青草俳句会

草深昌子主宰の指導する句会でアミュー厚木での句会を主な活動としています。

『ウエップ俳句通信』(105号)より

2018年09月22日 | 結社誌・句会報

『ウエップ俳句通信』(105号)に草深昌子主宰の作品が掲載されました。


    

  

      白        草深昌子 

     

   若葉して戸毎に違ふ壁の色   

   今し行く小倉遊亀かも白日傘

   浜あれば崖ある南風吹きにけり 

   薔薇守の鎌の大いに曲りたる 

   毛虫を見馬追を見る極楽寺

   芒種けふ路傍の草の丈高く

   梅雨さ中まれに蝶々屋根を越え

   わら屋根の藁のすさびのほととぎす

   絨毯を部屋に廊下にさみだるる

   白雲のよく飛ぶところ通し鴨

   梅雨に咲く花の色かやこつてりと

   小諸なる古城のほとりサングラス

   どれどれと寄れば目高の目の真白

   蛇の衣脱ぐや高濱虚子の前

   大木のそよぎもあらぬうすごろも

   帰省子のそつくりかへる畳かな

   なにがなし触つて枇杷の土用の芽

   釣堀やひもすがらなる風の音

   落し文解きどころのなかりけり

   ひるがほの咲いてこの橋覚えある

           (3人競詠20句より) 


わたしの歳時記(俳句四季9月号より)

2018年09月08日 | トピックス

月刊誌『俳句四季』9月号に草深昌子主宰の記事が掲載されました。


画像の文字が読めませんので以下再掲載します。

 

桜          草深昌子 『青草』


   吉野山こずゑの花を見し日より

   心は身にもそはずなりにき

西行ならずとも、桜は古代より人々の憧れてやまない花である。

思えば若かりし頃、私は桜のオッカケをしていた。

その散り際の見事さに圧倒されて、今の内に見なければ損とでもいうような気持に焦るのだった。


ところが十数年前、神代桜に出会って、はじめて静かにまみえることの幸せに気付かされた。

日本武尊のお手植えという樹齢二千年の古木には支柱が二十数本、

中には石の支柱に食い込む幹もあって、捩れに捩れたありようはあまりにも哀れな姿であった。

それでも美しい雪を被った八ケ岳を向かうに、誇らず、卑下せず、

ただ花を咲かせたい一心に踏ん張っているさまは、いとおしくてならなかった。

この花の生涯は七転八倒のものではなかったろうか。

老いて無惨であればこそ、ぽってりと咲いた桜色はいっそう初々しく思われた。

 

人生は過ぎ去って二度と還らないけれど、桜の咲く春は繰り返しやってくる。

私たちの一回きりの人生と、永遠に巡ってくる季節の循環性、

その交点に満開の花を咲かせるのである。

何というなつかしさであろうか。

 

   さまざまの事おもひ出す桜かな   芭蕉



  赤子はやべつぴんさんや山桜        草深昌子

  哲学の道ゆく落花肩に浴び         間 草蛙 

  白壁の眩しきしだれ桜かな         石堂光子 

  病む友も独りのわれも花の中        古舘千世 

  花の雨駆け込み寺の小さきこと       山森小径 

  千年の静けさにゐて滝桜          上野春香 

  花散るや我が唄へば母踊り         鈴木一父 

  ドルフインにベンツ二台や花の昼      川井さとみ 

  手鏡に父の見てゐる初桜          末澤みわ 

  花冷の京の新居を訪ねけり         二村結季 

  一村は丸ごと桜吹雪かな          佐藤健成 

  ぼんぼりの消えて社の花惜しむ       中澤翔風 

  桜咲く小さき駅に小座布団         新井芙美 

  桜散るや日はとろとろと雲を追ひ      森田ちとせ 

  全山に桜の満ちて今日一日         湯川桂香 

  旅人の足湯してをり花の雲         菊竹典祥 

  花の雲ゆつたりとゆく乳母車        芳賀秀弥 

  咲き揃ふ終の棲家の桜かな         熊倉和茶 

  花に吹かれて千鳥足となり        栗田白雲 

  花屑の星座の中を駆けにけり        泉 いづ 

  この岸も向うの岸も花万朶         日下しょう子 

  花の中ダルメシアンの立ち上がる      佐藤昌緒 

  花屑を鯉のゆったり潜りけり        中 園子 

  花散るやランドセルの子みな駆けて     狗飼乾恵 

  夕桜吹雪きてけふを惜しみけり       石原虹子 

  書を開き目を閉づ羅漢花の散る       平野 翠 

  男坂駆け抜けてゆく山桜          柴田博祥 

  憂ひごと晴らして山に桜満つ        東小薗まさ一 

  人知れず羚羊の句碑嶺桜          坂田金太郎 

  花吹雪両親祖父母一年生          松尾まつを


(2018年9月8日)