アモルの明窓浄几

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NPT再検討会議の年を迎えて(その2)

2010年04月11日 | 万帳報
直接行動で訴えるのは望ましい方法の一つですが、誰にでも出来る事ではないでしょう。
では、建築に携わる私達に何が出来るでしょうか。


   本通り商店街の廃墟(広島原爆写真館より)

私が、NPT条約で最も注目しているのが、原子力の平和的利用についてです。第4条は、原子力発電所等(以下、原発と云う)の平和利用は認めるが、軍事技術への転用は禁止するとするものです。

先に述べたように、オバマ米国大統領はプラハ演説で『核兵器の拡散阻止に本気で取り組むのであれば、核兵器の製造に使われる兵器級物質の製造を停止すべきです。これが初めの一歩です。』と云っています。兵器級物質の製造を停止するためにIAEA等の検証(第3条)を受ける事を念頭に置いた発言のように思いますが、それでは不十分であると考えます。行き着く先は、原発そのものをなくす事に尽きるでしょう。

今、世界では「原子力ルネッサンス」と呼ばれています。今後世界でつくられる原発は、100基を超えると云われており、日本でも昨年の2月現在において、計画中が10基、建設中が3基、運転中が53基との事です。
今後、原発が増え続ける理由としては、地球の温暖化や原油価格高騰への対応策と云われています。原発は、運転中に二酸化炭素を出さないため、温暖化対策として注目されているのです。しきりに電力会社がこの事を宣伝しています。
でも問題は、原発の運転中ではなく(原発の建設には問題があるので、当然運転中も問題があるのですが、今回は問わない)、その後にあるのです。
一つは、老朽化した原発の解体であり、もう一つは、放射性廃棄物の処理の問題です。

現在、日本では2基の原発の解体が始まっています。
福井県敦賀の原発「ふげん」は、放射性物質を外へ漏らさずに解体する事に苦慮しています。昭和31年の最初の「原子力研究開発利用長期計画」には、解体についての記述がなく、今日においても国は、解体を考慮にした設計を建設の際の条件にしていません。

原子力研究バックエンド推進センターの榎戸裕二氏は、NHKの取材に次のように答えています。『解体を特に考慮した設計は、採用されていなかったのが実態です。設計思想においては、原発の健全性や安全性の確保を主に考慮して居りまして、解体については、将来の技術開発で対応できる。又、今後技術開発する事によって十分な技術が確保できると云う考えのもとでやっておりまして、近い将来の課題とは考えておらなかった。』と述べています。(NHKスペシャル「原発解体」より)

国内第1号の東海発電所(昭和41年)は、運転を停止してから11年が過ぎました。
建設当時の詳細な図面が揃わなく、解体工事に踏み切れないでいるのです。原子炉の運転を停止しても「放射化」により、原子炉そのものが放射能を持ち、消えないでいるのです。
当時の現場工事担当者は、『これは基本的に解体を考慮しない建設工程でつくっていますから、非常に解体の方の逆工程を想定すると云うのは難しいかも知れません。』と同じくNHKの取材に答えています。

世界最初の原発を建設(1956年)した英国での当時の建設祝賀スピーチで、エリザベス女王は原発に将来を託し、『未来は私達が、想像できないものになるでしょう…』と述べました。
今日においては、ブラックユーモアとしか云えないでしょう。


六ヶ所村核再処理施設(グリーンピース・ジャパンより)

最先端の技術をもってしても、思う様に行かない放射性廃棄物の処理。
原発が増え続けると共に処分場がないままに放射性廃棄物も増え続けるのです。
原発の平和利用等は、潜在的な核拡散に繋がる可能性のある限り幻想でしかありません。何れは、核兵器に繋がるものなのです。と云うよりは、原発そのものが想像できないもの、即ち自国に対する核兵器に変貌してきています。

原発を推進してきた人々と同じく、原発建設に黙って追随してきた私達、建築技術者にモラルはないのでしょうか。
5月3日に向けて、世界は変わろうとしています。未来から、「あなた達は、核兵器のない世界へ貢献できますか?」と問われています。
私達はどの様に答えるのでしょうか。
勿論、私達の答えは「Yes, we can!」。


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