アモルの明窓浄几

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映画「シッコ」を観て

2008年04月27日 | 万帳報
マイケル=ムーア監督のドキュメンタリー映画「sicko」は、評判通りの作品で、アメリカ医療の現実を弱者の視点から告発しています。
日本の医療制度改悪後の姿を連想させるに充分な内容です。
この映画を見れば、国民皆保険制度の重要性、必要性が身にしみて分かるでしょう。
又、後期高齢者医療制度の撤廃をはじめとし、医療や福祉など社会保障制度全般の見直しの必要性が理解できます。
後期高齢者医療制度は、国民皆保険制度のなし崩しの第一歩と思われます。
高齢者や障害者を分離するのではなく、国民は皆一緒の保険制度のもとで、助け合わなくてはなりません。
この映画は、社会保障制度改善の運動を広げるための良いテキストです。

しかし、マイケル=ムーアは、医療制度の告発だけに止まってはいません。
彼のテーマは、私達にとっての「民主主義」とは何かを問うています。
この映画を見られた方は、元労働党下院議員のトニー=ベンへのインタビューが印象に残っているはずです。マイケル=ムーアは、トニー=ベンを通して真の「民主主義」を得るための処方箋を語らせています。
国民に教育と健康と自信は、与えてはならない。何故なら、それらを与えると真の民主主義革命が起こるからだと。その語りの部分を紹介します。
トニー=ベンの発言:イギリスにおける1948年のパンフレットから読み上げる。「7月5日、新国保サービスが発足します。どのような制度でしょう?皆さんに医療、歯科、看護の全てのケアを提供し、収入に関わらず老若男女誰でも利用できます。特別事項を除いて、全て無料です。保険に入るのに審査も必要ありません。ですが、慈善事業ではなく、主に税金が財源です。皆さんは、費用の心配なく医療を受けられます。」この短い説明が全てを言い表している。
サッチャーですら、“NHS(国民保健サービス)は、国民から奪われない”と言った。
民主主義は、最も革命的な思想だ。社会主義や何かよりよほどね。もし権力を持ったら、自分やコミュニティの需要が満たせる資本家が言う“選択肢を与える”という考え方は、選択の自由があればこそだ。借金苦に選択の自由などない。
マイケル=ムーア:労働者の借金苦は、体制側が有利ということですね。
トニー=ベン:借金苦の者は、希望を失い選挙にも行かない。体制側は、“投票を”と言うが、もし英国や米国の貧者が本気になって自分の代弁者に投票したら真の民主主義革命が起こる。それは困るから、体制側は、希望を奪う。国民を支配するには、二つの方法がある。先ず、恐怖を与えることと、士気を挫くこと。教育と健康と自信を持つ国民は扱い難いと、ある種の人々は思っているよ。国民には、教育と健康と自信は与えたくない。与えると“手に負えなくなる”と。世界の人口の1%が、80%の富を独占している。よく皆は、耐えていると思うが、それは貧しく士気を挫かれ恐怖心があるためだ。命令を聞いて最善を祈るのが一番安全だと思っているんだ。

さて、元労働党下院議員で労働党委員長の経歴を持つトニー=ベン氏は、別の処でも「民主主義」について語っています。
そのシェア=インターナショナル(SI)誌のインタビューの一部分を書き写し、紹介します。
全文は下記を参照してください。
→ http://sharejapan.org/bcworks/2004/04/post_15.html

トニー=ベンの発言:私は民主主義を定義しようと試みて、五つの基準を練り上げました。有力な人に出会ったら、次の五つの質問をして御覧なさい。
1. 貴方はどのような権力をお持ちですか。
2. それを何処から手に入れたのですか。
3. 誰の利益のために、それを用いるのですか。
4. 誰に対して説明責任をお持ちですか。
5. 私達は、どのようにして貴方を排除できますか。

自分に対する支配力を持った人を排除することができない場合は、そのような支配力を持った人は、貴方の言うことに耳を傾ける必要がない立場にあるでしょう。
あらゆる欠点を持つ国会議員や総理大臣が、民衆の声に耳を傾けなければならないのは投票日に審判の日がやって来るからです。一方、銀行経営者や世界貿易機構、IMF、ローマ法王、ムラー、ラビは耳を傾ける必要がありません。何故なら、権力の座についているからです。神が権力を与えたから権力の座にあるのだと言う人もいれば、市場に関連した、逃れることの出来ない決定に自分達は従っているのだと言う人もいます。しかし、どのような正当化がなされるにせよ、彼らには説明責任がなく、排除されません。私なら自分で排除することが出来ない人には、決して統治されないでしょう。正にこの理由によって、実際に権力を握る人達は、民主主義を好みません。民主主義により、彼らが有する安全が損なわれるからです。

以上


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