ロシア語の勉強をそっちのけにして、人文書院のギリシア悲劇全集の前説で引っかかっている。
田中美知太郎が援用しているギルバート・マリーのレアリズム批判がとても面白く感じられた。
以下一部孫引き。
「近代劇はその古典的起源から反対の二方向に分岐したと言えるかもしれない。古代の悲劇と喜劇は人間体験の最高あるいは最強の瞬間を再生せんとしたものであった。ところがそれがロマンティシズムに発展ーーあるいは退化した。いわゆる新喜劇は、外面的生活をいかにも自然らしく呈示することに努め、その結果そこには人を陶酔せしめるほどに崇高なものはないにしても、すべてがもっともらしく人を納得させるに足るものがあった。これが発展あるいはーー退化してレアリズムになったのである。」
出典元は『古典劇の伝統』(ギルバート・マリー 松平千秋訳)として、
『ギリシア・ローマ古典劇集』(世界文学大系2 筑摩書房 1959) に所収されている。
興味深いので全編を読みたいと思い、本を取り寄せてみたら、実はこれも抄訳で、
大本は "The Classical Tradition in Poetry" (Gilbert Murray London 1927) という古い本だった。
ひとまず抄訳を読んで、面白そうなら本編に当たってみようと思った。
ただ邦訳は無いので原典で読むことになる。いまはそこまで根を詰めて本を読めない。
ギルバート・マリーは二十世紀前半のギリシア学者で、その筋では権威だったらしいけど、
邦訳されている著作はあまりない。知る人ぞ知る、という人物なのか?
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