Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

読書会 マキューアン『初夜』

2018-09-07 | rayonnage...hondana
いろんな面白い集まりに招んでいただくので、数が増えるにつれ、
ううむどこかにまとめて書いておかないといけない。…そう思ったとき、ふと
そうだブログのアカウント持っていたんだ!と思い出しました^^;
なぜ活用しなかったのだろうと、、

ただ忘れていたのですが、、、

観能メモの置き場所を探していて、思い出しました。
近況メモは安否報告も兼ねてFBがメインになっていますが、長文はこちらがよかろうと思います。


読書会、というものに参加させていただき、今回で4回目を数えました。
うち2回は尊敬する友人から誘っていただき、
うち1回は出版社と独立行政法人のコラボ企画、
そして今回は先の読書会で知り合ったすごい女性の企画。
どう凄いかというと、出版されるほぼすべての本に目を通しているのではないかというほどの読書量、
加えて書店イベントにもたいがい顔を出され、映画にも偏りなく精通している。
彼女のような、子育てもお仕事もかなりこなされつつ、成熟の時間を過ごしていらっしゃる層というものが存在することを知りました。

読書会というのは、そういう、人生経験も知能も分厚い方達が、テーマブックについて、感想と考察を伝え合う知的刺激に満ちた場所です。
もちろん読書メーターのトップレビュアーたちでもあります。


前置きが長くなりました。

今回与えられたテーマは、イアン マキューアン著の『初夜』。
なぜ原題の『チェジルビーチにて』のままではダメだったのか。。嘆きたいのは皆一緒です。
この好奇心をそそるタイトルのため、近所の図書館では常に誰かが借り出し中、
やむなくわたしはAmazonで購入しました。
読書会会場のカフェテーブルにずらっと並ぶ『初夜』たちの壮観さといったら。。。


イアン マキューアンは、アメリカ生まれのアイルランド人。
アメリカでは絶大な人気を誇るため、読書会メンバーの1人は「本好きの義母(アメリカ人)から彼の著作のシリーズがドサっと送られてきた」とおっしゃっていました。
でも、イアン マキューアンを息子のお嫁さんに送るのって、どうなのか。
というのも、性体験にともなう心の痛み、のようなものが、それはそれはこまかーく描写されているからです。
わたしは今回の『初夜』だけしか読んでおらず、それも「これはツライ!」と目が読むのを拒むほどでしたが、さすが、他の方は、せっかくだから他の著作も読んだ上で総合的に判断してみようと思われた方が大半。
なかでも『贖罪』『未成年』は皆さんの評価が高かったです。
マキューアンは、長編で良さが出る作家、という意見が出て皆頷いていました。

こういう話が聞けると、読まず嫌い、あるいは読んでも好きになれない、といった本でも、違う見方ができるようになるので、嬉しいです。

映画では、『追想』というタイトルで最近劇場公開されました。
映画と本を抱き合わせで語る読書会、というテーマでしたので、こちらも鑑賞しました。



1960年代、イギリスにて出会った若い男女。それぞれ、歴史学者とヴァイオリニストという夢を目指していた。育った環境にも趣味にも、まったくの接点がなかった。にも関わらず、恋に落ち、結婚式を挙げた。
しかし、結婚初夜。性的にも、まったく気持ちが相入れなかった。潔癖すぎる彼女、スキンシップを図りたい彼。事態は停滞し、ついには。
…というあらすじです。

166ページある本文の、前半が精神的な深い繋がりをさらに深める2人の優しいエピソード、後ろの半分が、肉体的な苦痛を心に感じる2人の精神的状態を描写。
体験のない男女の初の営みというテーマがあまりにツライ!
しかし、読書会での意見に、
「このざらざらした質感を演出するのがマキューアンの作風」
「小さなことが分岐点になる。小さな嘘、自分の力ではどうにもならないこと、宗教のことなどをきっかけにして。そんな取り返しのつかない…痛みというものを、演奏するように表現している」
というものを聞けて、自分自身の感じ方以外のものに触れるありがたさをひしひし。感じました。



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