アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

減らない過労死

2012年08月20日 | 万帳報
東京新聞は、東証一部上場の上位100社の「三六協定」(時間外労働・休日労働に関する協定)の実情を調査し、先月報じました。(資料3)ご存知の方も多いと思います。
100社中の70社が80時間/月以上で、その70社の内の37社は100時間/月を超えていました。東証一部上場の上位100社の実態が、まさかこのような酷い状況とは思いもよらず、驚いたのは私だけではないと思います。

記事から一部抜粋します。
>…厚労省の指導が形骸化し、過労死しかねない働き方に歯止めがかかっていない現状が浮かんだ。
>健康被害の原因となる長時間残業が可能になっている現行制度について、36社の内、22社が「見直しは必要ない」、「見直すべきだが現実的に難しい」と回答した。「『見直しが必要』は2社だけだった。
>経団連労働法制本部の鈴木重也主幹は「…円高などで今、国内で事業を続けるのは大変。過労死は重要な問題だが、法律で残業時間の上限を定めるなど労働規制を強めれば、企業はますます活力を失い、成長は望めなくなる」と話している。

これらに対し、西谷敏・大阪市立大名誉教授(労働法)は、「…大手の7割で協定時間が過労死基準(註:資料1参照)を超えているのは、ゆゆしき事態だ。法律そのものに限度時間を定めるべきだ。例えば欧州連合(EU)では、残業を含めて週48時間が限度となっている。大手企業の大半には労組があり、労組も協定を見直して残業制限に努力すべきだ」と話している。

前々回の当ブログ(8/14日)で取り上げましたが、「ブラック企業」とは労働法などに抵触し、又はグレーゾーンな企業としていますが、一部上場の大企業が合法的にあらん限りの不正義を行う行為は、ブラック企業と何等変わりません。

週刊金曜日(8/10日号)から過労死(自殺)者の最後の声などを拾ってみると。
>神戸の専門学校でトップの成績を収め、同社に採用された和哉さんは、1カ月に100時間を超える時間外労働を強いられ、5カ月後にうつ病を発症した。(略)「『死』ではなく『生きていくのが無理』という闇が心を支配します…。その感覚が怖くて怖くて仕方がないのです」。和哉さんのブログには、追い詰められた心境が詳細に記録されていた。
>貴史さん(当時23歳)は、2008年1月、入社10か月目に会社の寮で自殺した。深夜まで働く日が続く中、自死の1~2か月前には急激に痩せ、「食事をしても味がしない」と漏らし、湿疹が全身に出始めていた。母親とは命を絶つ前日、「仕事やばい。どうしていいかわからない」と電話したのが最後となった。
>保則さん(当時35歳)は、04年6月、出張先の徳島県で仕事中、くも膜下出血で倒れ、意識が戻らぬまま3週間後に死亡した。(略)夫の死亡当時、5歳だった娘、1歳だった息子は、中学2年と小学4年生になった。「せめて子供達には、労災補償という形で父親が精いっぱい生きた証を残してあげたい」と、(妻の)信子さんは声を詰まらせた。

「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子さんは、「…責任を問われるべき会社の多くは、匿名性に隠れて平然としている。そんな状況を変え、過労死を生み出す企業は退場させる社会にしたい」と語ります。

>森岡孝二・関西大学教授(企業社会論)は、過労死、過労自殺がなくならないのは、こんな長時間労働を容認する「三六協定」が蔓延しているからだと批判する。
>松丸正弁護士は、労組を訪ね改善を申し入れようとしたが、組合側は会おうとしなかったという。「労働組合は三六協定に関してタガが外れた状態だ。過労死は労使合意から生まれている」と、そう確信している。

過労死防止基本法制定実行委員会が「過労死防止基本法」の制定を目指し、署名活動をしています。
下記のhpより「署名用紙」をダウンロードし、署名を集めましょう。
過労死防止基本法制定実行委員会→http://www.stopkaroshi.net/index.html

最後に、当会リーフレットより、父を過労死で亡くしたマーくん(当時小学1年生)の詩を紹介します。

「ぼくの夢」
大きくなったら
ぼくは博士になりたい
そしてドラえもんに出てくるような
タイムマシーンをつくる
ぼくはタイムマシーンにのって
お父さんの死んでしまう
まえの日に行く
そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや


資料1:『時間外労働と健康障害のリスク』(資料提供:厚生労働省)
    SAFETY JAPANのhp(http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/special/115/index.html)より

※1 この図は、労災補償に係る新しい脳・心臓疾患の労災認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果を踏まえて策定された「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成14年2月12日付け基発第0212001号)に基づく事業者が講ずべき措置等の概要を示したものです
※2 業務の過重性は、労働時間のみによって評価されるものではなく、就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべきものです
※3 総合対策での時間外労働は、一週間当たり40時間を超える部分のことです
※4 2~6カ月平均で月80時間を超える時間外労働とは、過去2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間のいずれかの月平均時間外労働が80時間を超えるという意味です


資料2:過労死防止基本法制定実行委員会のhpより



資料3:東京新聞の調査結果



追伸:今年のILO総会の6月14日に採択された「若者の就業に関する行動計画」では、若者の雇用危機に関する一般討議が行われました。
世界全体で現在、7,500万人の若者に仕事がなく、そのうち600万人は職探しを完全にあきらめてしまっており、働いている若者の中でも2億人以上が1日2ドルに満たない賃金を得ているといった、若者の就業を取り巻く情勢が報告されました。
そして、若者の雇用危機に早急に対処する革新的な手法と政治的な公約を求める決議が採択されました。(ILO記者発表概要より)

使用者側は、「経済成長なくして、雇用は回復しない」などといっているそうですが、過労死ラインにいるといわれる週60時間以上働いている若者は、就労者の約3割に該当しています。
仕事がないわけではないのです。

決議文は、下記hpを参照して下さい。
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/2012ilc-youth.pdf





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