日銀の異次元緩和が各方面に歪みを引き起こしていることはあちこちで指摘されている.だが異次元緩和の本当に怖いところは,それがもたらす歪みそのものよりも,麻薬のように緩和をやめられなくなることかもしれない.
一般に金融緩和をやめれば市場は敏感に反応する(通貨供給が減るのを見越してその通貨が値上がりするとか,景気減退を予測して株価が下がるとか).だが今日銀がやっているような途方もない「異次元」緩和ともな . . . 本文を読む
待機児童解消に向けて東京都は,ベビーシッターを認可保育園と同額で同じ時間利用できるシッター派遣制度を支援し,独自に導入している4区以外に拡大するという(朝日新聞2018年1月27日夕刊).小池知事は「待機児童解消への最後の決め手」と言っているらしいが,シッター派遣が「最後の決め手」では困る.1日最大13時間をカバーするには2人~3人が入れ替わることになり,1週間では10人もが交代で担当することもあ . . . 本文を読む
「待機児童」解消のために保育園新設もさることながら,保育士不足とならないよう保育士の待遇改善が大切だ(2017年10月12日).そのためにどのくらいの予算が必要かの試算も出ている(2017年12月14日).
この方面の予算の拡充が望まれることは言うまでもないが,保育所運営費の使い方などのゆがみを是正すれば,現在の補助金額でも保育士の待遇改善が可能だとする論考が出たという(小林美希「職業としての保育 . . . 本文を読む
自民党の選挙公約で出てきた「幼児教育無償化」.保護者らの間では「無償化より待機児童解消が先」との声が強く,私も「待機児童」カテゴリーを設けてたびたび主張してきた.ところが今日の新聞で知って驚いたのだが,安倍首相も国会の代表質問の場で「待機児童解消に最優先で取り組む」と言ったそうだ(朝日新聞2018年1月25日).
だが政府の動きを見ていても,選挙公約で掲げた急ごしらえの看板「無償化」にこだわるあま . . . 本文を読む
議論が紛糾していた幼児教育無償化について,有識者会議の初会合が昨日行なわれたという(朝日新聞2018年1月24日).「有識者」というのはどういう人が選ばれるのか気になっていたが,増田寛也・元総務相が座長で,労働経済学が専門の樋口美雄・慶応大教授,待機児童対策に取り組む林文子・横浜市長,幼児教育を専門とする無藤隆・白梅学園大特任教授を含めて計4人だそうだ(毎日新聞).
横浜市長が加わっているのを見て . . . 本文を読む
政策の良し悪しはその政策単独で評価することはできない.それ自身としては良い政策であっても,もっと優先すべきことがそのために犠牲になるのであれば,やはりそれは誤った政策と言わざるを得ない.昨年10月の衆院選を機に政府が言い出した「幼児教育無償化」はその最たる例だ.
何度も書いてきたが(「待機児童」カテゴリーの記事一覧),無償化より前に,そもそも預けたくても預けられない状況をなんとかしないと,不公平の . . . 本文を読む
仮想通貨「ビットコイン」の高騰が話題になったが,注目を集めてそれ自身としての価値をもったことで,長期的には滅びるだろうという経済学者・岩井克人氏の話が面白かった(朝日新聞2018年1月18日).
世界中がつながっている現代社会にあっても,海外への送金は面倒だ.オンラインショップならクレジットカード払いもできるが,個人間ではそうもいかない.やむなくネットショップのギフト券を使うこともあるようだ.そん . . . 本文を読む
AIが日常生活に浸透しつつある.将棋や囲碁のようなゲームだけでなく,癌を発見する画像診断でも人間より好成績を収めたという報道が最近あった.だが,現実世界への応用となると,「なぜそうなのか」という説明責任を考えなければならない.AIの「深層学習」というのはその性質上,「最適」な結果だけを出力するものであり,途中がブラックボックスになるからだ.
将棋や囲碁なら勝負に勝つという明確な基準がある.たとえ伝 . . . 本文を読む
このところ携帯電話に届く迷惑メールが多い.同じ業者からと思われるのだが,毎回違うアドレスから送られてくるので拒否アドレスを登録しても意味がない.それどころかドメインさえ異なるので,ドメイン単位の拒否ということもできない.一つ(または少数)のドメインを取得して,その中で多数のアドレスを使い分けるというのならわかるが,これだけ大量のドメインを取得するというのはどうやるのだろう.ドメイン取得というのは費 . . . 本文を読む
平昌冬季五輪の代表選手の壮行会について,関係者が会を開くのはいいがそれを公開するのは許されないとの日本オリンピック委員会(JOC)の方針で戸惑いが広がっている(朝日新聞2018年1月14日).「五輪の知的財産を宣伝目的で利用できるのはスポンサーだけ」という五輪憲章の解釈に基づく規制だという.
五輪憲章の規定そのものはまっとうな内容だ.たとえば「オリンピック」はJOCの登録商標となっていて(特許情報 . . . 本文を読む
カロリーベースの食料自給率を重視しているのはほとんど日本だけとの談話を読んで驚いた(朝日新聞2018年1月13日).1965年から生産額ベースの自給率が公表されていたが,1980年にカロリーベースが登場した.折しも日米間で牛肉・オレンジの輸入自由化交渉が盛んだったころで,低い数字を示して自由化を阻止するために農水省が導入したのだという.
だが,「世界標準は生産額ベースの自給率」というわけではないら . . . 本文を読む
政府の幼児教育無償化が,待機児童解消が先という声が相次いで迷走していたが,このところさっぱりニュースにならなくなった.もろもろ指摘された問題に対しては有識者会議を設置して検討し,今年の夏までに結論を出すということで先送りしたのだったが(mainichi.jp),その後議論がどう進んでいるのかに関する報道を見ない.
私も無償化より先にすべきことがたくさんあると指摘してきたが(「待機児童」カテゴリーの . . . 本文を読む
少子高齢化に関し,海外では日本以上に高齢化が進んでいる国がある.その一つ,シンガポールについて「生涯働くのが幸せ」という記事を読んだ(朝日新聞GLOBE 2018年1月7日).
日本で高齢者福祉が負担になっていることを他山の石として,シンガポールでは2014年から元気な高齢者を「楽齢」(アクティブ・エイジャー)と呼んで就労を奨励している.その結果,65歳以上の就労率は2005年の14%に比べ201 . . . 本文を読む
先日の「PTAの問題の半分は職場環境の問題」では,学校の先生が,自分の子供のPTA活動のためであっても仕事を休んで自習にしては保護者が納得しないのではないかと指摘する声を紹介した.私も学校の先生が休むということはあまり記憶になかったので,検索エンジンでヒットした一つのページだけ見て,先生は夏・冬・春の長期休暇中に有給休暇を取っているようだと付記しておいたのだが,やはりそれですむ問題ではない.先生だ . . . 本文を読む
日本にとっては人口増より人口減のほうがメリットが大きいという主張を読んで「ほう」と思った(朝日新聞GLOBE 2018年1月7日).
私自身,過密な都市部で暮らしていると,人口が半分くらいになってくれたらいいのにと思うことはあるが,そういう安直な夢想ではない.(「人口が半分になったらいい」というのは,「店舗や配送・運輸業などのサービスが現状のままでサービスを享受する人が半分に減ったらいい」というだ . . . 本文を読む