Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

海部美知氏講演を聴く

2008-12-21 | femmes...bijin tachi
11月18日夜、京都商工会議所にて。
講演を聴きに行ってまいりました。
ずいぶん前の話になりますが、今頃感想を書きます。

海部美知さんは、シリコンバレーにお住まいの経歴華々しい女性。
お子さんを育てながらご自身の会社も育てられている、活動的で大変刺激的な存在です。
ブログはこちら

名刺交換というものは彼女のスタイルではなく、リンクを貼りお互いの痕跡をweb上に確認しあう方式をとる というのがシリコンバレー在住者らしいテンポの良さ。
梅田望夫さんのブログや書籍でその雰囲気(世界を視野に入れ・webの可能性を追求する)を知ったわたしなどは、そういうお仕事のしかたを自然に気持ちよくなさる方にお会いできると、さらに興味をかきたてられます。まだ知識も認識も幼稚なレベルで、お恥ずかしいですが。

そしてそんなレベルの自分だからこそ、この日の講演は大変参考になり、大きな学びの機会になりました。

タイトルはシリコンバレーの現在に関してだったのですが、
内容はwebの可能性のプラス面の実例についてであり、アメリカの大統領選挙で勝利に輝いたオバマ氏が例としてあげられました。

「オバマ氏のネット選挙」、
話はここから始まりました。

「ブッシュ」「金融危機」というマイナス要因が彼にプラスに働いた面もあるが、それを支えたのは何より「草の根の力」を最大限に活用したことだ、と海部さんは始めました。
ケネディはテレビの時代をうまく利用し、広告を打つことで活動をスムーズにした。これはいわゆるweb1.0の世界ですが、現在、オバマのこの時代はネットの時代、つまり、
・参加型であり、
・オープンソース型
であることが特徴づけられます。web2.0。
オバマの選挙作戦について簡単にまとめると、インターネットを利用して人が支持者を動員し、口コミでさらに広がりを見せ、多くの支持者からの少量の寄付金を集め、300万人以上にそれが及んだとき、膨大な額となり強大な戦力を獲得。
さらに、この「マイクロペイメント」(少額を多くの人から集める)という手法が、結果、寄付した人以外への認知効果にも繋がり、彼の活動の幅を広げたといえます。

これらがwebを使って行なわれたことで、「支持者のデータが集まり、連絡が取りやすくなった」という点が興味深いと思いました。
「webに集まる情報のプラスの活用」への陽性の力がぐんと働いたことに、力強さを感じました。
よく言われるように、アメリカでは個人データを公開すること、自分の意見を打ち出すことに対する拒否反応が日本より断然少ない。というより、まったく反対のコンセプト(=「ネットは悪用を目的としてはおらず、基本は善である」という信念)があるがために、今回のように積極的にネットが力になったということですが、海部さんはこれを、
「ネットが民主主義を本来の姿に戻した」
と評価しました。
この実例を、今こうしてwebを利用するひとりひとりが心に留め置くことは、大きな光になるように思います。

海部さんご自身、ブログがきっかけで本を出版されたり、またお仕事の機会を増やしたというお話もされ、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』(ちくま新書)にも「webは今まで発言の機会がなかった人たちに活動の場を拓いた」と書かれている、まさにそのことが大きく実現したお一人であるわけです。

社会のあり方も、こうした流れを汲んで変わっていきつつある、と海部さんは続けました。
たとえば、
・ベンチャー企業が今までのようなexit法(=上場⇒キャッシュ化)という方法よりも、googleに買ってもらうという方法を選択する
・ネットのなかの知識が自動的に整理されることにより、頭脳労働が効率化される。ホワイトカラーにおける第二次産業革命が起きている
・ビジネスモデルの変化(最初無料で参加を促し徐々に有料化を図る方式への移行、など)

これらは数々知識人が指摘していることでもありますね。
そして、オバマの例のようにweb2.0がネットを本来の姿に戻し、本来の民主主義をかなえた。
平等で自由な知の共有が、その重要な役割である。
そう海部さんはまとめました。


変わりつつある時代の風を、爽やかに、けれど熱く強く頬に当たるのを感じた講演でした。
伝聞で「そんなことがあるとは耳にしたことがある」というのと、
「体現した人を見た、そして話をじかに聞いた」
というのでは、手ごたえがまったく違います。

数々希望を頭に巡らせながら、帰途に着いた夜でした。

ご招待下さいました株式会社のぞみ藤田社長様、並びに京都市関係者各位に、心より御礼申し上げます。


photo...糺の森にて
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