アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

「芦屋市耐震改修促進計画(案)」への意見書の回答をえて

2008年06月04日 | まちのこと
芦屋市は、耐震改修を促進するための施策を示した「芦屋市耐震改修促進計画(案)」に対し市民からの意見を募集していました。
私が意見書を提出した事は、以前のブログで報告しましたが、その回答が有りましたので、ここに掲載します。
実は、昨日まで市民からの募集意見と市の見解が3月24日に公表されていたことを知らずにいました。(勿論、私個人宛てへの回答はありませんでした。)
依って、既にご存知の方も居られると思い、今更この話題を取り上げてもと思ったのですが、「市の見解」に対する私の感想を述べることで閉めとしたいと思い、今回とり上げることにしました。

尚、市の策定計画は、芦屋市のhpから閲覧出来ますし、私の意見書の全文は3月11日のブログに掲載していますので、参考にしてください。
又、私の意見書に対し、市の都市環境部の担当者の方々が一つずつ誠実に回答して頂いたことにお礼申し上げます。


A. 「4.住宅・建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための施策」の「(1)基本的な取り組み方針」(P.18)について

■私の意見の要旨
『…市としては、既存民間建築物所有者等の取り組みを支援する観点から必要な施策を講じるとともに、…耐震化を推進する。』とある部分は、支援する観点からではなく、『…市としては、健全な地域社会を持続的に形成してゆくために主権者である市民の建築物は公共性があるものと認識すると共に、災害を未然に防止し被害を最小限に食い止めるために必要な施策を講じ、建築物の耐震化を推進する。』としては如何でしょうか。
又は、そのような理念である文言に替えるのが適当かと思います。

■市の見解
民間建築物が健全な地域社会を形成し、いろいろな役割を担うものであることから、市民の建築物の地震に対する安全性の向上を図ることが、公共の福祉に資するものとして、このたびの、住宅耐震改修促進事業等を実施しようとするところです

□見解に対する感想
私は、本文の中に「市民の建築物は公共性があるものと認識する」と云う文言を入れて頂きたかったのですが、しかし、市の見解として
・民間建築物が健全な地域社会を形成し、役割を担うものである。
・市民の建築物の安全性の向上を図ることが、公共の福祉に資するものである。
との回答を得たことは評価できると思います。


B. 「3.住宅・建築物の耐震診断及び耐震改修の実施に関する現況と目標」(P.12~17)について

■私の意見の要旨
住宅及びその他の建築物の『現況耐震化率』には、「新耐震基準の建築物」が含まれています。しかし、木造住宅を例にとりますと、2000年(平成12年)の建築基準法改正において、柱の仕口部の接合方法や壁配置の具体的規制基準が制定さたことにより、その間に建築された住宅については、その耐震性能に幅があります。
1981年の建築基準法改正後の建築物であっても仕口部の引き抜きの検討のされていないものは、必ずしも直下型地震に対しては安全であるといえません。
「新耐震基準の住宅」の内容の精査が必要です。現況耐震化率、言い換えると「地震危険住宅」戸数の見直しが必要ではないでしょうか。

■市の見解
昭和56年から平成12年の間に建築された木造住宅においても、柱の仕口部の接合方法等によりその耐震性能に幅がありますが、昭和56年以前の木造建築物が先の震災で大きな被害を受けたことから、その耐震化を第一の課題とする国の基本方針及び県の耐震改修促進計画との整合を図る必要があることから、現況耐震化率を算定し、目標を定めました。

□見解に対する感想
ここにおいて、「昭和56年から平成12年の間に建築された木造住宅においても、柱の仕口部の接合方法等によりその耐震性能に幅があります」とする認識を市が持っていることがわかりました。近い将来においては、1981年以降(S56~H12)の木造住宅も耐震補強の対象になることを願います。


C. 「4.-(2)-①」(P.18)の簡易耐震診断推進事業について

■私の意見の要旨
2000年から実施されていた「わが家の耐震診断推進事業」及び今日に至る「簡易耐震診断推進事業」において、一応安全と診断(木造住宅の場合の総合評点1.0以上)されたものは、兵庫県が実施している「わが家の耐震改修促進事業」の耐震改修工事費の補助が受けられないため、同事業の履行を条件とする当計画(案)の助成制度も受けることが出来ません。
当該簡易耐震診断は、柱と土台・梁との仕口部や筋違い端部の接合等の欠陥は、診断結果の評点に反映しない部分的欠陥として扱われています。
総合評点が1.0以上であっても、中地震では機能を保持すること、大地震では崩壊からの人命の保護を図ることが求められている「新耐震基準」に適合するかは疑問です。
従って、総合評点1.0程度の木造住宅を安易に補助対象から除くのは、問題があると思われます。
仕口部の検討を行い、必要に応じた金物補強等に対しては補助金を出すべきではないでしょうか。

■市の見解
簡易耐震診断で総合評点1.0以上とされたものでも、国交省住宅局監修「木造住宅の耐震診断と補強方法」による耐震診断等で、保有耐力/必要保有耐力が1.0未満のものは、「わが家の耐震改修促進事業」および「住宅耐震促進事業」の助成を受けることが出来ます。

□見解に対する感想
市の言われる事はわかるのですが、保有耐力を求める診断法は、「精密診断法」に該当し、専門家による診断結果を待たなくてはなりません。それなりの費用が掛かるため、はじめから精密診断を依頼する建築主はそうは居ないでしょう。簡易診断の補助事業の範囲内でどのようにフォローして行けるか、検討の余地がありそうです。


D. 民間の幼稚園と保育所について

■私の意見の要旨
特に問題としたいのは、民間の幼稚園と保育所です。特定建築物に該当しない規模の施設がどの程度あるのか不明ですが、将来を担う幼児達の施設が当計画(案)の助成制度を利用できないとすれば、検討の必要があるのではないでしょうか。

■市の見解
すべての建築物の耐震化が望ましいのですが、国の基本方針において、多数の者が利用する建築物の耐震化が緊急に求められている状況にあり、これに該当しない規模の民間建築物については、今後の検討課題と考えております。

□見解に対する感想
今回の中国四川省の大震災をみても、学校等の崩壊で多数の学童が亡くなっています。父母の悲しみは、学校が崩壊したことではなく、未来を担う子供達への死の悲しみが深いのです。幼児達も同じで、民間の幼稚園や保育所は別立てとするのはおかしいのではないでしょうか。


E. 計画目標のために何をなすべきか

■私の意見の要旨
「5.-(3)関係団体との連携」において、建築設計事務所協会等と連携し、建築物の耐震化について啓発活動を行うとしているが、従来のような行政からの発信に対し、受動的対応の連携では計画期間の8年間での目標達成は、厳しいものと思われます。
双方が共通する地域社会の課題解決に向けて、目的の共有と相互の特性を認識した上で尊重し、対等の立場で経験や英知を出し合いながら協力し合う事により、能動的連携が生まれます。
それが、市民から評価される結果に結びつくものと期待します。
更に、耐震化の推進には、国の補助制度の拡充が必要です。
劣化が進み、著しく危険な建築物に対しては、建築物所有者に対し勧告、命令等の措置を講ずることが可能となりましたが、広く社会資本と考えるならば、安易な措置は講ずるべきではなく、市民の理解の得れる手法が必要であり、そのためにも国や県に積極的に働きかけることが重要です。
其れには、市民と行政及び関係団体との連帯が不可欠でしょう。

■市の見解
耐震化対策等については、十分な財政支援措置を講じるよう、全国市長会を通じて、国に要望しているところです。また、ご提案いただいた市民と行政及び関係団体との連携については、貴重なご意見として今後の施策の参考にしていきたいと考えております。

□見解に対する感想
関係団体との連携については、 (建築設計改め) 建築士事務所協会等へ個人的にもはたらき掛けて行きたいと思います。
又、市民の役割も重要です。サスティナブル(持続可能な)社会における建築物の在り様が昨今、問われてきています。住宅を長持ちさせることで、地球環境や人への負荷を少しでも減らし、出来るだけ良質な環境を維持し続けられることを考えて行かなければなりません。





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