青草俳句会

草深昌子主宰の指導する句会でアミュー厚木での句会を主な活動としています。

老鶯や谷戸山越へて星の寺

2017年07月08日 | 連載「老翁や」

老翁4人の公園巡りの第2弾は「県立座間谷戸山公園」でした。
長屋門を入るとすぐ傍の田んぼでは子供たちの体験田植会が始って世話人、父兄、小学生達大勢が代掻の終えた田んぼに集まっていました。

 

「長屋門入るや谷戸は田植時 金太郎」

田んぼに続いた沼では子供たちがザリガニ釣をしていて、釣れたら叫び、一寸触っては絶叫となりますがそんなことに驚くザリガニではありません。
見るに見かねて爺たちが昔の体験からしゃしゃり出て指導(?)始めます。
久しく忘れて居た童心にかえり爺達もにこにこ顔です。

子供達と別れて端境期で静かな谷戸の径をうっそうとした森の中に入っていきます



「草刈のモーター音や谷戸の径 金太郎 」


なんと10個近い数の蟻地獄が固まって居て、もしかした本物の蟻地獄を見たのは初めてかもと、またまた大興奮の爺たちです。
「蟻地獄」も「吊舟草」また、この公園内の主だった樹木や野草には名札が付いて歳時記を開きながら、ふんだんにある夏の季語を確認していきます。「では此処でミニ句会を」という声が出ません。
だって今日は吟行句会ではなくぶらぶら歩き目的だからと苦しい言い訳したりして句会はパス」します。

「地の底の泥混ぜてゐる噴井かな 一父」
「蟻疑獄まはり四間蟻の居ず 金太郎」

 

そして帰りの駅への途中で目覚えのある寺院に立ち寄ったのが板東八番札所の星の谷観音こと「妙本山星谷寺」でした。
此処は俳人にも人気のお寺で、この日も句帳らしものを持って散策している人を2,3人見かけました。
この日は、風が強く境内の大銀杏の枝がゆさゆさ揺れて、まさに青嵐でその青葉がきらきらと輝くさまを詠んだ乾惠の句は流石です。

「きらめきは風の悪戯夏木立 乾惠」
「再びの八番札所青あらし 金太郎」



水琴窟が聞えないとちゃっかりと通りかかった女性も巻き込んでしまう図々しいさも爺の面目躍如です。
そして、この日の歩行数字は12000歩をオーバーして楽しく快調に歩けました(終り)


老翁4人の文学散歩

2017年06月08日 | 連載「老翁や」

やびつ峠散策の目的で駅に集合した老翁4人、寒そうな空模様を見ながら急きょ変更した行く先は俳句の聖地「鴫立庵」で一応4人とも自称俳人の面目躍如です。

内心で「佳い句を授かりますように」とか「言葉の泉を湧き立たせてください」とか祈ながら、「此処でミニ句会を」と誰も言い出さないのはどうしたことか・・・

 
『緑蔭の誰彼の句碑乱れ立ち 金太郎』

続いて訪れたのが島崎藤村が最晩年の2年間を過ごしたという藤村旧邸です。それぞれに若かりし頃は文学青年?というが「何だっけ、ほらあれよ、あれ」「そうだ、あれあれ、なんだったけ?」とあやしき会話でと文学論に進んでいかずにぶち切れるところが老翁の老翁たるところです。
『藤村やああ藤村や・・・・・』

 
(写真は藤村邸と庭に咲いていた「ベニカナメモチ」)

次に海岸にでて砂浜をあるいて吉田邸に向います。浜辺には浜昼顔、忍冬が咲き、茅花の白い穂が心地よい風になびいていました。

 
『玉石や幾万年の夏の浜 泊雲』
『昼顔や渚に消える足の跡 泊雲』
『釣人の赤きジャンバー茅花吹く 金太郎』
『沖見つめ動かぬ人の白日傘 金太郎』

途中で波打際から拾い上げたのが約20センチ角の箱でした。頑丈に包み込まれたものを丁寧に解いていくと、中から現れたのはハムスターの死骸と綺麗な文字で書かれたメモでした。
「ハムちゃんこれまで有難う・・・・」というような事が書かれていました。

『亡骸は昼顔の墓ハムスター  乾惠』

「浜昼顔の根元に埋めてあげよう」これはメモを読んだ4人の共通の思いと行動でした。

長い砂浜歩きは老翁には堪えます、息の上がらぬうちに浜歩きを諦めてバス通りを吉田邸に向います。

 

そして最後の締めはやはり居酒屋で、やっと何時もの自分らしを取り戻している4人でした。

『筍の刺身旨しや茶碗酒 一父』
(おわり)
文と写真 坂田金太郎