い顔をして驚いておる?」

立花忠茂
「実は、昨今、言葉狩りが御座います」

将軍家綱
「言葉狩りか?」

立花忠茂
「はい」
「その中でも最も危険な言葉が
上様の知りたがっている
仮早稲米なのです」

将軍家綱
「ほーォ」
「では、仮早稲米の話をすれば
如何なるのじゃ?」

立花忠茂
「はい」
「何者かによって、闇討ちに会いまする」

将軍家綱
「ほォー」
「では、迂闊に仮早稲米の話は出来んのじゃな?」

立花忠茂
「はい」
「領民は皆、言葉狩りに怯えております」

将軍家綱
「誰の差し金じゃ!」

立花忠茂
「はい、多分、幕府公儀の者の仕業だと・・・・」

将軍家綱
「儂は幕府の将軍じゃぞ!」
「ならば、言葉狩りは儂の命令ということか?」

立花忠茂
「はい」
「そのようになりますな・・・・」

将軍家綱
「おい」
「忠茂!」
「他人事のように言うな!」
「儂は言葉狩りなど許さん!」

立花忠茂
「はい」
「何か奇妙に御座います・・・・」



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