アモルの明窓浄几

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裁判員制度について思うこと-3

2008年12月19日 | 万帳報
●[註4]は、少し補足説明が要るところです。

『…たとえば、裁判員の五名が無罪としても成立しないのであり、…』とあるところの「成立しない」の箇所ですが、裁判所は「成立する」という見解を既に示しています。
本文で述べていますように裁判員制度の構成(法第2条2項)は原則、裁判官3名と裁判員6名の計9名です。
従って、評決は9名の過半数である5名以上の意見で決まりますが、その場合必ず裁判官と裁判員の両方が加わっている必要があります。(法第67条)

※ 裁判員法第67条(評決):前条第1項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第77条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

この条文を素直に読めば、私の言うように裁判員のみでは、たとえ過半数の5名であっても無罪は成立しないはずです。
しかし、裁判所の見解は「評決で有罪と判断されなかった場合は、すべて無罪になります」とのことです。
本文の例でいうと、裁判員5名が無罪であるということは、残りの裁判員1名と裁判官3名の合議体4名は有罪としていますが、4名は過半数でないので有罪は成立せず、従って無罪になるという論法です。

このことは、2007年7月17日付の東京新聞に“裁判員法67条の「謎」”、“「法律家の空気」が基準”、“「過半数で判断」割れる条文解釈”等々として掲載されています。

※高山俊吉法律事務所HPのプレスクリップに東京新聞紙面が掲載されています。
→http://www.takayama-law.com/

紙面から引用すると、裁判員法は刑事訴訟法に付加した特別法だから「疑わしきは被告人の利益」という刑事裁判の大原則を踏まえて解釈します。依って、評決で有罪にならなかった場合は、無罪であると云うことです。
更に付け加えて、この新聞社から意見を求められた裁判官は法律家なら、みんなそう解釈するはずと言い切っています。

ここでいう刑事訴訟法とは、第336条「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない」を指しています。

私は、合議体の意見が過半数に満たず成立しない場合は、評議不成立となり「審理無効」とするのが法文の趣旨に沿うのではないかと考えていました。
只、結果として「疑わしきは被告人の利益に」という法理が働いていることは喜ばしいことと思います。

しかし、私などの一般市民が裁判員法の条文(第67条や第6条など)だけを見ただけでは、到底解釈できないような法律が、又「みなそう解釈する」のが当然といった態度を示す法曹界から「是非とも裁判員裁判に参加していただき、みなさまの健全な社会常識を司法の場に生かしていただきたいのです」と云われても素直に受け入れることが出来ないと思うのは私だけでしょうか。

又、裁判官3名に対して裁判員6名とする構成は、多数決の評決において対等な立場とは云えず、市民感覚が十分に生かされるとは思えないのです。(この件は、次回に検証します。)
これで市民の理解が得られるでしょうか。

以上のことなどを踏まえて、あえて「裁判員の五名が無罪としても成立しないのであり」としました。
週刊誌での発表当時は、きっと、批判の意見があると違った意味で期待していましたが。


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