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リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

第一次トランプ政権による自動車関税撤廃の「約束」はどうなった?

2024-11-07 | 政治
先日、池上彰氏がテレビで先のトランプ政権の話をしていた。トランプ大統領がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から離脱したことでアメリカ産牛肉の関税は引き下げられず、日本では安くなったカナダやオーストラリア産に押されて米国の畜産農家が苦境に立たされた。そこでトランプ大統領は日本と二国間協定によりTPP並みに牛肉の関税を下げさせることに成功した。トランプ氏は自分が交渉して勝ち取った勝利だと誇ったが、その実、自分の失政のしりぬぐいをしただけだった。
日本から見れば、どうしてアメリカの言いなりになったのだろうと思いたくなる。実はこれは安倍首相の対米追従の際たるものと当時から思っていた。過去ブログで書いたように、トランプ大統領が「米国の農家の偉大な勝利」と呼ぶ牛肉などの関税削減は、当時の安倍首相の発表によれば、それを上回る自動車関連の関税撤廃を米国が実行することと一体になっていたはずだ。だが当時の報道を見ていると安倍首相の発表がどうも怪しい。アメリカ側の関税撤廃の確約を取らずに一方的に譲歩してしまったのではとの疑いがぬぐえない。
第二次トランプ政権発足が確実(asahi.com)となった今、石破首相は安倍首相の関税交渉がどうなっているのか確認すべきだ。もし安倍政権が言っていたことが事実であれば、トランプ大統領に当時の約束の履行を迫るべきだ。

追記:今日の朝刊でもトランプ氏の通商や安保での強硬な要求に関する記事が出ていた(朝日新聞2024-11-8)。上記で触れた牛肉などの関税引き下げは、トランプ氏の「追加関税をちらつかせて譲歩を迫る手法」によるもので、「日本車に25%の関税をかけると脅した」ことの成果だという。やはり安倍政権はトランプ大統領の脅しに屈しただけであって、安倍首相が胸を張って言っていたような米側の譲歩はなかったようだ。安倍首相がそのように国民を欺いたことについて、その後の検証がないのはどういうことだろう。

追記2:日本テレビの「バンキシャ」という番組(11/11)だったと思うのだが、第一次トランプ政権が大幅な関税増を要求してきたが、大統領当選前にいち早く訪問して歓心を買った安倍首相が交渉して取り下げさせた、と言っていたように思う。この部分だけ聞くとあたかも安倍首相の手柄のように聞こえるが、農産物で払った代償に触れないのは誤報に近いのではないだろうか。

追記3:安倍政権が自動車の関税の撤廃を確約させたと吹聴していた件について総括記事があったので、事実関係を確認しておきたい。
TPPから離脱したトランプ政権の意向で2019年9月に日米貿易協定が結ばれ、2020年1月に発効した。日本側は牛肉など農産品の関税をTPPのレベルまで引き下げるが、TPPに含まれていた米側の自動車関税撤廃は先送りされた。
安倍政権は、トランプ大統領がちらつかせていた追加関税をかけないこと、将来的に米側の自動車関税を撤廃させることを確約させたと説明してきた。
追加関税について、交渉関係者によると、首脳会談で安倍首相が「追加関税をかけないということでいいですよね」と言って、トランプ氏が「それでいい」というような感じだったという(朝日新聞2025-4-12 6面)。
日本政府が米側の「約束」としたものの根拠は、協定締結時の共同声明の文言「貿易協定及び共同声明の精神に反する行動を取らない」というものだという(朝日新聞2025-4-12 3面)。(よく見たら過去ブログですでに紹介していた。)

当時から安倍政権の説明がまやかしでることは指摘されていたのに、なぜそのようなことをしたのか。2つの理由があるという。

嘘であっても「撤廃確約」ということにしておかないと、貿易協定そのものがWTOのルール違反になってしまうからだ。WTOではすべての加盟国を対等に扱う最恵国待遇原則がある。その例外として特定国の関税優遇が認められているのがFTA(自由貿易協定)なのだが、「自由」貿易協定というためには金額ベースで9割の品目の関税撤廃率が目安になるという。自動車関税の撤廃がなければ米側の関税撤廃率は6割程度となり、日米間の関税撤廃がWTOの規約違反となるというわけだ。
だがそもそも「確約」は高々口約束だったことは明らかだし、だとすれば協定はWTO協定違反であったことになる。そうまでしてトランプ大統領のご機嫌を取らなければならなかったのか。交渉担当者は、当時協定を結んでいなければ「自動車への追加関税はあのときに課されていたはずだ」と言うが、それはつまり、トランプ大統領が「関税上げるぞ」と言えばどんな要求でも飲むということではないか。これは外交でもなんでもなく隷属だ。

もう一つの理由は、米側の自動車関税撤廃が次の交渉対象であるとはっきりさせておくことで、日本側の農産品のさらなる関税引き下げの交渉入りそのものを封じ込める目的があったのだという。だが逆に、米側の関税撤廃の交渉を始めようとすると、日本側の農産物でさらなる譲歩を強いられかねないから交渉を言い出せない、というようなことを当時読んだように思う。そもそも自動車業界は関税撤廃よりも追加関税の回避を望んでいたことは過去ブログでも書いたし、今回の記事によれば交渉担当者も把握していた。つまり、「撤廃」は農産物でのさらなる譲歩を避けるための「保険」であって、当時から本気で目標とはされていなかったようだ。



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